第7話 決断力
現時刻は11時過ぎ。
モニター越しの惨劇から3時間近く経った。
家の屋上から辛うじて見えるあのコンビニには車が次々に停まり、略奪者同士の小競り合いが何度も起きている様だ。
ただ、コンビニにはほとんど何も残っていないだろうと思う。
あの後、エリート3人組と同じ会社の車がすぐにやってきて、また同じ様に車を横付けしていた。
状況を考えると、会社ぐるみで略奪をしている可能性すらあり得る光景だった。
確かに連中の本社ビルを考えると、大きなビルの割に入り口は小さく、セキュリティは完璧。
大量に食料を運び込み、入り口を封鎖してしまえばダンプで突っ込む位しか侵入する方法は無い。
もしこの世界が救われる事があって、何らかの非難を受ける事があっても、ありとあらゆる力を使ってうやむやにする自信が有るのだろうし、実際に連中なら可能だろうと思えた。
それにしても、モニター越しの惨劇からコンビニ略奪までは僅か30分程。
表面化する迄多少の時間はあったのかもしれない。
だが、余りに早いその決断。
自分達の為に誰かが死ぬ事など、何とも思わないその決断力を、ただ異常だと思った。
と、僕の視界に自転車が入ってきた。
略奪者達の動きがとつぜん慌ただしくなる。
"お願いだから、誰か助けてあげてくれよ…"
僕の視界に入ってきた自転車。
どう見ても、その自転車の男はもう限界だった。
まるで水でも浴びた様な全身ずぶ濡れの彼は、考えられない様な距離を全力で走り続けたのだろう。
しかし、体力の限界など無い、身体の崩壊をもいとわない奴らの追跡は、彼の逃走を許さない。
そんな彼の視界に入ってきた、コンビニに停まっている数々の車。
まさにそれは、彼の最後の希望に違い無かった。
大声を上げている様に見えた。
助けを求めている様に見えた。
しかしその声に気付いた略奪者は、
その全ての車は、
迷う事も無く、彼を助けず走り出す。
彼が足を止めるのが見えた。
彼が自転車を降りるのが見えた。
そして彼が食われるのが見えた。
主人公の家からコンビニまでは徒歩5分。
道のりにして400m前後、
直線距離なら350m位です。