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第6話 最高の贅沢

落ち着いた僕は、パソコンで現在の状況を確認し、まずシャワーを浴びてから、食料や備蓄品を確認した。


事態が深刻化すれば、少しの音も命取りになりかねない。

人生最後かも知れないそのシャワーは、今までで1番気持ち良く、とても贅沢に感じられた。


軽く浴槽をすすいだ後、浴槽に水を溜めながら食料の確認作業に入る。


典型的なA型と言われている父親は、大震災以降、常に備蓄を欠かさず、4人家族であれば備蓄品だけでも1週間、つまり1人ならば1ヶ月以上は暮らせる程度の乾パンやレトルト食品、おまけに災害用アイテムを揃えていた。


戸棚や引き出しには米、乾麺類、お菓子類が多めにあり、切り詰めれば更に1ヶ月は持ちそうで、先程のコンビニでの購入品も含めると当面食料の心配はいらないだろう。


パソコンを見ると、状況は時を追うごとに悪化している。

ただでさえ頑丈な1階の窓を内側から本棚で塞ぎ、2階の窓もそのほとんどをダンボールで塞いだ後、最後に忘れていた冷蔵庫を開けると、いつものように綺麗にラップがかけられた僕の朝食が置いてあった。


それを見た時、

思わず涙が出た。


今まで何も考えずに食べていた朝食。

もしかしたら母親の最後の手料理になってしまう朝食。


昨日の晩の残り物の唐揚げ、煮物。

甘い卵焼きにカリカリのベーコン。

なめこと油揚げの味噌汁。


乱雑な組み合わせのその朝食を、電子レンジの音も気にせず温め、いつもよりも時間をかけて食べた後、した事もない洗い物をして、僕は次の作業に移った。



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