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第4話 想定済み



すぐにパソコンとスマホを見る。


災害時によくあるようなスマホの通信障害などはまだ起こっておらず、取り敢えず家族に

「ゾンビが出たので気を付けろ」

みたいなメールを送った後、各地の情報を収集しながら家の周辺を確認する。



何も問題無い。

全てが想定済みの事だ。



よくある都会の狭小3階建て住宅。


その1階部分の窓全てにシャッターが付いており、入口の扉も目立つ部分にない為、そう簡単に奴らが侵入する事も無い。

凹凸の少ない形状は奴らが外壁を登る事も許さないだろう。

父親、母親、妹は既に家を出た後の様で、家には自分1人。

駅から少し離れた住宅地は、まるでいつもの朝のように、平穏を保っていた。



「まだ間に合うか?」



歩いて5分の所にコンビニがある。

今のうちに必要な備蓄をしなければ。

避難するにしろ、立て篭もるにしろ、先立つものが無ければ話にならない。


ちなみに避難所に行くというような選択肢は無い。

空間が広い程、出入口が多い程危険度は飛躍的に増す。

更に大人数が集中する事は、奴らを引き寄せるリスクを増やす事に他ならない。


家の中の備蓄の確認もそこそこに、自分の全財産を確認する。



ー1252円



取り敢えず、少しでも何か買ってこよう。

かなり心許ないが、仕方がない。

家の中に金が無いのは知っている。


以前、お天気お姉さんになった女に、

「このままではノルマをこなせない、助けてくれ」

と泣きつかれ、家の金を持ち出して以降、現金はおろかカード類すら家には置かれていない。



すっかり鈍ってしまった体に愕然としつつ、コンビニへ走る。

ここの店長は客によって対応を変えるクソみたいな男で、以前コンビニ受け取りをした商品を投げ捨てるかのように渡されて以降、二度と来るまいと思っていた。


未だこの世の危機を知る方法の無い店長は、僕を見ても挨拶もせず、黙々と品出しをしている。


手遅れかとも思っていたが、常識では有り得ない世界の危機に、まだ誰も対応出来ずにいるようだ。


とにかく買えるだけのインスタントラーメンと、缶詰を抱えてレジに行くと、相変わらずクソみたいな態度の店長が会計を始めた。

明らかに小さめな袋にぎゅうぎゅう詰めにされた商品を受け取った僕は、


お前なんか死んでしまえぱいい。


そう思った。

しかしその直後、僕自身思いもよらない言葉が自然に発せられた。


「あの、危ないから今すぐ店を閉めて逃げたほうがいいですよ。」


クソ店長のなんだこいつ、という視線。

自分自身の予想外の言動。

どうしていいか分からず、キレてしまった僕は空っぽの財布をそいつに投げ付け、



「ゾンビか略奪者が来るんだ!

信じられないかもしれないが、マジなんだ!

今すぐ店を閉めて、早く逃げろ!」



と大声で叫び、店の外に飛び出した。

100メートル程走った所で、曲がり角の影に隠れて思う。



"一体、自分は何をやっているのだろう。

もう世界は終わるのだ。

さっさと略奪してしまえばいいではないか。

なのに普通に買い物をして、あんなクソ野郎に逃げろと言っている。


こんな筈じゃ無い。

もっと上手くやれる筈じゃないか。"



結局、暫く考え込んだ挙句、家へと歩き出す。



と、不意に後ろから大きな音が聞こえた。

振り返ると、先程のコンビニの入り口に車が横付けされ、ガラスが破られている。



「ああ

やはり始まった。」



想定通り。



だがよく見てみると、それは自分の想定外の光景だった。


横付けされていたのは、有名な企業の営業車。


高級そうなスーツ姿の男達が角材を振り回しながら、次々と商品を店から強奪し、車に積み込んでいたのだ。


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