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第23話 前進

4日目の朝を迎えた。


あのあと僕は隙を見て玄関を開け、そいつをす巻きにして浴室まで引っ張り込んだ。

元々は家の中が汚れるのを覚悟して、窓から引き上げるつもりでいたが、タイミング良く彼がクラクションを鳴らしてくれたので、それに便乗させてもらったのだ。


確認のため浴室の扉を開けると、余りにも臭かったので心配しながらも換気扇を回す。

窓から覗いていると、音に気付いたらしき1人が近寄って来たが、鼻をヒクヒクさせた後、まるで興味を失ったかの様に歩いてどこかに行ってしまった。


やはり何らかのフェロモンの様な物を発していると言う考え方は間違いなさそうで、上手く利用すれば奴らをコントロール出来るのでは無いかと思う。


そいつはもう動く気力すら残っていない様にぐったりしており、何故か両眼も潰れていて、す巻きにする時も、猿ぐつわを噛ませる時も何の苦労もしなかった。


それでも昨夜の事を考えれば突然動き出す事も否定は出来ず、うつ伏せに寝かせて更にテーブルや椅子を乗せておく。


妹に状況を伝えると、

「今日だけは自分の部屋に入っていい」

と初めて入室許可が出たので、もう入り慣れた妹の部屋に入った。

理系の大学生らしく、キッチリまとめられたその部屋の引き出しを指示通り開けると、小学生向けの雑誌の付録だったと言う簡易的な顕微鏡が出てきた。


まさかと思い確認すると、やはり思った通り僕が研究を実行するらしい。


メールを開くと体温や脈拍、呼吸や反射などの生体反応の確認から、細胞の採取や最終的な解剖の手順まで詳細な内容が書かれていた。


解剖の部分は取り敢えず置いておいて、メールの通りに作業を進めて行く。

その内容はスマホを通して妹に送られ、また妹を通じてみんなに拡散されていった。



未だに僕はみんなを助けられていない。

それでも少しづつだが、前に進めている様に感じる。

昨日、近所の人達に助けてもらった時、応援してもらった時。

その時確かにそれを感じた。


僕がもらった物を少しでもみんなに返そう。

それぐらいしか、僕にできる事は無いのだから。



緊迫した状況の中、いつに無い幸福感に包まれながら、僕は夜まで作業を続けた。



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