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第17話 命の選択

あの親子を救ったのは、近所に住む、妻子を事故で亡くした男性でした。

生きる意欲を無くしていた彼は、

窓越しに見える仲睦まじい親子の姿に、

いつも救われていたのです。

命をかけてでも親子を救う事は、彼にとっては当たり前の事で、その行動が即座に実行出来たのは、

妹が拡散した情報のおかげでした。


眠れないまま夜が明けた。


あの後、僕は明け方まで観察を続けた。

僕らを救ってくれたその人の思いを、

人を助けたいという思いを、取りこぼさない様に。

その死を全て無駄にしない様に。


その人がまた、動き出すまで。



僕は考えていた。

人を助けられない事は、果たして罪なのだろうかと。


僕らを助けてくれたあの人は、親子を助けたいという

純粋な気持ちで動いたのかも知れない。


僕は違った。

あの時の僕は、助けられない事は罪だと考えていた。

あの親子を助けられない自分を責め、

あの親子の死を見たくないという事だけで、

この命を捨てようとしていた。


でも、

最初から助けようとしない事と、

結果的に助けられない事は違う事だ。


どんなに頑張っても、どんなに考えても、

出来ない事は必ずある。


もし出来ない事が罪だと言うなら、

弱い人間は全て

罪人になってしまうのではないだろうか。


そして今、僕が本当にすべき事は

目の前で誰が死のうとも、逃げずに受け止め、

みんなが目指す光を探し続ける事だ。



僕が出した結論は、自分が生き残るための言い訳かも知れない。


でも、いつかその言い訳は、あの親子を助け、

死んでいった人達の願いを叶える事になる。


そう自分に言い聞かせた。





昼ごろ、不意にスマホに着信が入る。

妹からだ。


言われるがままテレビを見ると、

スマホのリモート中継とか言うやつで、

ホワイトボードの前の男が得意げに話している。


内容は、

「シチュエーション別ゾンビ対策」



良かった。

僕と同じ様な事をしている人がいる。



妹の避難先は比較的高いマンションで、

奴らの観察に向いているとは言い難い。


ネットに溢れる情報は確かに多いのだが、

信憑性に欠けるものも多く、

誤った情報を広める事は、

逆にみんなを危険に晒す事にもなりかねない。


男の話している事は、僕の観察データと違いがなく、

データに基づいたその対策は、多くの人を救ってくれる事だろう。


僕だけでは圧倒的に足りない情報。

この様な人達と情報を共有出来れば、

この危機を乗り越える事もできるのでは無いか。



思わぬ方向から差し込んで来た希望の光。

僕は食い入る様にテレビの画面を見る。


その男が語るその言葉は的確で、

短い文章でありながら、今すべき事や必要な物。

奴らに見つからない様にするために、

やっていい事、いけない事。

その全てが手に取るように分かった。


この短時間で、あれだけの情報をまとめるのは、

相当大変な作業だったに違いない。



興奮を抑えきれない僕の意識を遮る様に、

妹がポツリと言った。


「こいつの胸、よく見て」


その胸には社員証。

父の命を奪ったあの大企業の社員証。


更に妹は、

今にも消え入りそうな声で、

僕に言った。


「私のアカウントやメールアドレス、

アップしていたデータや、私のまとめた文章。


その全てを、

こいつらに奪われてしまった。


もう私には

みんなを救えない」



主人公から妹への情報伝達は、

観察結果や考察の書き込まれたメモを

手当たり次第スキャンして送り付ける、

というスピード重視の方法で行われています。


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― 新着の感想 ―
[一言] とても大企業が憎いですね。 いつか報いが来ることを祈ります
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