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第15話 光

もう日は沈みかけていた。


朝からずっと行われた観察と考察は、逐一妹に送られ、誰にでも分かりやすく再構築された上で、次々と発信されていた。


対応策だが、今の所は奴ら気づかれない様にするしか無い。

思っていた以上に、奴らの攻撃性が高いのだ。



今の所、奴らについて分かったことは、


視覚、聴覚、嗅覚は、ほとんど衰えていない。

とにかく気付いたものには、必ず駆け寄っている。

特に音には敏感で、茶碗の割れる音に想像以上の数が集まって来た。


同士討ちは基本的にはしない。

互いに気付き、近くまで駆け寄った挙句、通常行動に戻るという事を何回も見た。

視覚的に判断している可能性もなくは無いが、小綺麗な奴にも、ぐちゃぐちゃな奴にも同じ行動をとっていたので、もしかしたらフェロモンの様なものを発しているのでは無いかと思う。


そして意外な事に、奴らの目的は食う事では無い。

噛みつきという攻撃をした結果、食べてしまっているだけだ。

何故なら、奴らの中には、致命傷と思われる傷以外は、ほとんど無傷という者も多数見られた。


そしてこの結論に至った時、何故ここまで奴らの人数が爆発的に増えたのか分かった。


もし、被害者が足や手、その他感覚器までを食われてしまっていたら、仮に奴らの仲間になったとしても人を襲う事など出来なかったはずだ。


色々考えては見たが、今の所僕らが奴らに対抗する方法は一つも見つかっていない。



ただ一つ、まだほんのわずかな可能性だが、微かに光が見えた気がした。


奴らは恐らくエネルギー補給が出来ていない。


そして、壊れた体が回復する事もない。


その体は動けば動く程枯渇し、崩壊していく。


まだ、それを検証する方法は無い。

しかしそれを証明する様に、自転車を追いかけて来た奴らは、ほとんど動いている様子が無いのだ。



このまま隠れ続けられれば、みんな助かる事が出来るのではないか。

奴らの限界さえ分かれば、それが可能なのではないか。


そんな事を考えながら、観察を続ける僕の視界の片隅、

少し離れたアパートの窓のカーテンが微かに動いた気がした。

目を凝らしてよく見ると、そこには若い母親と、小さな子供の不安気な顔があった。


僕は慌ててカーテンの隙間を閉じる。



絶対に見つかってはいけない。


奴らにも、

あの親子にも。

あの親子は僕を見つけたら、きっと僕に助けを求めてしまう。

そんな事をしたら、

外に何かを伝えようとしたら、

必ず奴らに気づかれてしまう。


そして僕は願った。


もう僕が君達を見つけた。

必ず君達も僕が助ける。

お願いだからもう少し我慢してくれよ。

頼む。

頼む。

頼む。

頼むよ。



今にも叫んでしまいそうな衝動に駆られながら、もう一度あのアパートを見る。


そこにはすでに親子の顔は無く、人の気配など感じられない、ただ真っ暗なアパートがあった。






と、先程の部屋のカーテンの隙間に、ほんの小さな明かりが灯った。


その親子は、ただ不安だったのだろう。


怖かったのだろう。


もしかしたら、子供が泣き出してしまいそうだったのかもしれない。


その明かりは、まるでロウソクの様にとても小さくて弱々しい光。


でもその親子にとって、この不安と恐怖から救ってくれる、小さな小さな希望の光。


そんな小さな希望の光に


奴らは一斉に向かって行った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] すべて読ませていただきました。 もともと絶望系でゾンビ小説好きな私からするとかなり心に来る内容の話ばかりで読んでいて楽しかったです。 そして何よりも一話一話が短く読みやすいのですらすらと読…
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