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第14話 変われない僕

2日目


「うわ、ギリギリじゃん!」


8時35分。

急いでいつもの天気予報を見る。



いつも通りのいつもの部屋。

しかし1年間繰り返したあの日常は、そこにはもうない。


いつもの世界なら良かったのに。

昨日が全て、夢なら良かったのに。


そんな思いを否定する様に、モニターは、ピーという甲高い電子音を鳴らし続けた。

事態が表面化する前、いち早く奴らの襲撃を受けたそのテレビ局は、その機能の全てを、奴らに奪われてしまったらしい。




換気扇も回さず、キッチンで鍋に湯を沸かす。

念の為3階に上がってから、インスタントラーメンをその鍋に放り込んだ僕は、カーテンの隙間から外の様子をうかがった。

窓から見えるフラフラと歩く数人の人影を、

その全てを見逃さない様、僕は観察する。


幸い、通信を含めたライフラインは、まだどれも完全には止まっていない。

テレビ局も3局は放送を停止してしまっているが、残りのテレビ局は必死にこの世界の危機を伝え続けていた。

未確定な情報も含まれているが、停止中の原発を含む発電所や通信会社などの重要な施設には、自衛隊が派遣されているそうだ。


しかし、思った以上に状況は良く無い。


奴らの発生源は都心部かと思われていたが、実は全国で同時期に発生していて、安全な場所などどこにも無かった。


あくまで"制圧"を目的としている全国の警察や機動隊は、殺さない事を目的とした武器で必死に奴らと戦い、多くの人を避難させたものの、そのほとんどが命を奪われてしまったそうだ。


更に全国各地のインフラ設備を守る自衛隊に、一般人を助ける余裕など無い。


まさに八方塞がり。



でも、やらなければならない。


いや、必ずやってやる。


僕には、妹やその友達の様な頭脳や繋がりは無い。

あのエリート達の様な腕力や権力も無い。


でも、僕は僕のまま、みんなを救うのだ。

誰よりも、この世界を思い浮かべて来た。

この家から出なくても、やれる事が有る。


防衛に向かない古い民家でも、

町に一つしかない、扉だらけの避難所だって、

奴らの習性や能力が分かれば、

守る方法は必ずあるはずだ。




僕が窓から投げた茶碗が、道路に叩きつけられて割れた。


その音に群がる奴らを見ながら、

僕はまるで狂った様に、

ただひたすらにメモを取り続けた。



踏み出す方法は一つでは無いわけで。

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