第12話 反撃
あれから時間が経ち、1日目の夜になった。
あの後、号泣し何を言っているのか分からない母、そして意外なほど冷静な妹とゆっくり話した。
母は会社休憩室のテレビであの惨劇を見ており、僕のメールが届くと、会社の皆と共有。
かなり早い段階で奴らが付近を徘徊しだしたにも関わらず、周辺施設では今のところほとんど死亡者が出ていないとの事だ。
妹はテレビこそ見ていなかったが、若者らしいネットワークですぐに惨劇を知り、母と同様僕のメールを皆で共有。
防衛のしづらい学校を離れ、近くの学生のマンションに避難。
僕のメールに従い備蓄も済ませているようで、こちらもかなり落ち着いている。
しかし、父の最後を聞いた妹の、異様なまでの落ち着きは全く違う理由だった。
惨劇の情報に皆が半信半疑の中、妹はある噂を耳にしていたらしい。
惨劇の起こる少し前、一部の学生や教授達が、一斉に学校から姿を消した。
そして同時に、学校に備蓄しているはずの災害用備蓄品は全て運び出され、売店すらも破壊され、全ての商品が持ち去られてしまった。
姿を消す直前、彼らは言っていた。
自分達以外は皆死ぬのだと。
自分達以外の命に、価値など無いのだと。
妹はいつも感じていたそうだ。
大学で見かけるその連中の目、まるで虫ケラでも見るかのようなその視線。
その態度、言動から伝わってくる、その連中の異常性を。
そして繋がった。
僕が見た光景、父の見た光景。
妹が見聞きした全てが。
姿を消したのは、大企業経営者一族と、その取り巻き連中。
妹は言った。
「父の仇をとりましょう。
私の周りの皆んなも、
協力してくれると言ってるから。」
1年間周りを拒絶していた主人公は、家族にPCアドレスを聞く事も、教える事もありませんでした。
唯一残っていたスマホの家族メールは、主人公と家族の最後の繋がりだった訳です。




