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第11話 痛み

母と妹はまだ生きている。

しかも避難先はかなりの安全を確保出来ているとの事だ。


そのメール内容を肯定するように、母と妹からの電話通知と安否確認メールはキッチリ20分毎に送られてきていた。

時間を常に確認出来るくらい心に余裕が有るのだろう。


電話をかけようとも思ったが、今はまともに話せる自信が無い僕は、自分が生きている事、家の中はまだ安全で有る事、そして父が死んだ事を丁寧にメールで伝えた。

今頃母と妹はかなりのショックを受けている事だろう。



連絡も終わり、一息着いた僕は、改めて父のメールを全て読んだ。


あの後、安全を確保した父達は更なる食料の購入と

避難受け入れを進め、その献身的な行動に協力を申し出た近隣コンビニからの大量の物資提供もあり、

かなりの避難拠点を作り上げたそうだ。


僕が送った2通目のメールも時間はかかったが届いていて、略奪者達への対応も進み、その上で、あらゆるネットワークを使って、この危機を乗り越えるための初期対応方法の拡散を始めていたらしい。

(ほぼ、僕からのメールのコピペだった様だが。)


しかしそんな中、父達の拠点はまるで軍隊かの様に統制のとれた略奪者集団の攻撃に遭ってしまう。


恐らく、その集団は近隣コンビニの空っぽなった商品棚、略奪の跡もなく綺麗に運び出されている様を見て、近くにあったその拠点に狙いを定めたのだろう。


呼びかけに応ずる事もなく、封鎖されている一ヶ所の入り口を破壊した集団が拠点になだれ込む。

想定外の人数だったとは言え略奪者に備えていた父達はそれに抵抗。

奴らの接近に気がついた略奪者が逃走するまで、見事拠点を守り切ったそうだ。


しかし、殺す気で襲って来る略奪者に対する人的被害は大きく、30人を越える負傷者を出した上、父を含めた数名は致命傷とも言える傷を負ってしまった。


それにも関わらず、致命傷を負ったメンバーは最後の力を振り絞り、破壊された入り口を外から車で塞ぎ、迫り来る奴らから中のみんなを守ったらしい。


最後のメールは僕への謝罪ばかりでうんざりしたが、最後に父と話せた事は本当に良かったと思う。


やはり父は頭を下げたまま死んでいい人では無かった。

あの電話の向こうの父は、確かに最後は胸を張っていたと思う。

力強く、ハッキリとしたその声は、不幸な人間の声では決して無かったのだ。


人の死は残念だ。

しかし、死ぬ事は不幸では無い。

そしてその事は、自分だけの事を考えている人間には決してわからない事。

そう思えた。


そして誓った。


人の痛みをなんとも思わないあのエリート連中に、

必ず人の痛みをわからせてやる。


父は見ていたのだ。

逃走する車。

あの大企業の、

あの営業車を。



父からのメールはここまで細かく書いてありませんでした。

主人公が父を想うあまり、かなり誇張された内容になっていますが、実際の父の活躍はその想像とほとんど違わないものだったようです。

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