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4.転性したまま転生します!

 馬にも乗れるようになったと言うことで、私の方は準備OK!

 それから数日後、オスミ中佐を後見人として私をカリセン王国侵攻軍の総司令官に任命する旨の全体通知が出された。


 いきなり小娘が司令官だもんね。クルツの駐屯地で私の魔法を直接見ていた軍人以外は、

『何で?』

 って思ったらしい。

 当然だと思うけどね。



 異例の小娘抜擢だけど、この国は共和国と言いながらも総統による絶対王政(?)が敷かれた軍事国家って感じだもんね。

 王様じゃなくて総統だけどさ、総統の指令には絶対に逆らえない。


 それ以前に、組織だもんね。

 こう決まった以上、イヤでも私を総司令官として受け入れなければならない。



 でも、人の心ってのは、そんな簡単なモノじゃないからね。私の言うことを聞こうって兵士は、マジで私の能力を直接見た人達だけだよ。

 それも、上官として言うことを聞くんじゃなくて、首を刎ねられたくないから言うことを聞くってヤツ。

 完全に恐怖政治だね。


 ただ、救いなのは、オスミ中佐が私の後見人になってくれて、私と常に一緒にいてくれたことだと思う。

 兵士達は、基本的に私の言うことを聞きたくないだろうけどさ。でも、オスミ中佐の命令なら大多数の軍人達は聞いてくれるもんね。


 なので、実質、私は総司令官って言いながらもお飾りで、オスミ中佐が総司令官代行って感じの組織になった。

 中佐が私のサポート役を自ら買って出てくれたのは、この展開を読んでのことだったんだろうね。



 すぐさま、私は中佐と共にクルツ町に転移魔法で移動。

 そこから私をお飾り総司令官として、軍隊はカリセン王国に向けて出発した。


 当然、カリセン王国側も私達を迎え撃つべく軍隊を出動させた。そして、カリセン王国の王都の北西に位置する町オリンピアダンで両軍は激突した。


 ただ、オスミ中佐から出された指令に部下達はムチャクチャ驚いていたけどね。

 だって、先ず私と補佐数名だけでカリセン王国軍を相手にするので、私が救援を求めるまでは全員待機って言うんだもん。


 まあ、これは、私の力を部下達に見せ付けるため。

 いずれにしても、私は全然負ける気がしなかったけどね。



 補佐が付いたのは、相手が弓矢を放って来た時に、私に当たらないように楯で守ってくれる人が必要だったから。

 勿論、人間が楯になるんじゃないよ!

 そこまで私は腐ってないからね。

 ちゃんと楯で守ってくれるんだからね!



 カリセン王国軍が、私達を迎え撃とうと刀を抜いて一斉に迫ってきた。

 でも、そんなの関係ない。

 私が一言、

「死ね!」

 と唱えれば敵軍の兵士達は次々と首が飛ぶ。

 毎秒、四人くらいのペースかな?


 首を刎ねられた人のすぐ後ろにいた人は、相当驚いただろうね。それこそ、その場でお漏らしするレベルだと思う。

 あちこちで人間の首が飛んで、噴水のように血しぶきが舞い上がる。この超常現象を目の当たりにして、敵兵達は、恐怖のあまり敵前逃亡し始めた。



 開戦してすぐに、カリセン王国軍は兵士を喪失した状態。

 カリセン王国からすれば、まさかの展開だろうね。軍隊が降伏するまでに一時間も必要としなかったよ。


 そして、その数時間後には、カリセン王国と言う国家そのものが、ノーソラム共和国に全面降伏することになった。



 この衝撃的な大勝利に、ノーソラム共和国軍の兵士達は非常に士気が上がったし、私が総司令官として大抜擢された意味を理解してくれた。

 そして、私達は、勢いに任せて、この世界最大の超大国であるラージェスト王国に進路を向けた。



 それから一週間後、私達はラージェスト王国と、その同盟国であるアデレー王国の連合軍と激突した。

 私は、馬にまたがりながら、自ら軍の先頭に立って敵軍に向けて突き進んで行った。


 そして、たった一言唱えればイイ。

「死ね!」

 これだけで、敵兵士達の首が次々と胴体から切り離されて宙を舞う。

 そして、残された身体からは激しく血が噴き出すだけ。

 これが私に与えられた無敵の魔法だ。



 さらに私は、容赦なく、

「死ね!」

 と唱えた。

 すると、敵軍の二列目、三列目の兵士達の首が面白いように飛んで行った。


 こんなものを見せられたら一溜りもない。

 敵兵達は戦意を喪失して、慌てて敵前逃亡し始めた。

 自分の番が来る前に逃げろってね。

 カリセン王国の時と、まるっきり同じパターンだったよ。



 もはやラージェスト&アデレー連合軍は完全に崩壊したも同然。

 残ったのは最後尾にいた高官達数人だけだった。


 彼らは、多分、司令官とか王族貴族とかなんだろうね。

 なので、立場上、開戦早々逃げ出すなんて無様なマネは許されなかったんだと思う。



 その中にイケメン発見!

 これはラッキーだよね!

 私は、もう、以前の私じゃない。やりたい放題、好き勝手に生きることができる無敵の魔法を手に入れた魔法美少女!

 今、この世界で私に逆らえる者はいないはず。

 それに、この世界では絶対に後悔なんかしたくない!


 当然、このイケメンは私のモノになって然るべき存在だよね?

 それを決めるのは誰でもない。この世界の支配者になる私だよね?

 私は、そう思いながら彼の近くまで馬を走らせた。


 そして、馬を降りると、私は、

「死にたくなかったら私に奉仕しなさい」

 と、そのイケメンに言った。



 その風采から察するに、多分、そのイケメンは、この国か、この国の同盟国の王子様だと思う……と言うか、そうであって欲しい。

 もしそうなら、私は念願の王子様と色んなことが出来るもん!


 決まり。私の中では、今、彼を王子様と呼ぼう!

 そのイケメン王子様が私を見て怯えている。

 私が怖いんだね。なら、私の言うことを何でも聞いてくれるよね?



 どうせなら彼を襲ってみたい。

 そして、私は、彼と強引に唇を重ねた。

 実は、これが私のファーストキス。

 以前の私なら、自分からこんなこと、絶対にできないよ。


 この世界に来て無敵の能力を授けられて、自分でも驚くくらい性格が変わったと思う。これなら後悔の無い人生が送れそうだ。

 マジで、この世界に来て良かった。



 カワイイ系美女の私に唇を奪われて、この王子様は、怯えながらも悪い気はしていないみたいね。

 むしろ、喜んでいるっぽく見えるのは気のせい?

 多分、気のせいじゃない。それだけ私は、可愛いくて美人なんだもん!

 思わず大声で笑い出しそうだったよ。

 勿論、絶対的支配者としてね。



 でも、この直後だった。

「離れろ、このクソ女!」

 どこからか野蛮な声が聞こえてきた。


 声がした方を振り返ると、そこにいたのは怒りが込み上げてくるほどの超美人。絶対に生活圏内にいて欲しくないタイプだ。

 いつの間にって思ったけど、多分、空間転移してきたんだろう。



 目が大きくて小顔。

 ウエストが細く引き締まっていて脚が長くて……、特に目を引くのが大きな胸。私の胸より数段大きい。

 まるで大玉のメロンを二個、パット代わりに入れているように見える。それくらい大きいってことだよ。爆乳ってヤツだ。


 私はカワイイ系美女になりたかったし、あんな爆乳になりたいとは思っていなかったけど、実際に見せ付けられると超ムカつく。


 私は、

「なに、このHな女。気に入らない。死ね!」

 と、大声でその女に言い放った。

 首ちょんぱ魔法で、その女性に向けて発動したんだ。



「ぶちっ!」

 首刎ね完了!

 その女性の足元に、その女性の首が転がった。


 これを目の当たりにした王子様は、

「アキィィィィィ!」

 と号泣しながら、その女の名前を叫んでいた。


 知り合いだったんだね。もしかして恋人?

 でも、もう王子様は私のモノだからね。私だけを見てくれればイイんだから。



 その女は、もう、これで死んだはず……。王子様は、支配者たる私のモノ。

 なのに、彼女の首は、私と目と目が合うと、

「ケケケケケケ!」

 と不気味に笑い出した。


 なにこれ、怖い。

 私は、思わず震え上がった。

 これって、人間じゃない。

 妖怪か何か?



 そもそも、頭部を失った身体から、普通なら激しく噴水のよう血しぶきが上がるはずなのに、それがない。


 その女性は、自分の首を拾い上げると、首を胴体の上に乗せた。しかも、切断したはずの首と胴体が綺麗にくっついている!?

 まさに超常現象だ!

 もしかすると、私の常識の範囲を遥かに超えた魔法なのかもしれない。


 そして、その女性は、

「アンタに私を倒すことはできない!」

 と言うと、物質創製魔法で鞭を出し、私に向けて鞭を打ち込んで来た。


 しかも、いたぶるように何回も。

「パシッ! ピシッ! ペシッ!」

 もの凄く痛い。まるで肉が避けるよう。


 私は、

「痛い! やめて! 許して!」

 と泣き叫んだけど、この女性は、一向に止める気配がない。むしろ、Hな意味の女王様になって喜んでいるって感じが滲み出ていた。



 この時、完全に私は、この女性と、この女性が振るう鞭だけに意識が向いていた。

 他の何も見えずにいたんだ。と言うか、見るだけの余裕なんてなかった。


 そして、強烈なエネルギー波が私に向かって飛んで来るのに気づいた直後、私は避けることもできずに直撃を受けて、後方に派手に弾き飛ばされた。


 女性の後方から、とんでもないレベルの衝撃波が放たれていたんだ。正しくは反重力魔法みたいだけどね。

 その女性の後にいた男性が放っていたようだ。

 この衝撃で、私は全身の骨が砕けたっぽい。もう、全身が痛いのを通り越して痺れているし、もう動けない。



 そんな私に追い打ちをかけるように、巨大な火炎球が放たれて来た。さっき衝撃波を放った男性が私に撃ち込んで来たんだ。

 もの凄いパワーだ。


 これを受けた直後、私の視界は真っ暗になった。多分、私の身体は、その火炎球に焼かれて完全に消し飛んだんだろうね。

 私の魔法が効かないクソ女と、強大な魔法を使う者のタッグか……。

 完全に私を倒すための編成だよ。



 せっかく転移してきたのに、この世界での人生は随分短かった……。

 でも、地球にいた頃よりは、数段マシだったかな……。

 毎日『男らしくしろ』って罵倒されるだけだったもんなぁ。

 あの頃は、マジで生きるのが辛かったもん。


 それが、こっちに来て人生が一転したもんね。

 イケメン王子様と、ムリヤリだけどキスできたし……。


 短くても有意義な人生だったかもしれないね。

 少なくとも、地球にいた頃に比べればさ……。


 …

 …

 …


 そんな私に誰かが語り掛けてきた。

「大田原金之助」

「その名前で呼ばないで。せめてラヤって呼んで」


 目を開くと、そこは何も無い真っ白な空間だった。

 私の目の前に光の玉が降りてきた。しかも、それは非常に神々しいエネルギーに満ち溢れていた。

 さすがに、私の中にある邪悪な部分が完全に見透かされているような感覚に陥ったよ。


「では、ラヤと呼びましょう。私の名はリニフローラ。このブルバレン世界を管理する神の地位にある存在です」

「神様!?」

「そうです。アナタは、堕天使ラフレシアの召喚魔法で、このブルバレン世界に転移し、そこで死を遂げました」

「分かっています」

「しかも、アナタは多くの人々の命を粗末に扱いました。その罪は許されるべきものではありません」

「それも理解しています。ですので、私は地獄に落ちるのでしょう?」


 あれだけ派手に多くの人間を殺して来たんだもんね。

 私は、当然の報いだと思っていた。

 でも、神様の仰る言葉は違っていた。


「いいえ。アナタには、私の友人アクアティカが統べるトモティと呼ばれる世界に転生していただきます。地球で言う中世ヨーロッパレベルの文明の世界です」

「中世ですか?」

「そうです。そして、魔法が使える世界です。そこで、このブルバレン世界で殺した人数の約三倍の人数に救いを与えてもらいます」

「救い……ですか?」

「そうです。そのために、アナタの首刎ね魔法は封印し、新たに高度な治癒魔法を与えます。それを駆使して人々の役に立つのです。それと、アナタの容姿は、ブルバレン世界でラフレシアから与えられたモノと同じモノにしますが、その美貌は一人救うごとに24時間のみ保たれます。二人救えば48時間、三人救えば72時間、美貌は保たれます」

「初期状態は、どっちの姿なのでしょう?」

「ラヤの姿です。そこで、目覚めてから24時間以内に一人救う必要があります」

「タイムオーバーするとどうなるのでしょうか?」

「大田原金之助に戻ります」

「えっ?」


 つまり、ガンガン救えってことだ。

 元の姿に戻りたくなければね。

 ある意味、脅しに近いよ。私にとっては。


「アナタは三千人以上を殺しましたので、一万人に救いを与えることを義務とします。それが達成された時、アナタの姿は完全にラヤの姿で固定され、大田原金之助の姿に戻らなくなります」

「他の魔法は?」

「患者のステータス画面を見ることが出来る能力と、疾患等を特定するための最高の診断魔法を授けましょう」

「食べ物とか飲み物を出せる魔法とかは?」

「ありません」

「服とか靴とかを出す魔法は?」

「ラフレシアがそれをアナタに与えていましたが、今回はありません」

「そんなぁ」

「治癒・治療に関する魔法のみです。衣食住には困らないように設定します。ただ、アナタの魔法を見て、敵兵士達が敵前逃亡してくれて良かったですね。それが無ければ、どれだけの人を殺していたか分かりませんから」


 言われてみれば、たしかにそうだ。

 相手が逃げださなかったら、私は調子に乗って、それこそ何万人殺していたか分からないよ。

 変な言い方だけど、三千人で済んで良かったんだろうね。


「じゃあ、言語能力は?」

「それは、転生先の世界の言葉を全て読み書きできるようにしておきましょう。あと、特例でアイテムボックスは使えるようにします」

「ありがとうございます」

「それから、調()()()()()()()()()出せるようにしてあげます。では、新たな世界での大いなる努力に期待します。年齢は大田原金之助の時と同じ14歳でスタートします。先ず、目が覚めたらブロメリオイデス教会に向かいなさい。そこにアナタを必要とする男児がいます」

 そう言われた直後、私の視界は再び真っ暗な闇に覆われた。

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