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24/202

23.暗い過去コーナー!

 その晩、私は、X村で夕食を御馳走になった。

 この村では、井戸から沢山の水が出てくるし、割と手広く農業を展開している。

 多分、エリックの水魔法で井戸をコントロール……と言うかアクセレートしているってことだろう。

 当然、飲み水を得るだけではなく、畑に散水することも可能ってことだ。


 それに、最悪の場合は、アンが魔法で食料を出せるわけだし。

 なので、他の村に比べると食料には苦労していないっぽい。



 ただ、異世界の料理だもんなぁ。

 どうしても私には、トモティ世界で経験したイマイチ料理のイメージが付きまとう。

 その前のブルバレン世界の食べ物は美味しかったんだけどね。



 私は、出てきたスープを恐る恐る口にした。

 お味の方は、

「美味しい!」

 特に問題無し。


 どうやら、このエディアカラの世界は、トモティ世界とは違って地球……と言うか日本の味覚にかなり近いようだ。

 これなら思い切り食べられる!



 ただ、私が余りにも感激していたので、

「前の世界じゃ、そんなにマズイもの食べてたの?」

 ってナツミから聞かれた。


「そうなんです」

「そう言っちゃうほどマズかったんだ?」

「だって、前の世界は、カレーが否定されるくらい味覚が違うんですよ!」

「カレーがアウト?」


 さすがに、これにはナツミも怪訝そうな表情を見せた。

 100%あり得ないって感じだ。


「そうです!」

「それって、絶対におかしくない?」

「おかしいです!」

「180度違うね、確実に」

「ただ、マヨネーズ味と塩胡椒味は、互いにセーフでした。それが救いです」

「そうなんだ。でも、苦労してきたんだね」

「食に関しては苦労しましたよ。その前の世界の料理は美味しかったんですけどね」


 ただ、この会話を聞いていて、エリックもアンも、頭の上に大きなハテナマークを三個くらい出したような顔をしていた。

 他の世界って言われてもピンと来ないだろうからね。


「君を雇うと決めた時にも、異世界がどうのってナツミと話していたけど、それって、どういう意味なのか、二人とも教えてくれないか?」

 そうエリックに言われて、私は、

「じゃあ、私から。実はですね……」

 今までの経緯を順に話して行った。

 名付けて、暗い過去コーナー!



「私が生まれ育ったのは地球と呼ばれる星の中の日本と呼ばれる国でした」

「星って、あの夜空に光る?」

「自発的に光る星ではありません。この世界も、星の一つです」

「まさかぁ?」

「巨大な球体です!」

「信じられないなぁ」


 地球でも、かつては地球が球体で、太陽の周りを回っているなんて考えていなかったからね。

 その頃の地球と文明レベルは大同小異ってことだ。


「今は、その話はスルーしてください。説明するのがメンドクサイので。ある日、私は、別の世界の堕天使に召喚されて、ブルバレンと呼ばれる世界に転移し、そこで破壊神として派手に活躍……と言うか大量虐殺しました」

「魔法が使えたから召喚……って言うかスカウトされたのかい?」


 多分、地球には魔法が無いとは思っていないんだろうね。

 この世界の常識……魔法を使える人間が少数ながら存在するのが普通って思っているだろうから。


「地球にいた時には魔法は使えませんでした。異世界転移とか異世界転生とかをすると、特典で魔法が使えるようになることが多々あるらしくて、私も、特典で使えるようになりました」

「そうなんだ!?」

「まあ、ブルバレン世界に飛んだ時の特典魔法は首ちょんぱ魔法でしたけど……」

「……(あれが特典だったんだ!)」


 異世界特典って物の存在に、エリックは驚いたようだ。

 多分、『なんてものを与えてるんだ!』とは思っていそうな感じだったけどね。

 そう思うのが普通だろうし……。


「ところが、首ちょんぱ魔法が効かない女性が現れたんです」

「えっ?」

「その女性と、その女性の仲間との戦いに負けて、私は戦死しました。ただ、その女性が非常に、ナツミさんにそっくりだったんですけどね」


 これを聞いて、ナツミが、

「じゃあ、もしかすると、あれって、そう言うことだったんだ」

 と言った。思わず言葉が出てしまった感じだ。


 私が、

「あれって?」

 と聞くと、

「私の番になったら話すね。続けて」

 と言われた。



 話が途中で切れるのも何だし、私は、続きを話すことにした。

「戦死した後、大量虐殺の罪を償うために、私は女神様の力で、さっき言いました味覚が違う世界に転生することになりました。その時に治癒魔法を与えられ、治癒魔法を使って多くの人々を治療しました。そして、罪を償い切れたと認められ、次なる世界として、この世界に転移してきたんです」


 まあ、イリヤ王子との婚約と元は男性だった件、それからユーフォルビア帝国とカトプシス王国の戦争を止めた件は端折ったけどね。

 戦争の件は説明するのが面倒だし。

 元男性だったことは隠したいしね。


 王子との婚約の件も、結果的に婚約破棄だもんね。

 普通は、積極的に話すべきことじゃないだろうからさ。


 さすがに、想像を超えていたんだろうね。

 エリックもアンも唖然とした顔をしていたよ。



 続いて、

「じゃあ、次は私か……」

 ナツミが彼女の身に起きたことを話し始めた。


「私も、ラヤと同じ世界の出身でして……。日本って国の会社で働いていたんですけど、会社が倒産して、行くあてもなく茫然としていたところに女神ラメラータが現れて、異世界転移を勧められました」

「ラメラータって?」

「私やラヤが生まれた星の女神様です」

「それと、ナツミも魔法が使えるのかい?」

「いいえ。私の場合は魔法ではなく、常識を超えた強靭な肉体が与えられました」


 多分だけど、ナツミの場合は人生の救済処置として、この世界に来ることになったって言うことだろうね。

 神様の不手際で死んだとか、異世界から求められて召還されたとか言うわけではなかったので、特典の魔法はもらえなかったってことなのかも知れない。

 その代わりに、強靭な肉体と言うか、とんでもない体力が与えられたみたいだけどね。


「まあ、地球での人生を早期退職するようなものだったからね。この底上げした体力が上乗せ退職金みたいなものよ!」


 そう言われても、エリックもアンも意味不明って顔をしていたけど……。

 でも、会社が倒産って、ナツミも苦労していたんだね。


「それでね。さっきラヤから聞かれたアレなんだけど……。実は、この世界に来る時に、せっかく異世界に行くんだったら、綺麗さっぱりリセットと言うことで容姿も変えてもらいたいって言ったのよ。そうしたら、どんな風にって言われてね。でも、特にこうなりたいって具体的な希望も何も無かったから、最近転移とか転生した人の容姿カタログみたいなのってあります? って聞いたら、同年代の異世界転生者の画像を見せてくれて、それで、あっ! 美人! って思ったのを適当に選んだだけなのよ。でも、それがラヤと関係のある人だったんだろうね。なんか、偶然って凄いわ!」


 そうだったんだ……。

 偶然ってのは分かったけど、マジで最悪な選択をしてくれちゃってぇ。しかも、好きで選んでいたのかよ!


 そりゃぁ、アキにそっくりだからって嫌ったり避けたりしちゃいけないってのは分かるけどさ。

 でも……やっぱり、慣れるまでに少し時間をください。



 しばらく談笑の後、私は、

「エリックさんは、水の魔法が、アンさんは食料品限定みたいですけど物質創製魔法が使えるんですよね?」

 と聞いた。


 エリックは、

「そうだけど、話していないのに何で分かったの?」

 って不思議そうな顔をしていた。


「私は、他の人の魔法を見抜くことが出来るんです」

「そうだったんだ。でも、ラヤほど派手に水を出せないけどね。さっき、野盗達の火を消したみたいなのは私にはムリだ」

「ご謙遜を。井戸をコントロールしているんじゃないですか? むしろアクセレートと言うべきでしょうか?」

「全部バレバレだね。まあ、この村の人達も周りの村の人達も、みんな、私とアンの魔法のことを知っているけどね。でも、野盗に連れ去られると困るから内緒にしてもらっているんだ」

「それが無難だと思います」


 たしかに言わない方がイイよ。

 特にアンの場合は、野盗達に食料調達係兼性欲処理係にされるのがオチだからね。



 翌日。

 特に野盗が現れる気配が無かった。

 と言うか、その後しばらく、野盗がこの村を襲ってくることは無かった。なので、私もナツミもアーノルドも暇になってしまった。


 ただ、暇を持て余して食っちゃ寝していても仕方が無い。

 持ち前の体力を武器に、ナツミとアーノルドは、畑仕事を手伝いに行くことになった。

 そして、私は、この村と、あと、近くのムラムラ……じゃなくて村々に出向いて、治癒魔法を使って病気や怪我を治して回ることにした。



 ただ、私が単身で行っても、いきなり知らない人間が来たら相手が身構えちゃうかも知れないってことで、アンが同行してくれることになった。


 そう言えば、アンってアラサーなんだよね。

 前の世界でもオリガ導師達がいたし、私ってアラサー女子に縁があるなぁ。

 ただ、アンは独身じゃないけどね!



 と言うわけで、

「転移!」

 先ず、私達が向かったのはS村。次のM村に行く予定だけど……。


 SとMか……。

 あまり深く考えるのはやめよう。



 早速、S村に到着。

 着いていきなり、

「村長さん、久しぶり!」

「これはアンさん。ご無沙汰しています」

 アンがS村の村長さんに声をかけた。この辺のコミュニケーション能力は私には無いからね。助かるよ。


「一昨日、エリックさんに井戸の様子を見てもらって、ホント、感謝してますよ」

「まあ、持ちつ持たれつってことで」

「いえいえ、こっちが頼りっぱなしで済まないって思ってますよ」


 本当に、この近辺の村々の井戸をエリックさんがコントロールしているんだね。

 さすが水魔法使い。

 みんなに重宝されているよ。


 それに、万が一の時にはアンが食料供給もするだろうからね。

 周りからしたら、絶対に敵に回せない夫婦だよね。


「それで、馬がいないけど、まさか徒歩で?」

「転移魔法で来たのよ」

「えっ?」

「でね。この娘が、うちの新しい用心棒」

「こんなカワイイ娘さんが?」


 正直、信じられないって顔をしているよ。

 たしかに、こんな小娘が用心棒ってのは、普通は想像し難いだろう。


「凄い魔法を使うのよ。この娘の転移魔法で、ここまで一瞬で来たんだから」

「マジですか?」

「そうよ。それと、この娘は治癒魔法も使えるってことで、往診に来ました!」

「マジ?」

「大マジ!」

「それで、一回いくら?」

「今回はタダでイイわよ!」


 なんだかエロ商売の会話みたいだな……。

 そうじゃないってことは重々分かっているけどさ……。


「タダより高いモノは無いって言うからな。後が怖いけど」

「まあ、お互い協力体制が作れればイイってことで」

「じゃあ、有難く診てもらうとするよ」


 S村の村長さんが、村人に声をかけて行った。

 すると、ポツポツと数人の老人達が私の方へと近づいて来た。少なくとも若いイケメンは一人も来ないなぁ。


 まあ、どの程度の治癒魔法を私が持っているか、この村の人達は知らないからね。

 なので、当然、体調が悪いのが治ればラッキーくらいの気持ちじゃなきゃ私の診察を受けようなんて思わないか。

 基本的に、もう死んでも悔い無しって人種しか来ないよね。



 来たのはジイさんバアさんが計三人。

 一人目は白内障で視界が悪い。

 二人目は椎間板ヘルニアで腰の痛みに足の痺れ。

 三人目は自覚症状として腹痛だけど、癌だね、これ。


 私は順番に、

治癒魔法照射(ヒール)!」

 患者の自覚症状がある辺りに手をかざして治癒魔法を放って行った。


 三人目の癌患者はともかく、一人目と二人目は手をかざす必要は無かったんだけど、毎度の如く治したって分かってもらうためのパフォーマンスね。

 勿論、治癒魔法は大成功!


「目が良く見えるわ!」

「痛みも痺れもなくなったぞ」

「俺も痛みが消えた!」

 もう、三人ともすっかり満足されたようだ。



 ただ、人間って、凄くゲンキンだと思う。

 この三人の様子を見て、

「次は俺だ!」

「私よ!」

「ワシじゃ!」

 次々と人々が押し寄せてきた。


 実験体を見てからじゃないと自分はかかりたくないってことだね。

 別にイイけど。


 来る者は拒まず。それが私のスタンス。

 なので、

「では、順番に診て行きますので並んでください」

 来た人を私は順に診察&治療していった。


 まあ、さっきの癌患者以上の重症者はいなかったので、割と楽に済んだけどね。

 別に大動脈解離とか脳腫瘍とか手足が切断された患者がいたわけじゃなかったから……。



 一通り患者を診終わると、

「では、また来週きますけど、急患が出たら私達の村まで来てください。しばらくの間、彼女はうちの村にいてくれるようですので」

 ってアンが村長さんに言っていたよ。


 でも、私も本来、やるべきことがあるっぽいからなぁ。そんな、何年もX村には居ないと思うけど?

 でも、まあ、アンの顔を立てるって意味では、数か月はいないとマズイかもね?

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