20.イカレた世界へようこそ!
エディアカラ編は、ナーロッパ世界が、何故か世紀末と化したような話です。
そこは、荒れ果てた荒野だった。
多くの建造物が倒壊し、大半の緑は失われ、まるで人類が終末を迎えた後の世界を連想させる。
私、ラヤは、ステータス画面の検索画面を開いた。
って言っても、一問一答式のチャットボットみたいな機能だけどね。
前の世界にいた時の検索機能は、辞書機能からの回答に限られていた。
でも、今回搭載されているヤツは、辞書機能に限らず、リアルに起きている情報も、開示可能な範囲で教えてくれる優れモノだ。
この世界に来る際に、女神様がバージョンアップ……と言うか超グレードアップしてくれたんだ。
魔法の方もグレードアップしてくれたみたいだけどね。
『Q:核戦争でも起きたの?』
『A:起きた』
『Q:地球の二十世紀から二十一世紀のような文明があったってこと?』
『A:ない』
『Q:どんな文明があったの?』
『A:魔法を中心とした世界』
『Q:文明レベルは?』
『A:中世ヨーロッパ風』
『Q:じゃあ、核は誰が持ち込んだの?』
『A:異星人』
…
…
…
この世界の名はエディアカラ。
かつては魔法を中心とした文明が栄えていた。
生活水準は元々、中世ヨーロッパ並みとのことで、まさに私が連想する異世界の王道的な世界だったみたい。
ところが、数年前に宇宙から侵略者が現れた。これを異星人Aとする。
異星人Aの科学力を前に、この世界の人類の科学力も魔法も、まるっきり歯が立たなかったっぽい。
そもそも、この世界の科学力自体は皆無に等しいけど……。
でも、この世界を守るべく戦ったのは人類だけじゃなかった。知性ある最強のドラゴン達も群れを成して応戦してくれたとのことだ。
そうしたら異星人Aは原水爆を投下。核の炎が吹き荒れて、ドラゴン軍は壊滅状態。
今では、ドラゴンの生き残りは極々僅かとの話だ。もう、見かけることすらできない。
結果的に、さらに別の異星人……これを異星人Bとするけど……極めて優れた科学力を誇る異星人Bが現れて、異星人Aの宇宙艦隊を追い払ってくれたみたい。
この世界の人々は、神様に救ってもらったって思っているらしいけどね。
今でも、異星人Bは、この惑星系に外部から侵略者が侵攻しないように宇宙ステーションを作って見張っていてくれているとのこと。
だけど、この世界の復興に異星人Bは力を貸していないらしい。
下手に異星人Bが手を貸すと、この世界の文明が異星人Bの色に染まってしまい、この世界の文明そのものが失われてしまう。
さすがに、それは宜しくないだろうと、異星人Bが判断したためのようだ。
つまり、この世界の色を他の世界の色に一切染めずに、保持すべきだってことだ。
その考えが、この星のために良かったのかどうかは分からないけどね。
前方に集落が見えた。
「やっと人に会える!」
そう思った矢先だった。
地面からネットが飛び出して来た。ネットって、普通に網の意味ね。インターネットは関係ないからね!
脱線してゴメン。
罠が張ってあったんだ。
一瞬にして、私はネットに包まれて身動きが取れなくなった。
そのネットは、今、木にぶら下がっている状態。傍から見たら、今の私って凄く間抜けに見えるんだろうな。
私は、前の世界で戦争を治める際に女神アクアティカ様から頂いた超チート魔法を全て使える状態だった。なので、転移魔法を使えば、罠から抜け出すことは可能だ。
でも、私は敢えて罠から逃げなかった。
だって、このままでいれば人に会えるかもしれないもんね。
私を捕えに集落から村人が出てきたのは、それから一時間後のことだった。
って、レディをそんなに待たせるんじゃないよ! もう……。
「まだガキじゃないか!」
「しかも女の子だぞ!」
「見かけねえ顔だな」
「それにしてもカワイくて綺麗な娘だ!」
「でも、なんでこんなところに一人でいたんだ?」
村人達は、野盗達から自分達の村を守るために自衛の意味で罠を張っていたらしい。
なので、罠にかかったのが怪しい男なら、即刻牢屋行き決定なんだろうけどね。
ところが、罠にかかっていたのは、カワイイ系美少女の私。それで、どうしようかってなったわけ……だと思ったんだけど……。
「一応、村長さんの命令だ。誰が相手だろうと一旦、牢に入れる」
「仕方ねえなあ。俺が貰って行こうかって思ったんだけどな」
「いや、俺が貰う!」
「おいおい、おめえら。この娘にだって選ぶ権利はあるぞ!」
「ちげえねえ!」
残念ながら、私はマニュアル通りに村の牢に入れられることになった。
でも、別にムリに抵抗する必要はないもんね。逃げたければ、いつでも逃げられる自信はあるから。
転移魔法で……。
この村からは、特に魔力を感じない。
多分、マトモに魔法を使える人はいないってことだろう。
牢の中には、私と同年代……14~15歳くらいの男性がいた。
まあ、フツメンかな?
ただ、その男性は静かなのが苦手なのか、それとも女性の私が同じ牢に入ってきたのが嬉しいのか分からないけど、妙にウキウキ声で私に話しかけてきた。
「俺はマークス。お前は?」
「ラヤ」
「ふーん。珍しい名前だな。お前、いったい、何をやったんだよ?」
「別に何も?」
「俺は、ちょっと食い物を盗みに入って捕まっちゃってさ」
「……(あっそ!)」
「これでも、この界隈じゃ有名なコソ泥なんだぜ!」
「……(コソ泥なんだ!)」
「まあ、育ち盛りだし、腹は減るしさ」
「……(うるせーな、コイツ)」
「何か言ったらどうなんだよ?」
「……」
「何だ、無視かよ?」
「……」
コイツ、女の子が相手だからってハッスルし過ぎ。
でも、その次の瞬間だった。
「じゃあ、そのまま、おとなしくしていてもらおうか!」
マークスが、服を脱いで私に襲い掛かってきた。
私をレイプする気だよ。
そりゃあ、私はカワイイ系美少女だもんね。
性欲盛んな男の子が、そうしたいのは分からないでもないけどさ。
でも、ダメ。
私は無詠唱で電撃魔法を放った。
「ギャー!」
さすがに、これを受けてマークスは、撃沈。しばらく動けないだろう。
牢の前に一人の女の子が来た。
まだ十歳にも満たない小さな娘だ。
核戦争後の荒れ果てた世界で、罠に嵌まって牢屋行き。
そこでウルサイ少年と小さな少女って、以前、何かの漫画で見たような設定だなぁ。
ここで、この女の子が言葉を話せなかったらコンプリートじゃない?
なんて私が思っていると、
「マリーって言います」
自己紹介してきたよ。ちゃんと言葉が話せるんだね。
「私はラヤ。14歳」
「この村の水を狙って野盗が出るの。それで、村人以外は一旦牢に入れる決まりになっているの」
「そうなんだ」
「ゴメンね」
「別に気にしていないから。マリーのお父さんとかお母さんは?」
「殺されちゃった……」
「そうだったんだ。ゴメンなさい」
「……」
ここは、悪しき力が支配する世界。
魔法使いも一応いるけど、強力な魔力を持つ魔法使いの大半は、暴力を振るう側と結託しているっぽい。
マジで一般民にとっては最低最悪の世界でしかないってことだ。
それから少しして、
「野盗だ!」
「野盗の軍勢が現れたぞ!」
「結構な数だ!」
村人達が騒ぎ始めた。
どうやら、ヤバいヤツ等が集団で村を襲って来たらしい。
もしかして、そいつらって構成員の大多数が、とても特徴的な髪形をしているんじゃない?
一度でイイから見てみたい!
「マリー。お前も村の一員。戦うんだ!」
マリーは、村人の男性にそう言われると、私達の方を気にしながら外に出て行った。
ええと……。
この場合、この村に無関係な私達に逃げろって意味で鍵を牢の前に投げるのが定番なんじゃないの?
私達も、このまま野盗達の餌食になれってこと?
もしかすると、マリーは牢の鍵を持っていないのかも知れないなぁ。
そりゃそうだよね。
普通は、こんな子供に牢屋の鍵を持たせるなんて危険なマネはしないよ。
悪党に鍵を奪われる可能性があるもん。
でも、私には鍵なんて必要ない。
何故なら、
「転移!」
魔法で脱獄できるからね!
一先ず、マークスは牢の中に置きっぱなしにした。
まだ電撃を受けたまま撃沈状態だったからね。
ムリに起こすのも悪いと思って。
そして、外に出た私の目に飛び込んできた光景は、数人の村人達の遺体。
生きてさえいれば、重傷者でも私の治癒魔法で治せるけど、死んでしまったら手の施しようが無い。
しかも、大男に一人の村人男性が捕まっていて、その大男は、
「死ぬまであと1センチかなぁ?」
とか言いながら、村人の首をへし折ろうとしていた。
コイツ、人の命を何だと思っていやがる!
ただ、残念なことに、その大男の周りにいたのは、何故か沢山のチョンマゲ男達だった。
しかも、何気に間抜け面。
なんか、想像していたのと全然髪型が違う!
正直、期待を裏切られた感じがしたよ。
たしかに特徴的な髪型には違いないけど……。
それから、この団体さんの中には、特に強力な魔力を持つ者はいない模様。
でもさあ、漫画で出てくるような野盗って、一度見てみたいとは思っていたけど……、もう見なくてイイや。
よく、話をしていて、
『一度見てみたい!』
って言うことってあるよね?
でも、それって多くの場合、
『一度見てみたいけど二度は見たくない』
ってのが殆どかもね。
多分、今回のは、そのパターン。
二度は見ないでもイイやって感じだよ。イメージも全然違うしね!
でも、これで実感した。
女神アクアティカ様が統べるトモティーの世界から、ここ女神グエホイ様が統べるエディアカラの世界に私が来たのは、やっぱり、あれをヤレって意味なんだ。
あの魔法も復活させてくれたみたいだしね。
「破壊神ラヤ、行きます!」
そう言うと私は転移魔法で、その男共の前に移動。
男共からは、
「カワイくて綺麗だけど色気がなぁ」
「おお。全然足りねぇ」
「胸も尻も板じゃねえか」
「チェンジ!」
「出直してきな!」
ってダメ出しが……。
まさか、カワイイ系美少女の私を全否定!?
そんな……。
頭来た。
じゃあ、ヤっちゃってもイイよね!?
と言うわけで、
「死ね!」
と私が唱えると、村人男性を捕えていた大男の首が飛んだ。
そう。首ちょんぱ魔法を発動したんだよ!
でも、ヤバっ!
首が宙を舞うシーンを至近距離で、その村人男性に見せちゃったかも。これって、もしかしてトラウマものじゃない!?
私は急いで、
「転移!」
その村人男性を自分の横に転移させると、
「消去!」
この数分間の彼の記憶を魔法で消した。
これで、野盗側は百人のチョンマゲ男達だけになった。
今、私が、このチョンマゲ男達に対して持っているイメージは、志が低くて野蛮で、脳みそも底辺レベルなヤツ等ってことだけ。
でも、こいつらを足せば、人間って変わるかな?
ええと、足すだけで割らないよ。平均を取るんじゃなくて足すだけ。
例えば、小さな志でもそれを全部足せば大きな志に変わるのかな?
底辺レベルの脳みそでも、何人分も足せばマトモな脳みそに仕上がるのかな?
実は、そんなことを考えていた。
そして、そんな考えを元に新たに作り出した魔法を私は発動した。
「融合!」
この魔法を受けて、その男共が次々と融合していった。
そして、百人が五十人、五十人が二十五人……、最終的には一つの個体……つまり、一人の人間が誕生した。
顔つきは……キリっとしている。少なくとも間抜け面じゃない!
私は、早速、その融合人間のステータス画面を覗き見した。
すると、
職業:力仕事全般
人間性:まとも
志:他人のために動く
精力:百人前
自制心:五十人前
どうやら、私が思い描いていた通りになったみたいだ。
ただ、精力が自制心を大きく上回っているのが、ちょっと気になるけどね。
まあ、それだけ、元の男達には自制心が無かったってことか。
それはそれとして、この融合人間の使い道……って言うか、働き口を考えてやらないといけないのかな?
さて、どうしよう?




