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197.再会!

 ハディアン世界から戻った次の日のことだ。

 私は、異世界転生者面談を順に行っていたんだけど、何十人目かの面談者の顔を見て、内心驚かされた。

 ラヤ時代に下界でお世話になった人だったんだ。

 まさかの再会だ!


 私は表情には出さなかったよ。

 一応、ポーカーフェイス。


 でも、その転生予定の男性は、私の顔を見て固まっていた。

 もっとも、彼は、私のことをラヤのそっくりさんと思っていたみたいだけどね。



「どうかしましたか?」


「失礼しました。女神様が昔の知り合いの女性に似ていたもので」


「そうですか。私の名はピルバラナ。今までアナタがいた世界とは別の世界の女神です。それで、その私に似た女性とは?」


「ノーソラム共和国で軍隊にいた頃、私の上司になった女性でした。一応、私が後見人という立場ではありましたが……」



 そう。この男性はオスミ中佐だったんだ。

 私をノーソラム共和国軍にスカウトした人ね。

 厳密には元中佐だけど、ここでは中佐って言うことにする。



「しかし、その女性は、敵軍の攻撃を受けて亡くなりました。ただ、私が軍にスカウトした以上、私が殺したも同然と思っております」



 なんか、私がアキとミチルに殺された……と言うか、正しくは浄化されたわけだけど、私の死に対して、オスミ中佐は、かなり責任を感じているようだった。


 悪いとは思ったけど、女神権限で、オスミ中佐の魂の遍歴を勝手に見させてもらった。

 私も知らなかったけど、どうやらオスミ中佐は鑑定魔法が使えたようだ。


 当然、今の私に対しては無効だけど、当時の私のことは鑑定魔法で最凶魔法が使えることを確認していたようだ。

 だから、あの時、私が最凶魔法を発動したって特定できたんだ。



 それから、カリセン王国を落とした後、進路をアデレー王国ではなくラージェスト王国に変えたのは、単にラージェスト王国が最大国家だったからじゃなかったようだ。


 当時のラージェスト国王は物欲まみれで、為政者として問題ありと判断し、それでラージェスト王国に攻め込んだのが本音らしい。

 要は、当時のラージェスト国王を亡き者にするため。


 そして、ラージェスト国王を葬った後、ラージェスト王国をバックに付けてノーソラム共和国に対してクーデターを起こすつもりだったようだ。

 基本的にはノーソラム共和国の最高権力者ジーノス総統のことは生かすつもりだったみたいだけど……。

 でも、最悪の場合は、私にジーノス総統を殺させるつもりでいたっぽい。


 ただ、自分がラージェスト王国とかノーソラム共和国の支配者になるつもりはなかったみたいだけどね。

 どうやら、君主制……と言うか独裁主義を終わらせて、ラージェスト王国とかノーソラム共和国にキチンとした共和制を導入させて、それが達成されたら軍とか政治の舞台から姿を消すつもりだったようだ。


 あと、もし当時の私がクーデターの後にオスミ中佐の構想に害意があるようなら、自身の責任の下、玉砕覚悟で彼は私を殺すつもりだったみたいだけど……。



 結果的には、ノーソラム共和国はラージェスト王国に吸収され、しかもアキ達がラージェスト王国に立憲君主制を導入させたからね。

 オスミ中佐の思惑は、彼自身の手でじゃないけど、実質達成されたようなものなんだけどね。



「アナタの名前は、たしかオスミですね」


「はい」


「その女性……ラヤと言う名ですね」


「はい、ご存じなので?」



 まあ、本人だから知らないはずはないけどさ……。

 でも、ここでは別人を演じないとイケないからね。

 本当は、あの時、私に衣食住を与えてくれたオスミ中佐には、ここで改めてお礼を言いたいところなんだけどさ。



「これでも、一応女神ですので。彼女は、その後、アナタがいた世界の女神リニフローラによって、別の女神アクアティカが管理する世界に転生しました」


「そうでしたか。それで、ラヤは元気でやっていますでしょうか?」


「はい。幸福な人生を歩んでいます」


「そうですか。それは良かったです」



 オスミ中佐は、ホッと胸をなで下ろした。

 それだけ、私の死に対して責任を感じていたんだろう。



「あと、ラヤはアナタを恨んだりはしていません。むしろ、アナタには感謝していますよ」


「しかし、私は彼女に大量殺人をさせた挙句、殺したも同然ですが」


「確かにそうですね。しかし、当時のラヤは、アナタがいたブルバレン世界の堕天使ラフレシアによって異世界から召喚された身でした。ブルバレン世界を破壊するために。ですので、彼女自身、大量殺人することも殺されることも覚悟しておりました。むしろ、召喚直後に居場所を与えてくれたアナタに感謝していますよ」


「そう言って頂けると有難いです」


「彼女の罪も、転生先で多くの人々に尽くすことで許されておりますし」


「それは良かったです」



 オスミ中佐が、拝むように私の前で両手を合わせた。

 そして、一筋の涙が彼の頬を流れた。


 私に大量殺人をヤラせたことを、かなり後悔していたんだね。

 でも、あれはオスミ中佐のせいじゃなくて、私自身のせいだと思っているけどね。



「ただ、ノーソラム共和国がラージェスト王国に吸収された後、アナタは相当苦労したようですね」


「いえ、それが私の罪ですので……」



 オスミ中佐は、アキ達がいる世界で最も危ない国家の軍人で、しかも、私の後見人だったからね。

 犯罪奴隷に落とされて、鉱山での重労働を強いられたんだ。


 でも、過酷な労働条件の中でも、彼は真面目に働いたようだ。

 それが評価されたみたいで、割と早く一般奴隷に昇格。

 その後、旧ノーソラム共和国に隣接するウンカ公国の商人に奴隷として買われたようだ。


 ただ、その商人……と言うか、オスミ中佐の主人が、H宗教のマリカ教に入信しちゃってね。

 オスミ中佐も、それに同行する形で入信しちゃったんだよ。

 そして、この度、教祖マリカとのHの最中に腹上死。

 マリカ教では、腹上死は最高の死とされているみたいだけど……。


 それで、ここに来たってことだ。

 もっとも、数ある異世界の中から私が管理する世界に来ちゃったのは、私のことで後悔しているから、ビブリダシー様の方でご配慮されたようだけど。


 勿論、私の方でもオスミ中佐のことは気になっていたからね。

 なので、ビブリダシー様のご配慮には感謝しているよ。



「他に何か聞きたいことはありますか? 例えば、家族のこととか」


「いえ、特に必要ありません」



 本当に、私のことだけが気がかりだったってことだ。

 家族に対してはマジで愛情が無かったみたいでね。

 と言うのも、不貞妻に不義の子達だったからなんだけど……。


 彼の元家族も鉱山送りになった。

 その過酷な労働に耐えられずに既に全員、お亡くなりになっているんだけどね。



 ちなみに、ノーソラム共和国の独裁者、ジーノス総統は死刑になった。

 今では、他の世界でトイレ専用スライムとして転生しているらしい。しかも、人間としての意識を持った状態で、男性用トイレで使われているとのことだ。

 それって、マジで地獄だよね。



「では、アナタには私が管理するトリフィオフィルム世界に転生していただきます」


「地獄に落ちるのではないのですか?」


「いいえ、普通に転生して頂きます。確かにアナタは戦犯でした。しかし、それはノーソラム共和国に生を受けたことにも起因します。それに、アナタが本来、真面目な性格であることも、ラージェスト王国に侵攻した理由も、その先に抱いていた構想も全て分かっています」


「ご配慮、感謝します」


「では、トリフィオフィルム世界へと魂を送ります。そこで、新たな人生を送ってください。転生!」



 これで、オスミ中佐は前世の記憶も、ここでの遣り取りの記憶も全て封印した状態で、トリフィオフィルム世界に転生し、赤ん坊からやり直す。

 そして、半世紀ちょっとした後に、アサスズメ王国冒険者ギルドの本部長になるんだけど……、それは、また別のお話ってことで。

ラージェスト王国のことは「大人のための動く等身大美少女フィギュアとして異世界転生したけど、多分使われ方が間違っています!」をご参照ください。


それから、アサスズメ王国のことは「このヒロイン、実は元おっさんで転生したら魔力で動く異世界版ダッチワイフ(オート股?)になっていた。絶対に正しく使われてやんねーからな!」をご参照ください。

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