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20/202

19.愛をありがとう!

 私が姿を現したのは、異空間シェルターの中。

 この中の人達を外に出さなくては。


 ところが……。

「ここって平和でイイわぁ」

「食いもんもあるし、ゆっくりしていられるし!」

「外出たくなーい!」

「働かなくてもイイんだよね?」


 ええと……。

 料理している人以外、ニート化が始まっているような気がするんですけど?

「……」

 絶句した私。



 このままではマズイよね。

 と言うわけで、

「転移!」

 全員を強制的に地上に転移させた。


 それで、彼らの反応だけど……。

「せっかく楽園が!」

「働きたくなーい!」

「外に出るのヤダよ!」

「寝てたーい!」

 完全に堕落した模様。

 なんとか、ここから更生してもらおう。


 でも、一瞬でここまで堕落しちゃうなんて、マジでコワいわ。

 一応、シェルター内で、団体でHな方に走っていなかっただけ良しとしてあげるけどさ。



 さて、ここからどうしようか?

 外に出させたはイイけど、この地で暮らしていた人達は、生活基盤が完全に崩れ去っている。家も田畑も全滅だもんね。

『戦争は終わるはずだから、勝手に復興しなさい!』

 って言うのも酷な話だ。


 なので、先ずは、

「超転移!」

 この場に陣取っている軍隊を、それぞれの国の広い荒野に移動させた。とにかく、この場に居られたら復興の邪魔にしかならないからね。

 ハッキリ言って、ムダに面積だけ取られているもん。



 この時、私が救った兵士達も一緒に転移させた。ドサクサ紛れに合流させてあげたってとこ。

 でも、軍隊を転移させるんだったら、雷魔法を落とす必要は無かったかな?

 まあ、イイか。


 それから、

「埋葬!」

 私は、多くの死体を魔法で一つの区域に集めて埋葬した。集団のお墓になるけど、そこは勘弁してください。



 残ったのは、この近辺の町で暮らしていたカトプシス&ユーフォルビア両国の住民達の件のみ。

 私は、

「超復元魔法発動!」

 全魔力を大放出するつもりで、破壊された町々を元の姿に戻して行った。


 これを目の当たりにして、人々は、相当驚いていたっぽい。

「奇跡だ!」

「マジですか?」

「SUGEE!」

 って声がアチコチから上がっていたよ。



 それなりに時間はかかったけど、これで各町は復元された……はず。

 でも、もう、あとは私がいなくても自分達だけで何とかなるよね?

 と言うわけで、

「転移!」

 私は、その場から姿を消すこととした。


 ただ、逃げたと思われたくなかったので、

「皆様が復興できることを心より期待しております」

 って言葉を、その場にいた全員に思念波として送り付けておいた。

 本当は逃げたんだけどね。



 そして、私が姿を現したのはタテイ町。ブロメリオイデス教会のすぐ近くだった。

 私は、ふと、

「また、ゼロからやり直しか」

 と言葉を漏らした。


 多くの人々を治せて良かったって思う一方で、脱力感もあった。今まで築き上げてきた数値が完全にゼロになっちゃったんだもんね。


 でも、つい教会の近くに来ちゃったけど、このまま素直に教会に戻っても良いのかなぁ?

 あれだけ、とんでもないレベルの魔法を披露しちゃったからね。


 もう、下手に人々と関わらない方がイイんじゃないかって気がする。

 今度は私の獲得を巡って戦争が起こりかねないよ。



 もう、山奥で一人ひっそりと暮らすしかないんだろうなぁ。

 だとすると、もう、人々を相手に治癒魔法は使えないってことか。


 故にカウントは永遠にゼロのまま。

 元の大田原金之助の姿に戻るしかないってことだね。



 ヤバい。マジで涙が出て来ちゃった。

 自分で覚悟して決めたことだけど、やっぱり悲しいよ。

 溢れ出て来る涙が、全然、止まらない。


 手で涙を拭いながら……、そして、もう、みんなには会えないって思いながら、私は教会に背を向けて歩き出そうとした。



 でも、この時だった。

 私のステータス画面が勝手に開いたんだ。

 しかも、カウント数のところには、>100,000/100,000の表記が。


 あれっ?

 なんでだろう?

 すると、突然、辺り一面が真っ白な空間に変わり、私の目の前に女神アクアティカ様が姿を現した。


「目標は達成されました。ラヤ。おめでとう」

「ええと、意味が分かりませんけど?」

「実は、ケプラー総統は、カトプシス王国だけではなく、付近の国々も戦渦に巻き込んで行く構想を持っていました。つまり、()()()()だけでは終わらず、()()()()()()()()へと発展するはずだったのです。しかし、次なる戦争が回避され、次なる戦争で生じるはずの死や怪我が未然に防がれたのです。それをカウントしたら、十万を遥かに超えました」

「では、私は……」

「カウントしないのは、飽くまでも()()()()だけです。なので、()()()()()の分はカウントします」

「……」


 なんか、都合のイイ展開だけど、多分、最初からアクアティカ様は、こうするつもりだったんだろう。

 女神様に感謝します。


「アナタが望むのであれば、今の姿に固定することを約束します。ただ、ここでアナタには選択権があります。この世界に残るか、地球に戻るか、或いは別の世界に行くか。もし、この世界に残るのでしたらラヤの姿に、地球に戻るのでしたら大田原金之助の姿になります。別の世界の場合は、いずれかの姿を選択できます」

「ここで答えを出さなくてはならないでしょうか?」

「はい」

「分かりました。では……」


 だったら、私の取る道は決まっている。

 どうせ、元の生活に戻ることはできないんだもんね。


 …

 …

 …


 その後まもなく、私は、

「ただいま」

 一旦、ブロメリオイデス教会に戻った。


 オリガ導師もフランチェスカさんも、

「「なんで?」」

 って驚いていたよ。


 そりゃあ、私が地下牢行きになったって聞いていただろうからね……と思ったら、その場には何故かイリヤ王子の姿もあった。


「何かあれば、きっと、ここに戻ってくると思って、ここで待っていた。今まで、何処で何をしていたんだ?」

「ちょっと脱獄して、ユーフォルビア帝国とカトプシス王国の戦争を止めてきましたぁ」

「冗談だろ!?」

「いえ、本当です。ユーフォルビア帝国の皇帝が幽閉されていて、幽閉した張本人が総統を名乗っていて、それで戦争を吹っかけていたようでして」

「それは事実なのか?」

「はい」

「そう言うことだったのか。ヘリオス三世にしては、おかしいと思った……。でも、無事で良かった!」


 そう言うと、イリヤ王子が私を強く抱き締めた。

 まあ、一応、婚約者だし、当然と言えば当然か。


 その横で、

「ホント、良かったね」

 と言いながら、オリガ導師は目に涙を浮かべていた。


 フランチェスカさんの目にも涙が光っていた。

 みんな、私の無事を心から喜んでくれているんだ。


「突然、地下牢から消えて、本当に心配したよ」

「ゴメンなさい」

「それで、早速で申し訳ないが、状況を国王陛下に説明してもらいたい」

「それなんですけど。実は、魔力を使い過ぎて、もう人間の形を保っていられないみたいなんです」

「はっ? 言っている意味が分からないんだけど?」

「それで、お別れを言いに来ました」

「ちょっと、何を言って!?」

「ゴメンなさい。今まで本当にありがとう」

「嘘だろ? ラヤ!」

「本当にゴメンなさい」


 この直後、周りのみんなから見たら完全に超常現象で、多分、信じられない出来事だったと思うけど、私の身体が、次第に石化していったんだ。


 最初は足の先から。

 それが、次第にふくらはぎ、腿へと広がり、さらに腹、胸、両腕までもが石へと変わっていった。


「イケメン王子に求婚してもらえて、とても嬉しかったよ。私は、幸せでいっぱいだから。この世界の人生に満足できたよ」

「そんな……。まだこれからじゃないか!」

「今まで、愛をありがとう。先に涅槃で待ってるね」


 この言葉を最期に、私の身体は頭部まで完全に石化した。

 もの凄い急展開だけど、長々と御涙頂戴するのが苦手なもんで。


 それで、女神アクアティカ様にムリムリお願いして、こんな感じの最期を演出してもらったんだ。

 王子も導師もフランチェスカさんもゴメンね!


 …

 …

 …


 そして、今、私は真っ白な空間にいる。

 目の前では女神アクアティカ様が私に向けて怪訝な表情を見せていた。

 また、その場にはモニターがあって、ブロメリオイデス教会での状況が映し出されていた。私が石化した直後の映像だ。


「ラヤ……ラヤァァァァァァ!」

 イリヤ王子が石化した私の身体を抱き締めながら号泣してくれている。


 でも、マジでゴメンね、王子。

 その身体って、実は、女神様にお願いしてムリムリ造ってもらった単なる石像なんだよ。


 女神様の魔法で、少しずつ石像と私の身体を入れ替えてもらったんだ。

 傍目には、私が足先から順に石化しているように見える感じの演出をしてもらってね。

 さすがに、そんな大魔法は私には使えないからさ。



 その両脇では、オリガ導師とフランチェスカさんも、

「訳わかんないよぉ!」

 って言いながらヒックヒック泣いてくれているよ。


 一応、要らない娘って思われていなかったってことだよね?

 ホント、嬉しい。ありがとう!



 女神様からは、

「本当に、こんな別れで良かったの?」

 と少々嫌みな声で聞かれたけどね。


「でも、あれだけ派手に魔法を使ったら、あの世界には居られないでしょうから。少なくとも人里離れた山奥で、一人で暮らすとかしないといけないでしょ?」

「そうだけど……」


 完全に御使い様を演じちゃったし、物質創製魔法や炎の魔法、水の魔法、さらには居住可能レベルの空間魔法まで披露しちゃったからね。

 私がいるだけで私を狙って戦争が起きちゃうのは明白だよ。


 なので、もう、役目を終えて天界に戻ったってことにでもしておいた方が、世の中のためなんだよね、きっと。


「でも、大戦争が防がれて良かったじゃないですか」

「そうね。それは、感謝しているわ」

「それと、ケプラー総統のことですけど?」

「地下牢に幽閉されたようね。それと、ケプラー総統を作り出した者の正体が、ようやく特定されました」

「そうなんですか?」

「ええ。実は、別世界で過去に消滅したはずの堕天使の思念集合体が、二百年の時を経て、このトモティ世界に来たの。そして、一人の革命家に目を付けて洗脳し、その革命家がケプラー総統になった。ユーフォルビア帝国を足掛かりに世界を壊そうとしていたみたいね」


 世界を壊すって、ラフレシア様みたいだね。

 さしずめ、ケプラー総統は、ブルバレン世界で言うジーノス総統みたいなものだね。


 ジーノス総統って誰かって?

 ノーソラム共和国のトップだった人だよ。見た目のベクトルが、私の想像とは完全に逆行していて、とっても残念だった人。

 でも、この世界に、昔の私みたいな破壊者が召還されなくて良かった。



「それで、なんでユーフォルビア帝国だったんですか?」

「たまたま見つけた革命家が、ユーフォルビア帝国の人間だったってことだけで、他意は無いようね」

「そうですか」

「その堕天使の名前はアルセニコス。既に、アルセニコスの思念体はトモティ世界から別世界に移ったようだけどね」

「どこに行ったかは特定できているんですか?」

「一応ね。しかも、時間軸を越えて行ったっぽいわね」

「では、過去か未来に?」

「少し過去ね。でも、せっかくイケメン王子様と少女漫画風の展開で結婚できるはずだったのに。ラヤは、それが望みだったんじゃないの?」


 なんか、全部バレてるよ。

 相手が女神様だから当然なんだろうけど……。

 更に言ってしまうと、イリヤ王子に求婚されて、その日の夜は喜んでベッドの上で足をバタバタさせたり左右に転げ回ったりしているところも見られているんだろうなぁ。

 それを考えると、ちょっと恥ずかしいかもだけど……。


「そうですけど、もうイイです」

「本当にイイのね?」

「求婚してもらえただけで今は満足です。それに、あのまま結婚したらブロッキニア王国が他国から色々と責め立てられるのではないでしょうか? 聖女を独り占めしたって。そんな立場にイリヤ王子を追い詰めたくはありませんから」

「たしかにね。じゃあ、また機会があったら」

「はい。その時は、よろしくお願いします!」


 これで、私のトモティ世界での生活は終わりだ。

 私はトモティ世界に戻ることは無いだろうから、基本的にはアクアティカ様に会うことは、もう無いだろう。

 なので、『その時』は多分、二度と来ないんだろうって思っていたんだよね。

 この時は……。


「それから、行った先での姿は、今の姿でイイのね?」

「はい、()()()()でお願いします」

「分かったわ。では、異世界に転移……」

「ちょっと待ってください!」

「どうかしたの?」

「その前にお礼が言いたくて。アクアティカ様。私は、転生して本当に充実した生活を送れました。命をありがとうございます」

「そ……そう?」

「はい!」

「私の方も大戦争を回避できて助かったわ。こっちこそ、ありがとう。では、転移させてもイイかしら?」

「はい」

「では、転移!」



 そして、私は、次の瞬間、その真っ白で綺麗な空間から汚れた世界にようこそ……ってことになったんだけど……。

 何か一つ忘れているような……。


 あっ!

 レイラに会って、レイラに王子のことをよろしくって言うのを忘れてた!

 でも、もうイイや!

 せっかく私がいなくなったんだから、レイラも上手にイリヤ王子を落としてよね!

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