2.最凶魔法初発動!
気が付くと、ボクは泉の畔にいた。
お日様の位置が高い。多分、今はお昼頃だろう。
頬をつねった。たしかに痛い。
これは現実ってことか。
本当に、ボクは別の世界に来たようだ。
ボクは、自分の容姿が気になった。
この世界に来る際の条件だからね。本当に可愛らしい美少女に変身できたのかを確認したかったんだ。
それで、ボクは泉を覗き込んだ。
「あっ!」
泉の水面に映された姿は、ボクがなりたいって思っていたカワイイ系美少女の姿に他ならなかった。
もう、大田原金之助じゃない!
胸もある。
それから、股間は……余計なものが消えている。
本当になりたい姿に変えてもらえたんだ!
ラフレシアって言っていたよね。あの元天使長。
多分、今では堕天使なんだろうけど……。
地球で言うサタンだね。
でも、ボクにとっては神様に等しい。
感謝します。ボクを、この姿に変えてくれて。
マジで、嬉しくて涙が出てきたよ。
早速、ボクは、涙を拭うと、
「出ろ!」
試しに服と靴が出るように念じてみた。
すると、確かにボクの目の前にイメージしていた服と靴が出てきた。
この魔法も本当に与えてくれたんだ!
ボクは、誰もいないこの場所で、急いで服を着替えると、元々着ていたパジャマをアイテムボックスの中にしまった。
って言うか、本当にアイテムボックスも与えてくれたんだね。まあ、初期状態では中身は空っぽで、今はパジャマしか入っていないけど。
でも、何から何まで、本当に有難う。
ボクは、両手を合わせて、感謝の意を込めてラフレシアに祈りを捧げた。悪魔崇拝って言われてもイイよ!
少し離れたところに街が見えた。
ボクは、そこに向かって歩き出した。
でも、ここでボクは、少し後悔した。
「移動系か身体強化系の魔法も欲しかったよ!」
結構、歩くのが面倒だよ、これ。
道路は二十一世紀の地球のように舗装されているわけじゃない。
地面が剝き出しの土の道だし、凸凹していた。
歩き出して三十分程度で、ボクは地面の脇に座り込んだ。
疲れちゃったんだよ。
歩きなれない靴だったしね。
魔法美少女になれるってことで頭がいっぱいになっていたな。
よく、服とか靴のところまで頭が回ったよ。
それから、アイテムボックスのことも。
そう言えば、異世界に来たってことは、もしかしてアレが可能かな?
そう思ってボクは、
「開け!」
と言いながらステータス画面が出ることを期待した。
ピンポーン!
思った通りだ。ステータス画面が出てきたよ。
職業:魔法美少女
習得魔法:首ちょんぱ魔法、物質創製(衣服、靴)
やっぱり、元天使長から言われた魔法しか使えないや。
でも、職業欄に魔法美少女って書かれているのはマジで嬉しい。これだけで十分、モチベーションが上がるよ!
飽くまでも『モチ』ね。
『マスター』じゃないよ!
それから一時間くらいして街に到着。
もうお腹がすいたし、思い切り喉が渇いた。声を出すのも辛いくらいだ。
せめて物質創製魔法で、服と靴だけじゃなくて食べ物や飲み物も出せるようにしてもらうんだった。
失敗したな、もう……。
ステータス画面には地図機能も搭載されていた。
便利だな。
それによると、ここはノーソラム共和国の外れの方の町クルツ。
よく異世界モノでは、魔物や魔獣の襲来に備えて町が壁で守られているけど、この町は日本の各市町村と同じで、壁で守られていなかった。
ってことは、魔物や魔獣は出ないってことかな?
それに通行手形みたいなものもない。特に町に入るのに手続きは必要ないみたいだ。
ボクは、そのまま普通に町の中へと足を踏み入れて行った。
でも、お金もないし、ここからどうしよう?
すると、
「お嬢ちゃん、カワイイねぇ。どう、一緒に食事しない?」
男三人組がボクをナンパしてきた。
マジで?
これって、ボクのことを女性としてイイって思ってくれたってことだよね?
なんだか嬉しい!
三人とも、別にカッコイイわけじゃないけど、ここは誘いに乗っておいた方が得かな?
そうそう。もうボクは女の子になったんだ。自分のことをボクって呼ぶのは止めよう。
ボクっ娘って手もあるけど、一般にボクっ娘は痛いって言われるみたいだからね。
それから、この人達の言葉が理解できるってことは、ラフレシア様は、キチンと言語能力も授けてくださっていたってことだ。重ね重ね感謝致します!
「構いませんけど、私、お金持っていないんですけど」
「全然OK。俺達が奢るからさ!」
よし、これで今夜の飲食代ゲット!
この時、ボク……じゃなかった、私は誘ってもらえたことを楽観的に考えていた。美少女に生まれ変われて本当に舞い上がっていたんだね。
別に、この三人は悪人じゃなかったと思うけどね。
でも、私は、この時、全然警戒していなかったんだ。
この町の男達のことを……。
一先ず、私達は近くの飲食店に入った。
ナンパしてきた三人が良く入る店らしい。それで、彼らが、お勧めのコースメニューを注文してくれた。
ただ、その後、
「名前は何て言うの?」
「ラヤって言います」
「珍しい名前だね。初めて見る顔だけど、この町に住んでるの?」
「今日、この町に着きました」
「どこから来たの?」
「秘密です」
ありきたりな会話だけど、三人が間髪を入れずに、私を質問攻めしてきた。さすが、三人相手だと大変だね。
ええと、三人相手って、別に4Pじゃないよ!
Hなことは、していないからね!
ウェイトレスが飲み物を運んできてくれた。やっと喉が潤せる!
「カンパーイ!」
まあ、これは私と彼らの出会いにってことで。
さらに料理が運ばれて来た。
そう言えば、こっちの食事って初めてだな。
ちょっと怖いけど、試しに一口、サラダから……。
…
…
…
思っていたよりも美味しい。
他にも焼いた肉や魚が出てきたけど、マジで美味しい。
本当に、この三人組には感謝だよ。
このまましばらく、四人で盛り上がっていた。
「マジ~!」
「ウケる~!」
彼らの会話は、半ば頭空っぽな風に感じる部分も結構あったし、それに、彼らは妙にスキンシップが多かった。何かにつけて私に触ってきたんだ。
でも、悪い気はしなかった。
むしろ、女の子としてチヤホヤされて嬉しかったんだ。
急に男子達が黙り込んだ。
どうしたのかなって思ったら、いつの間にか、ガラの悪い男五人組が私達を取り囲んでいたんだ。
ナンパ三人組も、このガラの悪いヤツらのことが怖いんだろうね。
「マブイ女、連れてるじゃん。俺達に回してくれない?」
そのガラ悪組の一人が、ナンパ組に言ってきた。
なにそれ?
言う通りにされたら最後、私、コイツらに回されちゃうじゃん?
それに、このガラ悪組は、はっきり言って私の趣味じゃない。
ナンパ組に、是非とも『イヤだ!』って言って欲しい。
でも、言えないんだろうね。
地球にいた頃の私と同じで……。
強そうなヤツらに言い返す勇気がないんだ。
私も人のことは言えないから、別に責めるつもりは無いけどね。
ガラ悪組の一人が、私の腕を掴んだ。
このまま強引に、私を連れて行こうって魂胆のようだ。
「こっちに来い!」
「放してください」
「イイから、こっちに来い!」
「イヤです」
「言うことを聞け!」
ガラ悪男が力づくで私を引っ張った。
痛いよ、このヤロウ。
私は、マジで怒った。そして、とうとう、あの言葉を口に出してしまった。
「死ね!」
すると、
「ぶちっ!」
って音と共に、そのガラ悪男の首が飛んだ。
頭部を失った首からは、噴水のように激しく血が噴き出していた。
人を殺すと性格が変わるって言うけど、多分、本当なんだと思う。
この瞬間、私は、残る四人に対しても躊躇いなく、
「お前らも死ね!」
と簡単に言い放っていた。
もし、これが悪役連中でなかったら殺すことを躊躇しただろう。でも、思い切りムカついたし、地球にいた頃から、
『ムカつくヤツの首を刎ねたい!』
って気持ちがあったからさ。
もしかしたら、そのはけ口になっていたのかも知れない。
その直後、その四人の首が、向かって右から順に刎ねられていった。
豪快に血しぶきを上げる計五体の遺体。
店の中が一瞬で血だらけになった。
この光景を見て、ビビって震えるナンパ組達。
彼らは、至近距離で私の『死ね!』を聞いていた。当然、これが私の魔法によるものと理解していただろう。
でも、さすがに彼ら以外の客は、これが私の能力によるものだなんて誰も考えないだろうね。こんな魔法は、この世界には通常存在しないだろうから……と私は思っていた。
ところが、
「面白い魔法ですね」
軍服を着た男が私の背後からそう言ってきた。
バレた!?
しかも、その軍人は、
「たまたま今日、この店に来ていたが、まさの運命の出会いと言って良いだろう。ええと、失礼。恋愛チックな意味ではなく、軍人としてね。是非、君には我がノーソラム軍に入っていただきたいのだが、如何だろうか?」
私をスカウトしてきたよ。
一瞬、私は何でって思った。
だって、私は、カワイイ系美女に生まれ変わったんだし、女の子として楽しい人生を送りたいもん。
でも、私は、この容姿を得た代わりに、ラフレシア様からの要望に応えなければならない。つまり、この世界を一旦破滅へと導く義務がある。
それには、軍に入って私の首ちょんぱ魔法で他国を全部制圧するのが一番手っ取り早いんだろうね。
そう考えると、多分、このスカウトは悪い話じゃない。
なので、私は、
「分かりました」
このスカウトを有難く受けることにした。