表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/202

18.多分これで終息!

 私とアキラ氏が出たところは、ユーフォルビア帝国の帝都内にある大きなお城の中。

 一瞬で到着するもんね。転移魔法って便利だよねぇ。


 早速、私は、その辺で見かけた兵士に声をかけた。

 その兵士のステータス画面を見ると、職業欄には雑兵と書かれていたから、まあ、下っ端なんだろうとは思うけど。


「あのう?」

「何だ、お前達は?」

「皇帝陛下は、どちらでしょうか?」

「だから誰だって聞いてるだろ?」

「ラヤと言います」

「では、お前が、あのブロッキニア王国に降臨した聖女か?」

「巷では、そう言われているようですが」

「付き人は、そいつ一人か?」

「はい」

「こいつはラッキーだぜ」


 そう言うと、その兵士は剣を抜いて私達を威嚇してきた。

 私を囲えれば、どんな大怪我でも瞬時に治せる。戦争の真っただ中、私なら兵士達を裏で支える最高の存在になるって考えているんだろう。


 でも、今の私は治癒魔法以外も最強だからね。

 そんな剣なんか怖くないんだよ!


「溶けろ!」

 この私の一言で、その兵士の剣の刃が一瞬にして溶けた。

 これを見て、さすがにその兵士はビビっていたよ。


「私達は、戦争を止めるために来ました。軍の撤退を申し入れしたいのです。皇帝陛下のところに私を連れて行きなさい!」

「今の皇帝陛下には、そんな権限はありません」

「はぁっ? この国で一番偉いのは皇帝陛下じゃないの? なのに、権限が無いってどう言うこと?」

「恐れながら……皇帝陛下は、地下牢に幽閉されています。今、この国を仕切っているのは総統閣下です」


 帝国で総統?

 それって、アニメであったパターン?

 もしかして、今度こそカッコイイ総統に会えるかな?

 ちょっと勝手に期待しちゃうかも!

 って、私、マジで感性が腐っているなぁ。


「そう。じゃあ、総統のところに連れて行って」

「わ……分かりました」

 早速、私は、その兵士の案内で、総統の謁見室へと通された。



 と言うわけで、総統と御対面!

 総統の両脇には護衛の兵士がいた。

 でも、いきなり小娘が来たんで、総統も、その兵士達も、

『なんだコイツ』

 みたいな目で私のことを見ていた。

 まあ、当然だろうね。



 それにしても、この総統はカッコイイ!

 昔見たアニメに出て来たキャラを連想させる優れた容姿。とても絵になるよ。

 ノーソラム共和国の総統とは大違いだ!

「うわぁ、イケてる」

 ついつい私は声を漏らしてしまった。


「誰だ、お前は?」

「私はブロメリオイデス教会のラヤです」

「では、お前があの噂の聖女か?」

「はい。総統様ですか?」

「如何にも。私がケプラー総統だ」


 うーん……。

 なんか、ちょっとだけ残念な気がした。

 一応、私が想像していたのとニアミスな名前なんだけど、これだと総統じゃなくて天文学者をイメージするよ。


「それで、その聖女が何の用だ。我が国に肩入れでもしてくれるのか?」

「いいえ。戦争を止めてもらいに来ました」

「それは出来ぬ相談だな」

「でも、飲んでもらわないと困りますよ」

「そんなの知ったことか」

「何か勘違いをされていますね。困るのは私ではなく、アナタ方です」


 私は、そう言うと、この場に魔物を一匹転移させた。ライオンみたいな感じだけど、もっと巨大なヤツ。

 しかも、獰猛で危険なヤツだ。


「その魔物で我々を殺そうと言うのか?」

「いいえ。その逆です。この魔物には、私の力をアナタ方に理解していただくために、この場で、その命を捧げていただこうと思い、転移させました」


 そして、私は、その魔物に向けて久しぶりに首ちょんぱ魔法を放った。

 ブチっという音と共に、派手に宙を飛ぶ巨大魔物の首。

 そして、頭部を失った胴体からは噴水のように真っ赤な血が噴き出していた。


 さすがに総統も、彼の脇にいた兵士達も、首ちょんぱ魔法には驚いていたよ。

 まあ、これで驚かないような輩は、首が飛んでも生きていたアキくらいだろうけどね。



 ただ、一番驚いていたのはアキラ氏だったよ。完全にビビって全身がガタガタ震えていたんですけど!

 アキに一文字足しただけで、随分と変わるものだ。アキとアキラ……。


 そんなアキラ氏のことなど目もくれず、総統の脇にいた兵士の一人が私に斬りかかって来た。

 ヤラれる前にヤル覚悟なんだろうね。


 でも、今の私は蘇生魔法以外、私が聞いたことのある魔法は全て使える。

 つまり、強化魔法も使えるんだ!



 兵士の刀の刃が私の身体に当たった。

 当然、その兵士は、私の身体を斬るつもりでいたんだろう。

 でも、それは甘い。

 強化魔法で覆われている以上、私の身体に刀の刃は通らない。むしろ、刀は大きく弾かれて宙を舞った。


 仕方が無い。

 口で言って分かる連中じゃない以上、実力行使だね。


 二人目の兵士が斬りかかって来た。

 でも、

「溶けろ!」

 この私の一言で、その兵士の剣の刃が一瞬にして溶けた。

 これを見て、その兵士はビビって、その場に座り込んだ。



「軍を武装解除してください。でないと、私は、力ずくで、この国を全滅させなければなりません」

「こんなガキに……」

「そのガキは、こう言うことも出来ますが?」


 そう言いながら、私は左掌を上に向けて火炎魔法で巨大な火球を作った。

 総統達は、生まれて初めて見る火炎魔法に度肝を抜かれたようだ。当然だろう。さすがに誰でも火は怖いもんね。

 しかも、とんでもないサイズの火球を作ってやった。これで怖がらない輩は……多分いないよね?


「私は、この魔法をアナタ方に向けて放つことが出来ます。それに……」

 続いて私は、右掌を総統達の方に向けて痛みを与える魔法を放った。

 これで首に激痛が走ったはず。


「この場で私は、アナタの首を魔法で刎ねることも可能です。さっき、魔物の首を刎ねたように……。今すぐ、武装解除してください」

「お前は、カトプシス王国の味方なのか?」

「いいえ。飽くまでも私は中立的立場です。カトプシス王国には、既に戦争停止を申し入れ、ユーフォルビア帝国が撤退するならカトプシス王国も撤退するとの約束をしてきました」

「その言葉に偽りは無いか?」

「勿論」

「だが断る」

「何故ですか?」

「帝国の繁栄のためだ!」

「そうですか。では」


 私は三人に向けて巨大な火球を放った。ただ、焼き殺しちゃマズいからね。当たる直前で火球を消滅させたよ。

 さすがに三人共、身体を丸めて震えていたけどね。


 さらに三人に向けて、

「フリーズ!」

 金縛りの魔法を放った。


 これで、三人は動くことが出来ない。

 もう、私に何をされても抵抗すらできない状態となった。

 一応、口だけは動くようにしてあげたけど。


 そう言えば、ブルバレン世界では、私を目の前にして怯える王子の唇を奪ったことがあったっけ。

 今回は、そんなことはしないけどね。

 そんなことしたら、私がイリヤ王子に殺されちゃうもん!


「戦争をやめないのなら、不要人物として始末するしかありません。では、どのように始末をつけるか決めていただきましょう」

「決めるって、お前がか?」

「違いますって。決める人を連れてきますので、少々お待ちください」


 私は、

「転移!」

 その場から地下牢の前に瞬間移動した。



 そして、すぐさま地下牢の中に20歳代と思われるイケメンを発見。

 ステータス画面をチェック!

 間違いない。彼がターゲットの人。探すまでもなかったよ。



「皇帝陛下様でいらっしゃいますね?」

「私がヘリオス三世。ユーフォルビア帝国の皇帝だった者だ」

「だったって、過去形なんですか?」

「そうだ。私は、一月前に先帝である我が父君が御隠れになり皇帝に即位したが、総統を名乗るケプラーがクーデターを起こし、私は皇帝の座を追われて幽閉された」

「でも、対外的には皇帝陛下が降ろされたなんてことには、なっていませんよ」

「えっ?」


 ヘリオス三世は、ものすごく驚いていたよ。

 マジで知らなかったっぽい。

 自分に成り代わり、ケプラー総統が皇帝の座に着いているって思っていたんだろう。


「今、ユーフォルビア帝国はカトプシス王国と戦争しています」

「何だって?」

「しかも、この戦争はユーフォルビア帝国から仕掛けたものですし、皇帝陛下の命令で軍が動き出したって周りの国には思われてますもん」

「そうなのか?」

「はい。そもそも、総統がいるなんて、この城に来て初めて知りました」

「なるほどな。戦争に勝てばケプラーの功績。負ければ戦犯を私に仕立て上げる。そう考えてのことだろう」


 彼は、まだ自分が対外的に皇帝のままでいさせられている理由を瞬時に理解したようだ。

 しかし、戦争に勝てば、彼は殺されて、そのままケプラー総統が皇帝の座に着くだろうし、その辺のことも彼には容易に想像が付いているだろう。


「そのケプラー総統と脇侍の二人は、今、金縛りの魔法で動けなくしてあります」

「そんな魔法を? 君は、いったい?」

「申し遅れました。私はブロメリオイデス教会のラヤ」

「では、あの聖女様!?」

「聖女なんて、そんな大それてものとは思っておりませんが……。この戦争を中止してくださるのなら、ここから解放致します」

「戦争を続ける意志などない。即刻中止を申し入れたい」


 ヘリオス三世の目は真剣そのものだった。

 私のことを天から使わされた聖女だって思っているだろうし、その私に対して言うのだから、多分、この言葉には偽りは無いだろう。


「分かりました。では、私の転移魔法でケプラー総統のところに向かいますので、一緒に来ていただきます」

「分かった」

「では、行きます。転移!」



 そして、私は、ヘリオス皇帝陛下を謁見室に転移魔法で連れて行った。

 ヘリオス皇帝陛下は、金縛り魔法で動けなくなったケプラー達を目の当たりにして、

「マジだったんだ!? SUGEE!」

 って驚いていたけど、私が言っていたことを信じていなかったのかな?

 まあ、別にイイけど。


「では、ケプラー総統の処遇は皇帝陛下にお任せしてもよろしいでしょうか?」

「構わん。ただ、コイツ等は、何時になったら動き出す?」

「三日です。それ以上、飲まず食わずで放置するわけには行きませんから」

「分かった」

「それと、戦争の中止と軍の撤退を」

「勿論だとも」

「では、後始末をお願いします。私はこれで失礼します」

 そう言うと、私はアキラ氏を連れて、転移魔法でカトプシス王国のお城へと戻った。



 転移完了。

 出たところは、いきなり謁見室。

 面倒なので、門番のところに行って許可をもらって……なんてことは、しなかった。

 急ぎの要件だからね。


「国王陛下」

「早かったな。聖女殿」

「ユーフォルビア帝国は戦争の中止と軍の撤退を受け入れました。詳細はアキラ氏にご確認ください」

 ただ、私は、それだけ言うと、

「転移!」

 大急ぎで単身、戦地へと向かった。

 まだ、やるべきことがあるからだ。


 国王陛下からは、

「おい、ちょっと待て!」

 呼び止められたけど、軍隊を放っておけないもんね。

 それから、救出した人達も、今のまま放置できないだろう。



 そして、戦地に出ると私は、空中浮遊の魔法で宙に浮き、さらに、

「出ろ!」

 巨大で白い翼を自分の背中に出現させた。

 これで私の姿は天使か何かに見えるだろう。

 勿論、これは、地上の人達に言うことを聞かせるための演出だけどね。


 私は、

「解除!」

 各陣営に張った透明バリヤーを解除すると、戦場全体に向けて思念波を送った。声じゃ届かないと思ったからだ。


「私はブロメリオイデスのラヤ。たった今、ユーフォルビア帝国では、ヘリオス三世皇帝陛下がケプラー総統より国主としての権限を取り戻しました。直に皇帝陛下より戦争中止と軍の撤退の指令が来ることでしょう。また、ユーフォルビア帝国の撤退に伴い、カトプシス王国でも国王陛下が戦争の中止と軍の撤退を約束されました。よって、武装解除を命じます。もし、これに反するようなことがあれば、国は滅びることになるでしょう」


 ここで私は右手を高々と上げると、強烈な雷魔法を地に向けて打ち込んだ。両軍に向けての脅しだよ。

 それと同時に、私は、その場から転移魔法で姿を消した。


 言っていることが中途半端になった気がするけど、最後のまとめの言葉が思い浮かばなかったんで、

「そのことを、ゆめゆめ忘れるなかれ!」

 って思念波を送って逃げたよ。


 仕方ないじゃん!

 だって、スピーチって苦手なんだもん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ