184.エピローグ!
私が女神になって半世紀が過ぎた。
この日、私はラヤとしてブルバレン世界……アキの家の近くに来ていた。
ちなみに、今の私の姿はオリジナル・ラヤ。
ブルバレン世界に来る時は、基本的に、この姿になるって決めている。
今日は、アキの嫁、ヴァナディスの葬儀が行われた。
私は、その葬儀に参列したんだ。
この世界は、中世ヨーロッパレベルの文明だからね。
それを考えると、ヴァナディスは、この世界でも、かなり長寿の方だと思う。
アキ、フユミ、マナミ(アキの友人)、ケイコ(マナミの旦那? 嫁?)、ミチルとも会ったけど、コイツ等、全然老けていないなぁ。
アキは人形だし、マナミもアキとほぼ同じ仕様の人形なんだよね。
フユミは女神様から不老不死の身体を与えられているし。
それから、ケイコはラフレシア様が召喚した人だけど、彼女も不老不死の身体を与えられているようだ。
ミチルは、正体がレッドドラゴンだから、まだ余裕で生きている。
この世界の、私の転生後の知人で、ヴァナディスよりも先に亡くなったのは、ヴァナディスと同郷のパラスくらいじゃないかな?
ちなみに、パラスはミチルの嫁ね。
「アキさん。この度は、ご愁傷様でした」
「ラヤちゃん。もし、ヴァナディスがラヤちゃんの担当世界に行くようだったら、ヨロシクお願いね」
「はい」
この世界では、火葬は無い。
土葬だ。
ヴァナディスの遺体が入った棺が埋められて行く。
私も、棺に土をかけた。
「現役女神に見送られるなんて、ある意味、ヴァナディスは幸せだよね」
「この世界では、むしろ破壊神として名が通ってますけど」
残念ながら、今でも、この世界でラヤと言えば、破壊神だ。
半永久的に、悪い意味で名が残るんだろうな。
こればかりは、私の黒歴史ってことで仕方が無い。
でも、その黒歴史が無ければ、私はイリヤさんとも出会えなかったし、こうやって色々な異世界に行くことも無かった。
やっぱり、何処で何が、どう展開する方向に寄与するかなんて、過ぎ去ってみなければ分からないものだ。
…
…
…
葬儀を終えて、私は天界に戻った。
すると、三級天使のサクラから、
「転生組が何名か来ています。今、待ってもらっている状態ですので急いでください」
って言われた。
ちなみに、サクラはミチルの嫁だったパラス。
彼女は、私が管轄する世界に転生する予定で私のところに来たんだけど、天界で働くことを強く希望して来てね。
それで、ビブリダシー様と相談した結果、彼女を取り敢えず三級天使として雇うことにしたんだ。
勿論、頑張れば、二級天使、一級天使に昇格できるってことで。
あと、サクラって名前は、パラスが天界で働くと決めた際にビブリダシー様が付けてくださった。
下界と決別する意味で、名前を変えた方が良いと判断されたそうだ。
それから、サクラは、今、十代後半の姿をしていた。
いくら何でも、老婆姿の天使じゃ、さすがに絵にならないからね!
「了解です」
「それと、早速、ヴァナディスが、コッチに回ってきているんですけど?」
「分かってます。ただ、もう来られたのですね」
「はい」
「それじゃあ、ヴァナディスさんを最初に通してあげてください」
「分かりました!」
私は急いで女神椅子に座った。
勿論、相手がヴァナディスなので、オリジナル・ラヤの姿のままだ。
それから数分後、サクラに誘導されて、私の前にヴァナディスがやってきた。
この時のヴァナディスも、死亡直後の老婆の姿じゃなくて、十代後半の頃の美しさ溢れる姿をしていたよ。
肉体をまとっていないから、本人の希望する年齢に姿を変えられるってことだ。
「まさか、誘導係がパラスで、転生担当の女神がラヤちゃんとはね」
「私も驚きました。ヴァナディスさん。この度は、ご愁傷さまでした」
「でも、長生きは出来た方だと思います」
「そうですね。それでですね。今回転生するに当たって、ヴァナディスさんには、二つの選択肢があります」
「それって、どんなモノですか?」
「トリフィオフィルムと言う世界にイケメン冒険者として転生するか、もしくは今の性別、容姿のまま三十八億年前のディルビウム世界に行って表皮常在菌を置いて来ていただき、その後、現在のディルビウム世界に戻って来て平和に……」
すると、ヴァナディスが私の言葉を遮って、
「ちょっと待って! 三十八億年前って、もしかして、私が置いて来た表皮常在菌から、その世界の人類まで進化するとかってヤツじゃない?」
と大声で叫んだ。
ちなみに、これって、私がプレカンブリアン世界でやったのと同じヤツね。
ヴァナディスは超美人だから、その世界に誕生するであろう男子共の中には、
『俺達は、あの超美人の垢から生まれたんだぜ!』
とか言いながら喜ぶ輩も出てくるだろうって思ったんだけど……。
「そうですね」
「じゃあ、そっちはパスで。さすがに、私の表皮常在菌から人類誕生なんて恥ずかしいので。なので、トリフィオフィルム世界に転生する」
案の定、人類の祖となるのは拒否されたよ。
やっぱり、自分の垢から人類が誕生するのには抵抗があるようだ。
「分かりました。かなりのイケメンの予定ですので、きっと女性冒険者達からモテるんじゃないかと思いますよ」
「でも、多分、私は、アキ以外は愛せないと思うけど?」
「そうですか。一応、ヴァナディスさんが成人する頃までには、アキさんレベルの美人さんと出会えるように、コッチも頑張ってみますけどね」
「期待しないで待ってるわ。あと、絶対に冒険者にならないとダメなの?」
「基本的に非常に高レベルな冒険者になる資質を持って生まれますので、冒険者になるのが最良でしょう。しかし、他の職業を選択しても構いませんよ」
「分かった。ただ、私の転生特典って?」
「魔法剣士です。魔法レベルはA級以上。冒険者として間違いなく大成功できると思います」
「あ……ありがとう」
「では、トリフィオフィルム世界での活躍を祈念致します。転移!」
そして、私は転移魔法を発動して、ヴァナディスの魂をトリフィオフィルム世界へと送り込んだ。
その世界で、彼女は赤ん坊として生まれ、多分、優れた冒険者として成長して行くことになるだろう。
中二男子が堕天使に召喚されて異世界にTS転移して破壊活動したけど、その後、女神様の手で別の異世界に転生したら聖女と呼ばれるようになり、さらに女神様達の使いっぱを続けていたら、聖女から真の女神にまでグレードアップしてしまった件!
これで、一区切り出来たと思います。
今まで、お付き合いいただき有難うございました。
心より御礼申し上げます。
ヴァナディスの葬儀から天界でのやり取りに関しましては、アキ&ヴァナディス視点で『大人のための~』にも追加掲載致しました。そちらも、御目通しいただければと思います。
ヴァナディスとラヤの会話が、ちょっと違っています。
ネオジェン世界の空白の六十年間は、追って、番外編で書ければと思っております。
もし、投稿できた際には、よろしくお願い申し上げます。




