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158.結婚!

「ちょっと質問です」

「何だい?」

「今の私の姿は、イリヤさんがリクエストしたって聞きましたけど?」

「ああ、それね。最初にラヤに会った時から、ボクの方も少し背が伸びたからね。同じようにラヤも成長した方がイイかなって思ったんだ」

「じゃあ、こっちの姿の方が好きとか言う訳じゃないんですか?」

「こっち姿も前の姿も好きだけどね。どっちもラヤだから」


 特に、こっちの姿の方が、スタイルがイイからってわけじゃないってこと?

 より綺麗な方が、お望みかなって思っていたんだけど?


 でも、口先だけの嘘を吐けるような人じゃないと思うし、この場は、それがイリヤさんの本音だと言うことにしておこう。


 ただ、

『どっちも好き』

 みたいなこと言って。

 言葉が巧いとだけは思ったよ。



「それと、イリヤさんは、プレカンブリアン世界には、何時頃行かれたんですか?」

「二年前かな? ブロッキニア王国では、ラヤが消滅した丁度一年後に聖女ラヤ祭が開かれてね」

「それって、夢の世界でも聞いた記憶があります」

「毎年行われることになったよ」

「やっぱり、そうなんですね」

「実は、三回目の聖女ラヤ祭の直前に、ボクはプレカンブリアン世界に飛んだんだ。あの世界では、トモティ世界とは違って、魔法が使えない分、科学が発達していてね」

「そうなんですね」

「随分と度肝を抜かれたよ。それでも、ラヤが前にいた地球と比べれば科学力が劣るって女神様から聞いたけどね」


 そう言えば、プレカンブリアン世界は、地球と同じ宇宙にあるんだよね。

 だから、地球と同じで、原則として魔法が使えないってことにしてあるんだろう。



 私がプレカンブリアン世界に行った時は、宇宙線とかを浴びないように、多分、魔法でバリヤーが張られていた。


 それから、表皮常在菌を洗い流した後は、物質創製魔法で私は服を出した記憶がある。

 でも、あれらは、私に作業を依頼したってことで、特例措置だったんだろうね。



「じゃあ、近代レベルってところでしょうか? それで、今、イリヤさんは、二十一歳ですか?」

「それが、女神様からは、プレカンブリアン世界では僕の成長を止めるって言われた。なので、身体は十九歳。この世界では歳をとるらしいけど、トモティ世界に戻った時には元の年齢に戻るわけだからね」

「でも、私がいなくなってから五年間、待っていてくれたんですね」

「ラヤの方が、もっと長い時間、待っていてくれたんだろ?」

「十二年くらいですか」

「僕の倍以上だね。長かっただろう?」

「そうですね」


 たしかに十二年は長い。

 小学校一年生から高校三年生までを終えた期間に相当するからね。


 でも、その間に、ナンパされたいとか思っていたことは黙っておこう。

 結果的に、私はエディアカラ世界からパレオジェン世界にいた間、誰とも付き合っていないし、セーフだよね?



「イリヤさんは、トモティ世界に戻った後は、大公とかになられるんですか?」

「多分ね」

「だとすると、そっちで誰か娶らなくては、ならないんじゃないですか?」


 私としては、ちょっと気に入らないことだけど、まさか大公が独身ってわけにも行かないだろう。

 子供も作らなくてはならないだろうし。



「実は、第二回聖女ラヤ祭の直後、あっちの世界では、勝手にだけど、ボクはラヤと結婚したことになっているんだ」

「えっ?」

「現世不在の人間との結婚だったけど、誰も反対しなかったよ。式も挙げたし」

「マジですか?」

「うん」


 これには驚いたよ。

 それって、ありなんだ。


 あの世界では、世界を救った聖女ラヤってことになっているから反対できないってのもあるんだろうけど。



 でも、正直嬉しい。

 トモティ世界では、結婚生活はできなかったけど、形式上は、キチンと結婚したことになっているんだ。


 同時に、ちょっと悔しいけどね。

 あの世界での結婚生活は無かったから。



「側室とかは?」

「作るつもりは無いよ。ただ、万が一だけど、兄さんが子供を作らずに死んじゃった時は、僕に王太子が回って来て、世継ぎを作ることを要求されるから。そうなった場合は側室を作らなくてはならないけど……」

「そうならないことを祈ります」

「多分、大丈夫だと思うけどね。義姉さん、妊娠したみたいだし」


 アナトリー王子……イリヤさんのお兄さんね……にも、既に妃がいたんだ。

 あの(包茎)手術後に、キチンと婚活したんだね!



「そうだったんですね。それで、アナトリー王子の妃って?」

「ラヤも知っている人だよ」

「そうなんですか? ええと、誰だろう? もしかして、オリガ導師とか?」

「一応、兄より年下の人なんだけど……」

「ええと、じゃあ、誰だろう?」

「レイラだよ」

「あのレイラ?」


 レイラは侯爵家令嬢で、元々、イリヤさんを狙っていたんだけど……。

 そっちにターゲットを変えたか。

 ……って、そう言えば、前にアクアティカ様から聞いたような気がする。

 すっかり忘れていたよ。



「レイラもラヤに診てもらったことがあるんだろ?」

「えっ? たしかに、そうですね」


 彼女には、処女膜再生術を施したんだよね。

 別に誰かとしたわけじゃなくて、乗馬の最中に破れたってことで。



「たしか、義姉さんが胸を強打して、ヘクチオイデス大聖殿に搬送されたけど、誰も対処できなかったところをラヤが救ったって聞いたよ」

「ええと……そうですね」


 一応、メインは、そっちだったっけ。

 二人共、私がシモの処置をしたって記憶の方が強くてね。

 レイラの再生術に関しては、誤解を招いても困るし、黙っておこう。


 …

 …

 …


 それから三十分くらいして、イリヤさんが暮らしている町、アエピカメルスの冒険者ギルドに到着。


 どうやら荷馬車と馬は、ギルドからレンタルしていたようだ。

 って言うか、この世界では、ギルドでレンタル可能なんだ!



「荷馬車、ありがとうございました」

「では、依頼達成料からレンタル料を引きまして……」


 受付で、イリヤさんが依頼達成手続きと、馬と荷馬車の返却手続きを行った。

 手続している間、私はイリヤさんの後にピッタリとくっついていたよ。

 第三者から声をかけられても困るからね。



 そして、手続き終了後、私達は、徒歩でイリヤさんの家に向かった。

 ギルドからは約二十分ってとこかな?

 町の中心地とも言えるギルド周辺とは随分違って、閑散とした感じがあるけど。



 でも、都会だろうが田舎だろうが関係ない。

 今日から、ここで私とイリヤさんの二人暮らしだ!


 これで、喪女から完全に脱することが出来るよ!

 当然、今夜は初夜……だよね?



 家に到着した頃には、既に日は暮れていたけど、休む間もなく、私はイリヤさんと一緒に隣近所に手土産を持ってご挨拶。


 イリヤさんは、近所の方々には、既に顔が知られているけど、私は新顔だからね。

 私はイリヤさんに連れられて、近所の家に挨拶と言う名の顔見世をして回ったわけだ。



 それに、結婚の報告ってこともある。

 式は挙げないけど……。

 この世界には、まだ私には呼ぶ相手がいないしね。



 ただ、行く先々で、

「綺麗な奥さんじゃないか。うちの嫁と交換して欲しいくらいだ」

 って旦那さんから言われたり、

「イリヤさん、独り身だって聞いていたから、ちょっと味見しようと思っていたのに。これじゃ、手を出せないじゃない!」

 って奥さんから言われたりしたんだけど……。


 ご近所さんの夫婦仲に亀裂が入ったりしないよね?

 ちょっと心配だ……。


 …

 …

 …


 挨拶回りの後、私は、せっかくなので夕飯に手料理を……と思ったんだけど……。

 ちょっと待て!

 私とイリヤさんの味覚には大きなギャップがあるんじゃない?



「ええと……。食事なんですけど……」

「普通にラヤの好みで作ってくれればイイよ」

「でも、それだとイリヤさんが食べられないのではないかと思いまして」

「たしかに、トモティ世界の味覚は独特だからね。でも、それじゃ不便だからって、プレカンブリアン世界に行く時に、女神様が僕の味覚を地球……正しくはラヤの故郷、日本の味覚に近くしてくれたんだ」

「じゃあ、私の好みで作っても問題ありませんね」

「だね」



 私は、ステータス画面を開き、自分のスキルを確認した。

 魔法で料理を完成形で出せるかどうかを知りたかったんだ。


 一先ず、オリジナル・ラヤの姿に戻れば、可能とのことだ。

 最悪の場合は、この魔法に頼ることにしよう。


 でも、今回は、魔法で出すんじゃなくて、キチンと作ってみたかった。

 イリヤさんに、初めて美味しく食べてもらえるんじゃないかって思ってね。

 それで、家のある食材……台所に置いてあった肉か野菜で料理をしてみた……。


 …

 …

 …


 ……んだけど……。


「ゴメンなさい、イリヤさん」


 失敗したよ。

 見た目も味付けもイマイチ。


 ずっと、魔法で料理の完成品を出すって生活ばかりしていたからね。

 もしくは宿の食堂とか、道端の屋台のモノを買うか……。


 なので、料理すること自体が、随分と久し振りで。

 今回だけは、背伸びしないで魔法で出した方が良かったかも知れない。



「まあ、イイって。でも、トモティ世界の、ブロメリオイデス教会にいた頃は、もっと上手じゃなかった?」

「実は、あの後、他の世界に行ってからは、全然料理していなくて」

「あれっ? アクアティカ様から、ラヤが別の世界で医院を開きながら、時間限定で飲食店も営んでいるって聞いたけど?」


 そんなことをイリヤさんに教えていたのか。

 別に、知られてイヤなことじゃないからイイけど。


 それって多分、バージェス世界かシルリア世界での話だね。

 ただ、イリヤさんは、それを私がキチンと料理して客に出していたと思っていたわけか。



「実は、魔法で出していました。魔法で食べ物が完成形で出せるようにしてもらえて、それで……」

「そうだったんだ。実を言うと、アクアティカ様から、ラヤの店で出しているモノと同じモノってことで、カツを卵でとじたヤツを出してもらったんだけど」

「カツ丼ですね」

「そう言う名前なんだ。あの時は、僕の舌が合っていなかったけど、あれを食べてみたい。イイかな?」

「分かりました。では、今回作ったモノは廃棄しますね」

「いや、食べるよ。ラヤがせっかく作ってくれたんだ」


 ただ、それだと食べ過ぎにならないかな。

 それに、失敗作の方は、魔物みたいなオーラを放っているように見えるし。

 食べて最悪の何かが起こった場合は、治癒魔法で何とかしよう。



「なんか、イリヤさんに気を遣わせちゃったみたいで」

「そんなことないよ」

「じゃあ、出しますね」


 私は、

「魔力全開!」

 オリジナル・ラヤの姿に戻った。


 そして、

「出ろ!」

 リクエストされた品、カツ丼を一つだけ出した。

 今回は、イリヤさんの分だけでイイと思ったからね。



 ただ、この姿は第三者に見られてはイケナイ。

 イリヤさんには、このことは女神様から伝えられているはずだから、この場でオリジナル・ラヤに戻っちゃったけど……。


 なので、

「魔力収束!」

 私は、急いで元に姿に戻った。



「これですよね?」

「そうそう。これ。でも、ラヤの分は?」

「私は、こっちの失敗作を、責任をもって食べます」

「でも、そっちも僕は頂きたいけど?」

「分かりました。では、半分、残しておきます」

「そうして。じゃあ、いただきます」

「私も、いただきます」



 そして、私は失敗作を食べたけど……。

 さすがに、これは厳しいや。


 もしかすると、トモティ世界の味覚だったら問題無く食べられるのかも知れない……なんて、ふと思ったりもしたけど。



 一方のイリヤさんだけど、カツ丼を一口食べると、

「こんなに美味しいものだったんだ!」

 って言いながら涙を流し始めた。

 泣くほど美味しかったってこと?



「そんな、大袈裟な」

「大袈裟じゃないよ。ただ、トモティ世界にいた頃、アクアティカ様からいただいたカツ丼を美味しく感じられなかったことが悔しくてね。ラヤの味だって言われていたのに」

「そうだったんですね。でも、これからは、必要に応じて出します。ただ……」

「ただ?」

「キチンと自分の手で料理もするようにしますけど。子供が生まれたら、魔法で料理を出すところを子供達に見せるわけには行かないでしょから」

「そ……そうだね……」


 この時、イリヤさんは赤面していけど……。

 最初は、なんでなんだろうって思ったんだけど、その理由に私もすぐに気が付いた。

 子供が生まれるってことは、私とイリヤさんが……、そう言うことをするってことだ。


 …

 …

 …


 取り敢えず、イリヤさんも失敗作を食べてくれたけど、特に体調不良とかは起きていないみたいだ。

 私も大丈夫だしね。



 その後、私とイリヤさんは、一緒にお風呂に入った。

 凄く恥ずかしかったけど……。


 そして、その後、これまた嬉し恥ずかしなんだけど、私はイリヤさんに、性的な意味で美味しくいただかれたよ!

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