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126. こんにちはクリテイシャス世界!

 私達の目の前に、背中に大きくて白い一対の翼を付けた美女が現れた。

 その姿は、アキにそっくりだったんだけど、ただ、感じる波動は、明らかにギガンテア様のモノだった。


 ロリダ様以外の女神様もアキの姿になるって……。

 もしかして、アキの姿になるのって、女神様達の間で流行っているのかな?


 ただ、この姿を見てシュンカは、

「綺麗……」

 と一言。

 性別を超えて、その美しさの虜になってしまったかのように見えた。



 シュンカは、時空の狭間に足を踏み入れて大変な目に遭ったわけで、本来であれば、

『神も仏もない!』

 とか思っていたんじゃないかって推察する。


 だから、女神様に会ったら、

『今までの分の謝罪を要求する!』

 ってなってもおかしくない心境だと思う。



 でも、女神様の虜になっちゃったら、全てを許しちゃうかも知れないね。

 もしかすると、ギガンテア様は、そうなるのを狙ったんじゃないかな?

 だとすると、意外と女神様って腹黒いかも知れない。



「ラヤ。予定通り、次の世界に行ってもらいます」

「分かりました。それで、どのような世界でしょうか? シュンカにも状況が分かるように説明をお願いしたいのですが」

「そうですね。了解しました。次に行ってもらうのは、クリテイシャスの世界と呼ばれるところです。そこで、勇者と共に魔王軍と戦い、勝利してください」

「分かりました。では、先ずは勇者と合流すれば良いですね」

「そうです」

「それで、その勇者の名前を教えていただけますか?」

「勇者は、かつてオルドビス世界に転移してもらったカナコと言う女性です。一度、ラヤは彼女のことを見たことがありますね?」

「はい」


 あのカナコね。

 麻雀の麻雀による麻雀のための政治が行なわれていたオルドビス世界に転移した奇特な女性だ。


 美少女故に性的暴力を受けて、精神が病んでいたって話だったけど、暴力や性的暴力が蔓延(はびこ)っていそうなオルドビス世界に、よく行く気になったと思う。



「カナコには、大聖女と大賢者を送り込むと伝えてあります。また、オルドビス世界では、予め大聖女ラヤ・ビブリスにヒールスライムを用意してもらっていたことも話してあります。ヒールスライムのことが気になるでしょう?」

「まあ……はい……」

「そのことは、カナコに聞くと良いでしょう。あと、クリテイシャス世界では、最凶魔法は決して使わず、聖女役に徹してください」

「分かりました」


 この時、私は、

『魔王は勇者カナコが倒すべきだから、私が手柄を横取りしちゃイケない』

 程度にしか思っていなかった。

 最凶魔法を封印する真意が別にあるって、後々知ることになる。



「それからシュンカ。時空の狭間に落ちて、アナタには、今まで大変な苦労をさせてきたと思います。遅くなりましたが、その救済をさせていただきます。先ず、十八歳の姿で大賢者として転移していただきます」

「若返りですか? それに、私なんかが大賢者でイイんですか?」

「自己否定する必要はありません。大賢者として生きるための魔力は勿論、攻守に優れた種々魔法装備も与えます。また、転移先で言語に不自由しないよう、最大限の配慮も致します」

「ありがとうございます」

「それと、大荷物を抱えての移動は大変ですので、アイテムボックスも与えましょう。既に、ラヤのアイテムボックスの中からシュンカの荷物は、全てシュンカのアイテムボックスの中に移動済みです。また、ジュラの世界で稼いだお金は、クリテイシャス世界の通貨に換金してあります」

「何から何までありがとうございます」

「通貨単位はPEN。大体、2PENが1SENくらいの価値になります」


 ってことは、2SENが1円だったから、4PENで1円ってことか。

 あと、毎回換金してもらえて、本当に助かっているよ。



「では、クリテイシャス世界に移動してもらいます」


 こう言われた直後、私の目の前は真っ暗な闇に閉ざされた。

 そして、これも毎度の如くなんだけど、気が付くと私は、赤茶けた土の道路の上に座っていた。



 私の身体のサイズは、変わっていない。

 ジュラ世界の時と同じままにしてもらえている。

 ただ、前回の異世界転移と違うのは、隣にシュンカがいてくれたことだ。


 そのシュンカは、本当に若返っていた。

 ただ、『十八歳の姿で』って言葉が気になるけどね。


 ずっと十八歳の姿なのか、十八歳の姿から再び歳をとって行くのか……。

 私の前例から考えると、前者のような気がするんだけど?



 私は、早速、チャットボット機能を立ち上げた。

 すると、シュンカが、

「ねえ、ナニそれ?」

 って私に聞いて来た。


「ああ。これ? チャットボット機能だよ。これで、色々と細かいことを教えてもらえるんだけど、シュンカのステータス画面にはチャットボット機能は付いていないの?」

「確認してみる。ええとね……一応ついているみたい」


 さすがに、何も知らない異世界に放り出されたら、これが無いとキツイもんね。

 そう言う意味では、フユミは、よくチャットボット機能なしでやっていたな。


 彼女もカンブリア世界に行った時にもらえたけど、それまでは装備されていなかったわけだからね。

 本当に大変だったと思う。



 私は、早速、チャットボット機能に質問した。

 とにかく、勇者カナコに会えないと話が始まらない。


『Q:勇者カナコはどこ?』

『A:南に三十キロほど行った荒れ地』


『Q:そこでカナコは何をしている?』

『A:魔王軍と単身戦っている』


『Q:私達以外に仲間は?』

『A:今はいない』


『Q:『今は』ってことは、過去には仲間がいたってこと?』

『A:パーティを組んでいた仲間がいたが、パーティを追放された』


 ええと……。

 勇者が勇者パーティを追放されるって、どう言うこと?

 普通は、勇者パーティから、勇者以外のメンバーが追放されるんじゃないの?

 よく意味が分からないんですけど!



 ただ、その辺の詳細はともかく、単身で魔王軍と戦っているんじゃ、急いで応援に駆け付けないと。

 ただ、移動手段なんだけど……。


『Q:私の魔法装備は?』

『A:基本的にジュラ世界と同じ』


『Q:転移魔法とか火炎魔法は?』

『A:共に使えない』


 じゃあ、転移魔法も使えなければ、火炎魔法を使ってロケットの如く飛んで行くことも出来ないってことか。

 使えないな、私。


 でも、シュンカって大賢者なんだよね?

 もしかしたら、転移魔法が使えるかも!



「ねえ、シュンカ。転移魔法って使える?」

「ええとね。ステータス画面で確認中…………。うん。一応、使えるみたい」

「最大移動距離は?」

「ええと……多分、五十キロだと思う」

「チャットボット機能からの回答だと、勇者カナコが南に三十キロほど行ったところで魔王軍と単身格闘中ってことになっていて」

「じゃあ、急がないと。でも、パーティを組んでいないの?」

「それが、勇者パーティを追放されたってことになっていて」

「はぁ? 勇者パーティから勇者が追放されるって、意味分かんないんだけど!」


 そうだよね。

 シュンカも私と同じ反応を示したよ。



「私も意味が分からない。でも、転移魔法が使えるんだったら、それでカナコのところまで移動したいんだけど」

「でも、転移魔法って、一回行ったところじゃないと、転移先をイメージできなくて行けないって制限があるんじゃないの?」

「ええとね。ステータス画面の中に地図機能って無い?」

「ええと……あるみたい」

「それを開いて。そうしたら、ストリートビューみたいなのが出てくると思うから、それを見てイメージして」

「なるほどね。それでイメージして転移するってことか。でも、そう言うことが出来るって、魔法装備も進化しているんだね」


 これは、進化というよりも、より都合良くなっているだけだと思うんだけど……。

 でも、そのお陰で、時間短縮に役立っているよ!

 転移魔法での移動に慣れ過ぎていたから、ジュラの世界では、馬車移動が凄く不便に感じたんだけどね。



「じゃあ、シュンカお願い」

「分かった。ええと……南方三十キロ地点の状況は……。えっ? マジで!」

「どうかしたの?」

「このストリートビュー、写真じゃないんだ! リアルタイムでの出来事が見えているっぽいんだけど!」

「まあ、女神様特製だからね」

「この、一人で戦っている女性がカナコか。二十歳くらい?」

「たしか、オルドビス世界に召喚されたばかりの時は十四歳だったって記憶しているけど、今は分からないなぁ」

「でも、その時から何年経ったかで分かるんじゃない?」

「それがね。転生も転移も、異世界に行く場合は空間だけじゃなくて時間軸も飛ぶから。実際に私も、オルドビス世界には過去に遡って転移しているし」

「じゃあ、実年齢は分からないね。だったら、本人に聞けばイイか。ただ、あれって、絶対に戦闘に向かない格好をしているけど……。じゃあ、行くよ」

「うん」

「転移!」



 さすが大賢者に進化しただけのことはある。

 シュンカの転移魔法で、次の瞬間、私達はカナコと魔王軍の戦う場に降り立った……。


 ……んだけど……。

 ちょっと出るところを考えようよ。

 いきなり、敵軍のど真ん中に出ること無いじゃない!

 カナコからは百メートルくらい離れているし。



 周りは、とにかく敵だらけ。

 一応、敵は全部二足歩行しているけど、人間の姿じゃない。

 明らかに魔界の生き物って雰囲気満載だったよ。

 角があるヤツとか、爬虫類顔のヤツとか、見るからに魔王の手下って感じだ。


 人を見た目で判断しちゃいけないって言われているけど、コイツ等に関しては、まさに見た目通りだね。



 最凶魔法は封印って言われているから、私が使える攻撃魔法って、痴漢撃退用の電撃くらいしか無いんじゃないかな?


 でも、最大出力にすれば心停止だってあり得る強力なヤツだよ!

 なので、

「電撃!」

 私は、魔力最大放出で、カナコとは反対側にいる連中に向けて電撃を放った。

 バタバタと倒れて行く魔王軍。



 シュンカも、

「ファイヤーボール!」

 特大級の火炎球を、敵に向けて何発も楽しそうに投げ付けていた。


 彼女の場合、異世界に来ても、今までは、こんなチート能力を与えられていたわけじゃなかったからね。

 溜まっていた鬱憤を晴らすかのようだったよ。



「シュンカ、お願い。私が電撃で倒したヤツ等も、起き上がる前に焼き払って!」

「了解した! 火炎放射!」

 まるで、焼き畑農業でもやっているみたいだ。


 これで、この荒れ地が、急遽作物が育つ地に変わったら面白い!

 なんてことを一瞬考えたりもしたけど、別にどうでもイイか!



 何はともあれ、私とシュンカの加入で、魔王軍も一気に数が減って行った。

 その後も、私、シュンカ、カナコの三人で魔王軍勢を倒しまくり、最後にカナコが、この軍の司令官と思われる者を一刀両断にして、完全殲滅を成し遂げた。



「助太刀感謝します。もしかして、お二人は女神ギガンテア様から言われていた大聖女と大賢者ですか?」


 剣を鞘に納めると、カナコが、私達に聞いて来た。

 前に見た時と、年齢的には余り変わった感じはしていないけど、以前よりも、ちょっと影のある感じだ。

 正しくは、少し暗くなったって言うか……。



 ただ、この場に転移してくる前にシュンカが言っていた通り、カナコの装備は、全く戦闘に向いている格好とは思えなかった。

 もの凄い露出度だ。


 たしかに、異世界モノでは、女性の場合、露出が増えるほど強くなるって法則があるみたいだけど……。

 どう考えても、すぐに怪我をしそうだよ!



「はい。私はラヤ・ビブリス。今回は聖女に徹するよう女神様からは言われています。それから、私の隣にいるのが大賢者のシュンカ」

「勇者カナコです」

「ええと……お互い敬語はやめない?」

「そうですね……。そうしましょう。ええと、ギガンテア様から聞いているけど、オルドビス世界で私が出会ったヒールスライムは、ラヤが用意してくれたんだって?」

「まあ、そう言う指令だったから。それで、あのスライムちゃんは、その後どうなったのかなって思って」

「どんな怪我でも治してくれて、もの凄く助かったよ。今では、オルドビス世界で私の仲間だった一人が、テイムしてくれているよ」

「そうなんだ」


 取り敢えず、ヒールスライムちゃんは、それ相当にご活躍してくれたみたいだね。

 私としては嬉しい限りだよ。



 すると、ここでシュンカが、

「女神様に言われた時から気になっていたんだけど、オルドビス世界って、ラヤが前に話してくれたところよね?」

 と私に聞いて来た。


 さすがに、そこに召喚されていたカナコの前だからね。

 ワーストツーの世界と言う表現だけは避けてくれたようだ。



「そう。そのオルドビス」

「そこでヒールスライムを渡した相手ってのが、この女性ってことね」

「そう言うこと。それで、カナコに、ちょっと聞き難いことがあるんだけど、パーティはどうしたの?」


 パーティを追放されたのは事前にチャットボット機能からの回答で知っていたけど、その理由が分からない。

 それで、私はカナコに聞いてみたんだ。


 ただ、こう言われた途端に、カナコの表情が変わった。

 まるで怒りを露わにしているって感じだ。

 もしかして、私って地雷を踏んじゃったかな?



「ゴメン。言いたくなかったらイイよ」

「いいえ……。アイツらのことを思い出したら怒りが込み上げて来て。私は、勇者パーティを追放されたのよ」


 これを聞いてシュンカが、

「そもそも勇者パーティでしょ? それなのにパーティの中心人物が追放って、意味が分からないんだけど?」

 ってカナコに言った。


 すると、カナコは小刻みに震え出した。

 怒りと言うよりも、もの凄い嫌悪の念を感じる。



「あれは、勇者パーティなんかじゃない。ヤツラが望んでいたのは乱交パーティよ!」

「ナニそれ?」

「私を含めて、地球からの転移者が四人いたの。勇者の私と聖騎士の伊勢天馬、賢者の甲斐誠治、聖女の設楽好子の四人」

「男二人に女二人?」

「そう」


 たしか、そのうち伊勢天馬と甲斐誠治って、アキの大学時代の知人じゃなかったかな?

 前にアキのことをチャットボット機能で調べていた時に出てきた気がする。


 伊勢と甲斐で『いせかい』だし、天馬と誠治で文字を入れ替えると『天誠馬治(てんせいまじ→転生マジ)』ってなる。

 なので、コイツ等がセットで異世界転生したら面白いのに! とか、勝手に思っていたんだよね。



 それにしても、転生じゃなくて転移だったけど、本当に異世界に召喚されていたとはね。

 まあ、それは置いといて。


 でも、地球時代にアキと同年代ってことは、もしかすると、結構、二人共年上だよね?

 カナコとは話が合わなそうだなって思ったよ。



「まさに二対二のパーティってとこね」

 こう言ったのはシュンカ。


「まあ、傍から見たらそうだろうね。ただ、私以外の三人は元の世界ではアラサーで、こっちの世界には十代後半に若返って転移して来たんだけど、なんか、伊勢も甲斐も、妙にHしたがりでさぁ。でも、私は、そう言うのを拒否したのよ。そうしたら追放。設楽と三人で、よろしくヤッているみたい」


 それって、聖騎士と言うよりも性騎士、賢者と言うよりも愚者、聖女と言うよりも性女だよね?

 そんなのに囲まれていたなんて、なんだか、カナコが可哀そうだよ。

 そりゃあ、美女がこんな露出度の高い格好していたら、男性共はHな方を期待しちゃうとは思うけどさ。


 でも、なんで、こんな格好させられているんだろ?

 実は、チャットボット機能での事前調査で、カナコは性的な方面にはトラウマがあるって回答を得ていたんだ。

 性的暴力を受けていたからね。

 だから、どう考えても、ヤツラの要求に対してカナコとしては拒否一択しかない。


 それに、こんな格好だって、カナコが望んでするとも思えないんだよね。

 なんで、こんな風になっていたんだろ?

 正直、女神様からの悪意すら感じるんだけど?

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