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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第6章 第四王女
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第四王女 その一

第九十四話 第四王女 その一


 「フォールー! フォールー!」


 少女が護衛の女騎士フォールーの元に駆け寄り、名前を叫ぶと、二人は手を取り合った。


 「殿下・・・勿体ないお言葉です・・・」


 止血が終わり、俺は手を洗って魔力薬を口に含む。


 「殿下? 王族なのか? あれ? ヴェルヘルナーゼ、あの子さ」


 「うん・・・うちも思った・・・キーアキーラの面影があるわ・・・どうする? ここで野営・・・は無理よね」


 「魔道馬車に乗せよう。ルーディアまで無理していくよ。俺は遺品を集めておくから、彼女たちを乗せてあげて。一気にルーガルまで行くぞ。南部は危険だ」


 俺は護衛騎士の物と思われる剣を四振り集めた。先頭の馬車の中には十人分のザックが有った。俺は魔法の鞄に収容する。


 護衛騎士の死体は発見出来なかった。捕らえられて何処かで食われたのだろう。馬も蹄しか残っていなかった。ワイヴァーンになすすべも無く、命を散らしたのだった。


 「あの、馬車に乗せて頂けるのは有り難いのですが、馬がいないようです・・・」


 少女が助手席で、俺に話しかけて来る。


 「大丈夫です。魔道具なんです。殿下、護衛の方々の遺品は集めて収容しました。よろしければ出発します」


 少女は魔道馬車で立ち上がり、口を開いた。


 「貴方たちのことは忘れないわ。私を守ってくれてありがとう。でも、一緒に王都に帰りたかった。私の大事な騎士達。ありがとう。ドーグ、もう沢山食べれないね。ギールデー、お酒を控えろって言っちゃってごめんなさい。セーローグ、奥さんは任せてね。カローフ、いつも細かな心がけありがとう。ジェルフェ、貴方にもう馬を引いてもらえないのね。グーリージェ、貴方も馬車をありがとう。デデール、フェルス、フォール、ベール。入団一年目でごめんなさい。絶対に忘れないわ」


 しばらく、少女は涙を流した。俺達は黙って聞いていた。


 「ありがとう。もういいわ。馬がいないけど・・・」


 後部座席はヴェルヘルナーゼと護衛の騎士。護衛の騎士はヴェルヘルナーゼに状況を診てもらう。


 「あ、ヴェルヘルナーゼ。彼女に指輪を。あと毛布」


 俺は指輪を外し、ヴェルヘルナーゼに手渡す。ヴェルヘルナーゼがフォールーと呼ばれた女騎士に指輪を嵌め、寒くないよう毛布で暖める。


 「じゃあ出発します」


 俺は魔道馬車を発進させた。


 「は、走ったわ!」


 「魔道具ですから。ほら、ここに魔石があるでしょう。グリフォンの魔石なんです。この魔力で走らせているのです」


 「そ、そうなの・・・」


 「申し遅れました。私はルーディアで店を持たせて頂いているキーヴェルユー・リーフローフ商会の副会頭、ユージー・アーガス法衣騎士爵です。後ろにいるのは婚約者のヴェルヘルナーゼです。同じく副会頭です。見ての通り、エルフです。会頭がキーアキーラと申す者です」


 俺は王族だと見当を付け、ヴェルヘルナーゼを婚約者だと言い切った。


 「ヴェルヘルナーゼです。王族の方とお見受けしました。小さな馬車で申し訳ありませんが、ルーガルまで一気に走ります。ご了承ください」


 ヴェルヘルナーゼが頭を下げる。


 「き、綺麗・・・」


 少女がヴェルヘルナーゼを見て言葉を失う。少女もキーアキーラ譲りの美貌の持ち主であるが、いかんせん子供である。十二、三歳というところか。


 少女は気を取り直したのか、俺の方を向いた。


 「この度は命を助けて頂いてありがとうございます。礼を言わせてください。もうおわかりかと思いますが、私の名はメリーカーナ・ロスメンディア。第四王女です。王都に戻ったら礼をさせてください」


 俺はとりあえず頭を下げておいた。礼など勘弁して欲しい、というのが正直な心象である。魑魅魍魎が生息していると思われる王宮へ巻き込まないで、というのが俺の心象だ。


 「お話は変わるのですけど、キーアキーラお姉様が商会を開いたのですか?」


 「ヴェルヘルナーゼと私、キーアキーラで冒険者パーティを組んでいたのが始まりなんです」


 「お姉様と同じパーティ・・・」


 俺は後ろを見る。女騎士がぐったりとしている。


 「大丈夫よ、寝ているだけ。起きたら回復薬を飲ませるから、心配しないで」


 俺は頷くと前を向いた。


 「あ、フォールー!」


 メリーカーナ王女は思い出したかの様に後ろを向いた。


 「殿下、大丈夫です。寝ているだけですから」


 メリーカーナ王女は安心したのか、再び前を向いた。


 「不思議な馬車ですね。馬が無くても走るなんて・・・あら? お姉様の名前が」


 メリーカーナ王女はハンドルのロゴに気が付いた。


 「お姉様の名前が・・・」


 「ええ。我が商会の商品はキーアキーラの名を付けて売る事にしています。ブランドという物です」


 「お姉様の名前が・・・」


 「殿下、毛布を」


 ヴェルヘルナーゼが毛布を手渡してきた。俺は魔道馬車を止め、毛布を掛ける。


 「ありがとう。この馬車は何故走るの?」


 「それは錬金術師の秘密なんですが・・・ゴーレム技術を本当に簡単にした物を組み込んでいるんです。ミスリルの加工はルーディア一の錬金術師、ロビーリーサという者が、ゴーレム化は私が行っています。ミスリルの簡単なゴーレムがこの魔道馬車の秘密なんです。これより大きいタイプを今試作していまして、ルーガルの材木を用いて走る部屋のような感じに仕上がる予定です。女性の方が旅に出たとき、野宿しなくてもいいようにですね。試作機はロビーリーサに渡して色々と試験をして貰うつもりです」


 「部屋の様な馬車?」


 「ええ。今乗っているこの魔道馬車も試作機で、適当な椅子しか据え付けていなく、殿下にお乗り頂くレベルでは無いのですが。大型の魔道馬車は椅子の背もたれを取り外すとベッドになるように細工をしまして、四人まで就寝出来る様になっています」


 メリーカーナ王女が食いついてきたので宣伝トークをしてみる。


 「今回、辺境伯を訪れたのですが、殆どが野宿で大変だったのです。今工房で作っているの?」


 「ええ。レングラン男爵の支援で工房を立ち上げています。試作機がかなり出来ていると思うのですが、本当は私が監督をしなければならなかったのですが、アルプーディアに用事が出来てしまい、職人に任せっきりになっているのです」


 「み、見たいです」


 「わかりました、と言いたいところですが・・・」


 「あの、今から行くところはレングラン男爵ですか?」


 「ええ」


 「男爵家に王族が行くとか無理じゃない?」


 「あ、ヤベ」


 俺は思わず変な声を上げてしまった。


 「あなた、レングラン男爵家は薬草を片っ端から植えちゃって酷いことになっているわよ」


 そうだった。俺が見ても酷いと思われる状況である。


 「あのですね、レングラン男爵家は代変わりで傾いた財政を持ち直そうとしている所なんです。レングラン男爵家の庭には高級な薬草を片っ端から植えましてね、来年は専用の畑を作ろうとしていた次第でありまして」


 「構わないわ。レングラン男爵家は取り潰す予定だったと聞いています。出来れば財政再建の話を聞かせて欲しいです。ちょうどいいですね。視察させて貰います」


 「わ、わかりました。では明日にでもご説明しましょう」


 「え? どうしてユージー、あなたが説明を?」


 「レングラン男爵から爵位を頂くのと引き替えに、色々と手伝いを頂戴いたしまして、名目はレングラン男爵家筆頭騎士という立場にあります」


 「そうですか。では明日頼みます。で、お姉様なんですが」


 「キーアキーラですか? 強くて美しいです。同じパーティだから身内贔屓かもしれませんが」


 「そうでしょう!」


 「私は冒険者のことを全て、キーアキーラから教わっています。戦い方は無論、行動の仕方、罠の張り方、迷宮の潜り方。キーアキーラはレンジャーですから、特に行動、魔物との関係について学ぶことは多いです」


 「そうでしょう! そうでしょう! お姉様もルーディアに?」


 「ええ。キーアキーラも喜びます」


 「嬉しいです! 楽しみです!」


 俺は頭を下げる。話が一区切りすると、メリーカーナ王女は静かになった。静かに寝息を立てている。メリーカーナ王女も眠ってしまったので俺は飛ばしてルーガルを目指した。


 食事も取らずに魔道馬車を飛ばし、日が暮れる頃、ルーガルの街が見えてきた。二人はまだ寝ている。ちらりと覗いた寝顔は可愛らしかった。


 「ウフフ。小さいキーアキーラよね。可愛いわ」


 「不敬だぞ」


 「そろそろ起こした方が良いんじゃない」


 俺は頷くと、メリーカーナ王女を起こした。


 「殿下、そろそろルーガルに到着します」


 「ん? はい? きゃあ!」


 メリーカーナは慌てて涎を拭いた。


 「ご、ごめんなさい。はしたないですよね。揺れないからぐっすりと寝てしまったのです・・・」


 「殿下、少しお色をお直しした方がよいですね。こちらへどうぞ」


 俺は魔道馬車を止め、女騎士に魔力を流し、状態を診る。破傷風になりかけている。耐病と耐毒の指輪が効いて、病原菌は減ってきている感じがした。後ほど、診てみる事にする。


 メリーカーナはヴェルヘルナーゼに顔を拭われていた。所々に血が付いている。


 「殿下、もうしわけありません。私はお化粧をあまりしないので、こうしてお顔を拭うしかできずに」


 「え? 嘘? お化粧していないの?」


 メリーカーナ王女は思わずヴェルヘルナーゼの顔を触る。


 「私は冒険者ですので、余り化粧はできないのです」


 「嘘よ・・・こんなに綺麗な肌な訳無いじゃないの・・・」


 「ありがとうございます。さ、レングラン男爵家に行きましょうか。お疲れでしょう?」

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