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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第1章 初めての転生
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初めての女レンジャー

第八話 初めての女レンジャー


 三人で俺の部屋に集まっている。俺とエルフのヴェルヘルナーゼ、スレンダーなキーアキーラだ。俺は虫除けの香を、ヴェルヘルナーゼに燃やして貰う。


 「何それ?」

 「俺が作った虫除けの香です。ヤブ蚊なら死にますよ」


 「へぇ」

 キーアキーラは珍しげに香を眺め、匂いを嗅ぎ、うっと声を漏らす。結構刺激臭がするんだよね。


 「で、どうします? 銀貨で良いです?」

 「そうだな。この指輪でお願いする」

 キーアキーラは右手薬指から銀の指輪を外した。飾り気の無い指輪だ。


 「どんな効果を付けます? 毒と病気がヴェルヘルナーゼの銀貨ですね」

 「そうだな、魔法防御がいいな」


 「魔法ですか? 火の玉や氷の槍などは多分駄目ですよ。魔力を直接ぶつけられたりみたいな感じだと効くと思いますけど。魔力防御だと回復魔法や魔法薬も効かなくなる気がしますね。デメリットの方が多そうです」


 「そうなのか? 何故だ?」

 「だって火の玉は燃えている火で攻撃されるじゃないですか。氷だって同じですよ。魔力が産んだ自然現象じゃないですか。魔力で直接攻撃されている訳では無いんですよ。回復魔法は直接魔力で作用しますからね。多分効かなくなります」


 「なるほど。流石白金級の魔道師様だ。回復薬が使えなくなるのは不味い。じゃあ火と氷の防御で頼む。ええと、金貨は百枚でいいか? ヴェルヘルナーゼは払ったんだろうな?」


 「え? いやお代は」

 「駄目だ。受け取れ。白金級か金級の魔道師だろう? 価値はあるな」


 「え? 俺は鉛級ですけど」


 「嘘? もの凄い瞑想していただろ? ヴェルヘルナーゼと二人で、凄い目立っていたぞ。通行人が側に来ないと存在がわからないからな。通行人がみんな不思議そうにしていたぞ。しかもヴェルヘルナーゼは目立つしな? くやしいけど容姿は凄いから」


 「だから俺が作ったってわかったんですね」

 「そういうこと。頼む」


 「じゃあやりますね」


 俺は灰で指輪を磨く。魔力を通して不純物を指輪から排出させる。純銀になったら、銀結晶の粒界にそって魔力を流し、使用者の回りに見えない断熱層を作る様に願う。ウレタンフォーム、熱伝導率が0.024だ。厚さは三十ミリ。四十ミリは残りの魔力じゃ無理っぽい。断熱層の維持は使用者の魔力をほんの少し使用っと。断熱層は体温が上がるな。体温を平熱で維持するように廃熱するっと。よし。


 「出来ました。どうぞ」

 「顔色が悪いな。魔力欠乏か・・・本当に鉛級なんだな。ありがとう。本当に一部がミスリルに変わっている。早速付けてみる」


 俺も、ヴェルヘルナーゼも息を飲んで見守る。


 「おお? 熱くもなく寒くも無く、ちょうどいい。不思議だ」

 「常時効果を発揮するので、ほんの少しずつ魔力を使います。気を付けてくださいね。それと、恐らく真夏でも暑くないとか、そのくらいの効果です。火の玉とかをまともに食らったら多分駄目ですよ」


 「わかった。十分。じゃあいくぞ・・・」

 キーアキーラはお香を摘む。俺とヴェルヘルナーゼは息を飲む。


 「熱くない。凄い、凄い。迷宮で生存できる確率が格段と上がるな。待っていろ、お代は払うぞ。私の部屋から持ってくる。待ってて」


 キーアキーラは出て行った。


 「いいな、あの指輪・・・」

 「魔道師は欲しい物なの?」


 「冒険者なら欲しいわよ。あ、うちも払うね」

 「え? いいのに」


 「駄目よ。持ってくるね」

 ヴェルヘルナーゼも出て行った。俺はベッドに横になった。

 気が付くと真っ暗だった。どうやら寝てしまったようだ。机の上にはパンとスープが置いてあった。俺はパンを囓り、冷めたスープを飲み、再び眠りに就いた。


 翌朝、俺が一階の食堂に行くとヴェルヘルナーゼとキーアキーラがパンを食べていた。


 「おはよう錬金術師君。はい、金貨よ」

 キーアキーラがずっしりと重い革袋をくれた。


 「はい、うちもよ」

 ヴェルヘルナーゼも革袋をくれる。金貨二百枚か・・・凄いな。高位の冒険者は儲かるんだな・・・

 俺は女将さんが運んでくれたパンを囓りつつ、ハーブティーを飲んでいる。


 「ヴェルヘルナーゼ、今日はどうするんだ?」

 「今日? そうね、スライム獲りにいこうかな。金級のキーアキーラと違って青銅級ですし」

 キーアキーラは金級冒険者のようだ。凄い。


 「錬金術師君は?」

 「俺? 俺はしばらく療養です。しばらく錬金術師みたいな事もしませんよ。自分で自分に魔法治療をしないと、命が危ないんです」


 「え? そんな重篤なの?」

 ヴェルヘルナーゼは驚いてパンを落とす。


 「ほう、その割には落ち着いているし、治療できるのか・・・凄いな」

 キーアキーラは頷きながらお茶を飲む。


 「ええ。数日で治りそうです。魔力が無いから、一気に治療が出来ないんですよ」


 「まあゆっくり静養してな。じゃあ行くよ」

 キーアキーラが席を立つ。俺は思わずお茶を噴き出した。


 「変か? 錬金術師君の指輪のおかげで服を着なくても寒くないんだ。ほら、尻には自信があるんだ。触ってもいいぞ」

 キーアキーラはサラシみたいなので胸を隠し、ピッタリとしたスパッツとロングブーツという出で立ちだった。形の良いエロいお尻をフリフリしている。


 「じゃあ遠慮無く」

 俺はお尻を触ろうとしたが、ヴェルヘルナーゼに腕を捕まれる。


 「駄目よ! 触ったら何されるかわからないわ! 結婚しろとか言われるわよ!」

 あー結婚かぁ。キーアキーラも綺麗だしな。結婚もいい気がする。


 「なんだ? 認知してくれればいいぞ? でもな、腕とか見ろ。傷だらけなんだ。なかなか結婚してくれる男はいないな。それに行き遅れたからな」


 十分綺麗だと思うのだが、平均寿命が恐らく四十歳というこの時代、結婚は十代で子を育てるのが二十代という認識なのだろう。三十代で産むと子が大きくならないうちに母親の寿命が尽きる可能性もあるな。


 キーアキーラは刺激的な格好で自室に戻って行った。お尻の食い込みが凄い。


 「注意したのだけど聞かないのよね・・・寒くないなら良いのだけど・・・悪い虫が付かないか心配・・・いいのか・・・じゃ私も行くね。無理しちゃ駄目よ」


 ヴェルヘルナーゼも席を立って出て行った。俺は目を閉じ、動脈瘤に魔力の糸を出現させ、魔力を流す。昨日より魔力を多く流せる事に気が付いた。魔力は増えていそうだ。


 俺は目を開け、深呼吸する。動脈瘤はかなり小さくなった。後二、三回で治療が終わるかもしれない。今後の魔力の伸びに期待したい。


 俺は疲労感を覚え、自室に戻った。ベッドに横になると、いつの間にか寝てしまった。


 気が付くと、夕方だった。


 「ん? 夕方か・・・」

 俺はだるさで動くのも億劫だった。しばらくうつらうつらしていたら、ドアがノックされた。


 「ユージー君、起きてる? パン持ってきたよ」

 俺は起きようとしたが、ヴェルヘルナーゼに止められた。


 「石榴が好きなんだって? 買って来たぞ」

 キーアキーラも入って来た。


 「あれ? ズボンと服を着ている?」

 俺はキーアキーラを見た。あの格好でギルドに行ったのかと思った・・・


 「あの格好でいくわけ無いだろ。ほら、邪魔だから行くぞ」

 「あ、又明日ね。バイバイ」


 ヴェルヘルナーゼはキーアキーラに連れられて俺の部屋を出て行った。俺はパンと石榴を食べて再び横になると、そのまま寝てしまった。


 三日間、俺は朝に治療、その後はゴロゴロするという生活を続けた。動脈瘤も毎朝の治療ですっかり良くなった。しかし、体はだるくて仕方が無い。


 体力が酷く落ちているようだ。食べて寝ての生活から、リハビリを経て冒険者が出来る体力を取り戻さないと。しなくてはいけない。


 ヴェルヘルナーゼはスライム捕獲を、キーアキーラは魔物の討伐を請け負った様である。近場で受けられる仕事をしていると言っていた。


 俺もいよいよ冒険者生活に向け、起き上がる事にした。

ブックマーク、ありがとうございます!

初めて評価も戴きました。本当に嬉しいです!

これからもよろしくお願いいたします!

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