表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第4章 商会の発足
77/217

ルーガルの新しい騎士

第七十七話 ルーガルの新しい騎士


 「リークさん、疲れたら一度止まりましょう。一刻が休憩の目安です」


 良く、時間を表すのに一刻といういい方をするが、俺は一時間なのか二時間なのか未だにわかっていない。不明である。時計が無いため、朝の日の出、夕の日の入りしか時刻を計る術がないのだ。


 俺達、魔道馬車を操縦するリーク、助手席に俺。後部座席にはキーアキーラとヴェルヘルナーゼが座っている。


 早朝、誰もいない街道をリークが魔道馬車を走らせている。時速十五キロがリークの限界のようだ。時速十五キロ、はっきり言って超低速である。技術的なことは何もない。走ればいいだろう。精々、轍に気を付ける事くらいだ。気になるのは街中での操縦である。人を轢いたり、物損事故が怖い・・・あ。


 魔道馬車が止まると、俺はハンドルに付けられたキーアキーラと書かれたセンターコントロールゴーレムに魔力を流す。停止を押すと起動。加速は、停止状態から二キロ、五キロ、と順番にしか行かない事。減速は一気に行けること。後退は停止してからしか行わないこと。これで押し間違えが防げると思う。


 休憩後、出発する。今度は俺が操縦している。


 「疲れました・・・」


 「大丈夫そうですね。安心しましたよ。感想はあります?」


 「そうですね。売るときに馬車の扱い経験があると楽かも知れませんね。売る前にレクチャーした方がいいのでしょうか?」


 俺の問いに、リークが疑問で答えた。回答をしたのはキーアキーラだった。


 「駄目じゃないか? リークが殺されて持ち去られるぞ。金貨千枚の超高級品だからな。売って、操縦をマスター出来なかった責任までは取れないな」


 「そうですね。慣れれば誰でも操縦出来ますからね」


 キーアキーラの声に俺が肯定の声を出すと、ヴェルヘルナーゼが口を開いた。


 「フフフ、二人とも駄目ね。リークさんは金貨千枚に驚いているのよ。多分操縦疲れでなくて、高級品疲れじゃないかな? 実際に操縦する人は度胸が必要と思うよ」


 話している間にルーガルの街が見えてきた。俺はゆっくりと魔道馬車を動かし、衛兵に礼を言って貴族用の門から街中に入る。ルーガルの街では俺が魔道馬車を使っているのを見慣れている為か、時折手を挙げて挨拶してくれる。


 「へー。ユージーさん、ルーガルでは大人気なんですね」


 「そうよ。龍咆ドラゴンブレスのユージーだからね! うちも鼻が高いよ!」


 「ド、ドラゴンブレス?!」


 「そうよ。独自魔法の龍咆でオーガ十体とワイヴァーン一体の戦果よ。今や街の英雄ね。龍咆はだんだんと周囲に轟いて来ているわよ。フフフ」


 ヴェルヘルナーゼが鼻高々で、リークに説明する。


 「ね、でもワイヴァーンでは苦戦したよね。もっと強力なのを作らないの?」


 「構想はあるんだ、ヴェルヘルナーゼ。もっと大きい龍筒を作ろうかと思うよ。でも俺じゃ持てないから、専用のゴーレムが欲しいんだ」


 「戻って来たら、迷宮に潜ってとっつかまえるか。人型のゴーレムを作るのは難しいんだろ?」


 「キーアキーラさん、そうなんですよね。思案しているところです」

 俺は人型ゴーレムは難しいと思っている。まずはゴーレムを捕獲し、制御装置を分解したい。


 レングラン男爵の屋敷に到着すると、魔道馬車をしまう。門を守る騎士はどうぞどうぞと言って通してくれる。


 「門をフリーパスですね・・・」


 「そうよ! 戦場で騎士を指揮するのはユージーなんだからね!」

 嬉しそうなヴェルヘルナーゼを尻目に、レングラン男爵のドアをノックする。


 「男爵様! ユージーです」

 「おう! 入れ!」


 レングラン男爵の声がしたので俺達は中に入る。いつもはレングラン男爵とドドーレしかいない部屋だったが、人数が増えている。


 「お、来たな。お前さんの言うとおり、寄り合いを作ったぞ。この三人には屋敷務めをして貰うことにした。紹介する。最長老のハハム爺だ。七十歳を超えるご長老だ。やはり魔物は食べてないらしいな。知恵袋として来て貰っている。こっちの若いのはカムナとガドールだ。カムナは法衣騎士にした。村の名前を名乗らせている。カムナ・ルーファ法衣騎士爵だ。よろしく頼む。カムナが実際の統治を考える事になる。今は魔物食について検討中だ。カムナ、こちらが龍咆ドラゴンブレスのユージーこと、ユージー・アーガス法衣騎士爵だ。任務は統治、軍務全てに渡る俺の補佐だ。有事には騎士の指揮官となる。カムナの領地軍もユージーの指揮下になる」


 カムナと名乗った法衣騎士は三十歳くらいの精悍な青年だった。


 「お噂は聞いております。ゴブリン、オーガ、ワイヴァーンとルーガルの危機を救って頂き、ありがとうございます。重ねて薬草園と馬車製造、新たな産業も興していただき、重ね重ね有り難く思っています」


 次はカムナと年は同じ程度、三十歳位だが体の細いガドール。


 「お目にかかれて光栄です。よろしくお願いします。お時間があれば、お話をさせて頂けないでしょうか」

 俺はガドールと握手した。


 「いやあ、集めたがな、どうして良いのかわからず、お前さんを待っていたんだ。俺はキーアキーラを棺に案内してくるから、じっくりと話をしてやってくれないか。ドドーレも聞いておけ」


 レングラン男爵は笑いながらキーアキーラを見た。キーアキーラも頷いている。


 「ついでに木工所も行ってくるから、お話をしてあげて。じゃ行きましょうか」


 ヴェルヘルナーゼも同意したので、俺と領地の三人と、騎士であるドドーレを残して部屋を出て行った。


 「ほっほっほ。すまんの。ほんに若いのに知恵が凄いの。儂は長生きだけが取り柄のハハムじゃ。七十四になるの。潰れると思っていたこの領地が楽しくなるなど、考えもなかったの」


 「な、七十四歳・・・」

 俺は絶句しながら握手する。前の世界では百二十歳を超える老齢だろう。見たところ、目も耳も悪くなさそうだ。


 「四代前にエルフの血が混じっているのじゃよ。なので長生きなのじゃ。儂よりお主じゃな。伝説に残るルーディールーシュ様によう似ておる。小さな体、銀髪に白い肌。お主はハイエルフであろう? ハイエルフは耳が普通なのじゃよ」


 「え? いや、俺は違いますよ」


 「ほほほ、そうかの。すまんの。でじゃ、儂には理解出来なかったのじゃが、寄り合いの仕組みについて教えて貰えないかの。最初から話してくれると助かるの」


 「そうですね。じゃあ基本的な事からですね。俺が思う事ですので、後で皆さんで話して、この領地の実情にあったように決めて下さいね」


 「うむ。そうじゃな」


 「まずですね、皆さんはレングラン男爵から領地の経営を任されている、でいいですか?」


 「そうじゃ。儂は隠居で、ガドールは嫡男だから、正確にはカムナがそうであるな」


 「成る程。であれば皆さんに降りかかるのは戦争の責任です。小領主は、出兵の責任が発生します。統治に出て来て意見を述べる、自分の権利を守ると言うことは出兵するからです。これは良いですかね?」


 「うむ。その通りじゃの」

 「爺様、そうなのですか? 年貢を納めるだけでいいのでは?」


 ガドールが疑問を投げかけてくる。


 「王国の王は何故王だかわかりますか?」


 「初代が戦乱を戦って王位についたからじゃの」


 「そう、戦争で勝ったから偉いんです。偉いためには戦争で勝つ事が必要なんですよ。逆に言うと、兵を出すから偉いんです。この世の基本は戦争で成り立っています。戦争に勝つこと、これが国の存在理由です。富むことは二番目で、一番目は戦争に勝つ、つまり民の安全を守る事です。じゃあ民とは誰か、というと難しくなるんですが小領地の経営を任されているあなた方じゃないですか? 不満があるのであれば、兵を起こすしか方法は無いんですよ」


 「兵を出すのが義務なのですか・・・」


 「ガドーレさんは小さな国の王なんです。今は王子ですかね。ガドーレさんに所属する農民の方の安全を守る義務がありますよね。仮に、この地が無法地帯だったとします。カムナさんの領地から兵が来た場合どうしますか? 農民達を引き連れて戦をしませんか?」


 「うん・・・わかったような・・・」


 「今はそれで良いです。で、戦なんですが、大体二割、十人中二人が死亡すると軍が保てなくなります。十人兵を出したら二人が死ぬと思って下さい。農民を出兵させた場合、十人中二人死にます。出兵した十人は恐らく家長でしょうから、家族が居ますよね。五人としましょうか。五十人の村から十人の兵を出した場合、二人死にます。十家族中、二家族が働き手が居なく成る状況です。領地の危機でも無い限り、農民まで出兵させてしまうと領地の基盤が無くなるのですよ。基本は領主と少しの随伴くらいですね。領主は意外と替えが利きますから。安心して死んで下さいと言うわけです。まずはこの辺の仕組みをはっきりさせることでしょう。農民をごっそり出兵させると、勝っても負けても領地は駄目になりますよ」


 「うむ・・・」


 「少し疑問なのは冒険者ギルドですよね。あれだけ戦って、血を流しているんですから、俺はこの領地の経営権はギルドにあると思うんですよ。兵を出さないと『領地のやつら兵は出さないのにおかしいんじゃないか?』と思われますよ。今のままだと、追い出されるのは小領主の人達でしょうね。領地は剣鉄級以上に配布とかになってもおかしくない状況ですよね」


 「ふぉふぉふぉ。厳しいの。じゃがその通りじゃ。で、寄り合いなのじゃが、いまいちわからんのじゃ」


 「ああ、まずですね、寄り合いを作ってもらって、筆頭を決めて貰いました。カムナさんです。カムナさんの役割は、国で言うところの宰相です。外交、まあ王家や他領主なのでしょうが、外交と軍務以外を除く全ての責任を負う立場になります。領主は拒否権を持つだけです。カムナさんが寄り合いに計り、または寄り合いから議題が上がって決まったら、領主に許可を貰います。拒否されたら審議し直しか棄却ですね」


 「お、俺か・・・」


 「そうです、カムナさん。カムナさんは既に貴族。崇高なる使命を果たす必要があります。カムナさんには既に貴族としての義務が発生しています」


 「わかった・・・お給金とか貰っていないけど・・・」


 「決まった事を執行するのもカムナさんです」


 「そうなのか・・・」


 「まあ寄り合いに話せば良いだけのはずですよ。そして、有事に軍を率いる可能性もありますね」


 「ん? 軍?」


 「指揮系統に順位を決めて欲しいんです。第一位が男爵。二位がカムナさん、三位が騎士団長、四位が騎士副団長、でしょうね・・・領主家の扱いはどうするのかな? 経営に余り出てこないな・・・」


 「まあ、男爵様のご兄弟はとりあえずおいておいて欲しい・・・で、順位とはどういうものなのだ?」


 「上位者が死亡、怪我、病気、外出で不在の時、下位者が軍の指揮を執ります。俺の扱いがあやふやなので、扱いも決めて欲しいですね。不要であればいつでも騎士爵は御返上いたしますし、正直損しかしていないんで無くてもいいんですよ・・・薬草畑だって俺が個人でやろうと思っていたんですよね・・・」


 「不謹慎ではないか? 男爵様の身に何かが起こるなど」


 「実際に考えられるケースは王に呼ばれて王都に行っている間に、魔物が大量に発生したらどうします? 男爵は居ないですよ? 良くわからない男爵の親戚が出て来て揉めませんか?」


 「ぐうの音も出ない。確かに騎士爵なら軍を率いてもいい気がする」


 「そのための騎士爵です。騎士団は基本的に領主の私兵で、領主の命を守る為のもので、領地を守るものではないですよ。それに」


 「それに?」


 「カムナさんは領地運営のかなりの秘密情報を握るはずですから、かなり高度な政治的判断を下せるはずです。騎士団ではこの判断が出来ないはずです。情報を持っていませんので。相手が人間であれば、降伏した方が助かる命が多いと判断出来るのであれば、降伏する判断も必要です。騎士団にこの判断はできないかと」


 「重くはないか? 俺の責任が」


 「重たいですよ。男爵の代わりですから。誠心誠意励めばみんな着いてきてくれますよ。軍司令官の仕事は、軍を動かすタイミングを決めて、出来る人に命令する事です。俺でも良いし、騎士団長でも良いと思う。要所の判断だけすれば」


 「そうだろうか?」


 「そうですよ。出兵時期、出兵量、退却、降伏、兵糧の手配ですね。この辺の判断です」


 俺と新しく騎士爵を拝命したカムナとの話が終わると、ドドーレは口を開いた。


 「カムナ殿、大変ですなぁ。で、騎士団は基本、アーガス卿の指揮下に入る。カムナ殿は暫くはアーガス卿の下について軍務を学んだ方がいいだろうな。アーガス卿は戦の鬼だからな。距離七百ダール(約1キロ)先のオーガを一撃で仕留めるんだぞ。しかもオーガーキングだ。実質的に軍を率いるのはアーガス卿だ。これには議論の余地はないぞ。要はアーガス卿に誰が指示を出すかと言う話だ。それで良いと思う。アーガス卿の代わりは誰も出来ないぞ」


 「なるほど・・・段々頭が整理出来て来ました。申し訳無いですが、次はいつルーガルに来ますか? 色々と教えていただきたい」


 「これから男爵の使いで南方に行きます。二十日後ですね」


 「是非、頼む。帰りに、寄って欲しい」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ