調査依頼 その二
第七十二話 調査依頼 その二
「あ、ユージーさん、いやアーガス卿、お久しぶりです。いかがされました?」
「畏まらないで下さいよ。ギルドマスター居ます? オーガの件、原因がはっきりしたんですよ」
ルーガルの冒険者ギルドにて、受付嬢のメーニアが立ち上がると胸を振るわせながら奥に行く。メーニアはルーガル一の巨乳で、ヴェルヘルナーゼも負けてしまうほどだ。
「もう! 何処見ているのよ!」
俺はヴェルヘルナーゼに足を蹴飛ばされる。俺は何も・・・
「おお、もうはっきりしたのか。すげえな。で、どうだった?」
「ワイヴァーンです。街道から西に千三百の距離にワイヴァーンがいましてね。襲われたので返り討ちにしましたよ」
「な、何だと! ワイヴァーンだと! 本当か!」
「大きいので解体所で出しますか?」
「ああ、頼む」
解体所でヴェルヘルナーゼにワイヴァーンを出して貰う。解体所は冒険者ギルドに併設されている魔物を解体する部屋である。無論、ルーガルの解体所はルーディアや迷宮都市より小規模である。
「おお、ワイヴァーンだ。何匹いた?」
「いや、こいつだけでしたよ」
「そうか・・・まずは買い取りするか?」
「お願いします。盾二つと鎧を作るので、大きめの鱗は全部欲しいです。翼の膜も欲しいです。魔石も回収します。あとは買い取りで」
「す、凄い綺麗ですね。体に全く傷がありませんよ・・・」
メーニヤはワイヴァーンの頭を触っている。
「わかった。こんなに綺麗なワイヴァーンは初めて見た。皮は高く売れるぞ。解体するから、明日にでも取りに来い。でだな、明日にでも現場に行ってみて貰えないか? 一匹なのか、もっと居るのか確かめてきて欲しい」
「わかりました」
俺は頷くと、冒険者ギルドを後にした。
翌日、俺とヴェルヘルナーゼは早朝、魔道馬車でワイヴァーンに襲撃された場所へやって来た。
俺とヴェルヘルナーゼの仲は相変わらずである。昨晩はヴェルヘルナーゼの湯浴み姿を見ようと、頑張ったのだが疲労で寝てしまったのである。昼過ぎに寝て、起きたときは夕方だった。食事をしたら又眠ってしまったのだ。原因は魔力欠乏である。このときばかりは俺の魔力の無さを呪うばかりだ。
俺は索敵の魔法を展開する。半径三キロに延長した。索敵の魔法は魔力を殆ど使わないため、便利に使っているのだが、今回は魔力を持って行かれた。龍筒一発分だ。魔力の少ない俺には苦しい量である。
「うん、小型の魔物はいそうだけど、ワイヴァーンクラスはいないね」
俺は魔法の鞄から弾を十発ポケットに移す。
腰からナイフを取り出すと、街道から森へ入った。森は木々で鬱蒼としている。深い森だ。ナイフで藪を払いながら進んで行く。
「昨日のワイヴァーンは何処からきたのかな? ワイヴァーンの生息地は南の山岳地帯だって聞くからね。群れからはぐれてここまで来たのかなって思うよね」
「確かに、あんなのが群れで来られたらね・・・」
俺達は小一時間でワイヴァーンを最初に見たであろう場所へ出た。木々が倒されて広場的な空間が出現していた。
「巣じゃないかしら」
広場の真ん中に、巨大な鳥の巣めいたものがあった。鳥と違うのは、材料が藁や枯れ草ではなく、太めの枝が使われてる点だろう。
「卵があるのかな?」
巣へ行こうとするヴェルヘルナーゼを押さえ、索敵の魔法を展開する。ワイヴァーンクラスの魔物はいない。
「よし、周囲に魔物はいない。いくか」
巣は人の背よりも高かった。二人でよじ登って巣に侵入したが、空だった。
「卵があるかと思ったけど、そうは上手くいかないわね。あなたの騎龍にしたかったのにね」
「まだ言っているの? ほら、お宝があるよ。鍋に錆びた剣、錆びた鎧・・・光り物が好きなのかな?」
「まって。鎧・・・あったわ。ギルド証が。持って帰りましょうか。鎧も持って帰ってあげるわ。ご遺族にとどけば良いけどね」
「剣も遺品じゃないかな? 鞘の装飾が凄いよ」
かなり立派な鞘であった。高価な品に違いない。
「ホントだね。失礼しますね・・・」
ヴェルヘルナーゼは登録証が入っている容器を開けてみる。
「グーリューク・ドルゲーフェ・・・姓があるから貴族かしらね」
巣の外には、一人の白骨死体があった。立派なレギンスを着けている。先ほどの鎧とおそろいのようだ。
「グーリュークさんね。一人で寂しかったでしょうけど、連れて帰ってあげるね。貴族だから、お家がわかるね。安らかに眠ってね」
俺はレギンスを脱がすと、毛布を一枚取りだし、丁重に包んだ。
「どうしようか? 帰ろうか?」
「そうね。グーリュークさんの素性がわかればワイヴァーンの出所がはっきりするわ」
俺達は巣を後にし、ギルドへ帰って行った。時間はお昼を既に廻っている。
「こんにちは。ユージーさん。ギルド長を呼びますね」
「おう。相変わらず早いな。何かわかったか」
「巣があるだけでした。あとはこの方、グーリューク・ドルゲーフュなる方の白骨遺体だけです。ご遺体と遺品の鎧と剣を回収してきました」
「グーリューク・ドルゲーフェ・・・南方の子爵家だな。南方から飛んできたのか・・・遺体を咥えてか・・・どう思う?」
「うーん、そう言うことはキーアキーラに聞いて欲しいかな・・・北にはワイヴァーンはいないから・・・」
「あ、すまん。ご遺体は多分、ドルゲーフェ家次男のはずだ。出来れば調査を兼ねてご遺体を届けて欲しい。男爵と相談してみてくれ。貴族であるユージーが持っていってくれると助かる」
「・・・わかりました。行きましょう」
「で、ワイヴァーンの査定だが、大きな鱗、魔石、翼の膜を除いて金貨百二十枚だ。討伐金は金貨十枚。今日の調査料は金貨二枚だ。いいか?」
俺は頷くと、金貨を受け取った。
「はい、ユージーさん。鱗と魔石、膜ですよ。皆さん垂涎の的ですね。凄い立派な鱗です。どうぞ」
俺はメーニアから鱗を受け取る。ホームベースより大きな鱗が三十枚以上有る。膜も柔らかくしなやかだった。大量にある。魔石は大きかった。魔道馬車に使ったグリフォンの魔石にも劣らない大きさだ。
俺は礼を言って魔法の鞄に収納する。
「あ、まて。お前さん方の新しいギルド証だ。古いのをよこせ。銀級に昇格だ。異例の速さだな」
俺は新しいギルド証を受け取った。銀級と記載されている。俺とヴェルヘルナーゼはギルドを出た。広場に行き、串肉と石榴を買って、食べながら休憩している。
休憩後、レングラン男爵の屋敷を訪れた。
「おう、お前らか。どうだった? ワイヴァーンだったと聞いたぞ?」
俺はレングラン男爵にワイヴァーン討伐の話をする。合わせて今日の調査でグーリューク・ドルゲーフュなる南方の貴族の白骨死体とギルド証が出てきた事を話す。
「なんと・・・グーリュークのやつ・・・まだ冒険者をしていたのかよ・・・」
「・・・お知り合いですか?」
「まあな・・・中小貴族の仲間なんだよ。遺骸を出してくれ・・・」
俺は毛布にくるまった遺骸と遺品をとりだしてテーブルの上に置いた。レングラン男爵は毛布を少し開く。
「骸骨になっちまったか。また酒を飲みたかったな、おい」
レングラン男爵は毛布で体を覆うと鎧を見る。
「確かにドルゲーフュ子爵家の鎧だ。棺を用意するから、明日来てくれ。手紙も書いておく。すまんが俺の名代として、グーリュークを故郷に帰してやってくれ。手間を掛けるが頼む」
「良いですよ。ワイヴァーンもその辺りじゃないかって話していたんで。調査もしてきます」
「街の名前はアルプーディア、十日で着く。頼んだぞ」




