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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第4章 商会の発足
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初仕事

第六十六話 初仕事


 「と、とんでも無かったわね」


 フローグはテーブルに座るとため息と共に弱音とも取れる感想を吐いた。


 リーク、フローヴ、フリンカの三人は安宿に帰ってきた。リークとフローヴは冒険者パーティ「退魔の誓い」の構成メンバーであったが、ルーガルの街で行われたゴブリン殲滅戦でリーダーを含む二名が死亡し、パーティが解消状態になっていたのだった。


 平均寿命が四十歳前後、冒険者の寿命は更に短く、三十代で亡くなるのも珍しくないので、二人は結婚し職を探していたのだった。職を探すと言いつつ、ルーディアの冒険者ギルドをうろうろしていたら、キーアキーラに声を掛けられたのだ。商会を設立するから来ないか、と。ついでにメイドも探していると。


 商会出身のリークは飛びついたのだが、リークのイメージしていた商会とは全く違っていた。


 「俺は薬草を売ったり、仕入れた魔動具を売ったり、お店を開くんだとばっかり思っていたよ。どうも冒険者が抜けないかな」


 「あら、間違いないじゃないの。薬草や魔道具が扱い品じゃないの?」


 「店売り商ではなくて、卸商だろうね。工房も兼ねる卸商だよ」


 「リークおじさん、何か違うの?」


 「フリンカ、農家が小麦を作るだろ。それをまず卸商が買い取るんだ。卸商はそのまま街で店を持って売る場合もあるんだが、普通はお店に売って、小麦が街で買えるようになるんだ。小さいお店にとって、国中を回って農家から小麦を仕入れることなんて出来ないからね。卸商は大店おおたなと言われることが多いんだ」


 「あれ? そうしたら私も含めて六人しかいないのに大店なの?」


 「あはは。キーアキーラさんの戦略なのか、ユージーさんの戦略なのかわからないけど世の中には極めて、珍しい品物を扱うお店があるんだよ。私達の商会がそれにあたるね。極めて珍しいから競争相手が居なく、高額で売れる。だから少人数でいいんだよ。感心したね」


 「流石リークは商人ね・・・私もやっとわかったわ・・・珍しい部類なのね。もう魔動馬車をロビーリーサさんが買っていたわよね」


 「原価は売値の三割だから、恐らく金貨七百枚の利益じゃないかな。俺とフローヴのお給料が年金貨百二十枚だから、多分今年の商いは要らないんじゃないかな? 今年は我々二人の仕事はユージーさんの考えに近づけるように努力をだな・・・」


 「あ、あなたは大丈夫そうねリーク。店長頑張ってね。私はロビーリーサさんから錬金術を習えばいいから」


 「お、おう。俺があの魔動馬車を売らないと駄目なんだな・・・しかし吃驚したな・・・ユージーさんはルーガルの美人二人を引き連れてやっかみもあったんだけど、治療魔法の使い手らしいって噂になっていたからな。狙っているパーティもあったが、キーアキーラさんが睨んでいたからね」


 「ウフフ。あなたはユージーさんに助けられていたわよね。ゴブリンの時」


 「俺も、死んだガエークもリューゾも、目の前のゴブリンを倒すのに夢中になっちゃって、他の人の声が聞こえなくなったからなぁ。二人には悪いけど、潮時だったんだろうな」


 「ねえねぇ、フローヴさん、私掃除をしていればいいかなって思ってたけど? 違うのかな?」


 「フリンカ、頑張ってね。お店を持たせて貰えそうじゃない? ユージーさんの料理ね、有名だったんだよ。冒険者は干し肉と硬いパンを食べるんだけど、キーアキーラさんのパーティは凄く良い匂いがしてね、美味しそうだったんだ。さっき食べたけど美味しかったわよね」


 「う、うん・・・」

 フリンカは力なく下を向いた。


 「で、しばらくどんな感じなのかしら? リークには流れがわかっているんでしょう?」


 「魔動馬車を売っていくのがメインになりそうだけど、魔動馬車はそうそう売れる物でもないと思うんだ。魔動馬車じゃない、衝撃を吸収する装置を付けた馬車の下だけを売るって言っていたけどね・・・確かに馬車を作ると馬車ギルドと喧嘩になりそうだから、良い考えだと思う」


 「成る程ね・・・あとは私達の住む所よね。フリンカは好み有るの?」


 「私? 二人に悪いから一人で住むよ」


 「駄目よフリンカ。女の子の一人暮らしなんか危ないわよ」


 「うん。わかった。よ、よろしくお願いします」


 「さ、寝るわよ。お休みね」


 三人は大部屋に戻ると、毛布で眠りに就いた。


 翌日、三人は商会に行く。いよいよ仕事に取りかかるので、三人は緊張した面持ちで商会の建物に入る。商会の建物は一階が事務所と食堂で、二階が幹部の居住スペースになっている。


 「あ、来たな。午前中はまず打ち合わせだ。みんな座れ。フリンカ、すまんが魔動竃でお茶を沸かしてくれないか」


 キーアキーラが奥の食堂を指差すと、リークとフローヴは席に座り、フリンカはケトルでお湯を沸かし始めた。


 「べ、便利ですね! 魔石の入った革の箱を下にセットするだけなんですね! 火を熾さなくてもいいなんて・・・」


 フリンカは不思議そうに魔動竃を見る。お湯が沸くと、皆にお茶を淹れた。


 「フリンカ、まあ座れ。ではみなさん、今日は我が商会に集まって頂いてありがとう。当面は魔動竃を売って、魔動馬車の開発を行うのが当面の仕事になるな。ええと、ヴェルヘルナーゼ、何か言いたいことってなんだ? いいぞ」


 「あ、いい? うちね、煉獄商会って名前が悪いと思うのよ。ちょっと恥ずかしいというか、ふざけているみたいで」


 「そうか? リークはどうだ?」


 「止めた方がいいと思いますよ」

 

 「そうか・・・じゃあどうする? ユージーは何か良い考えはないか?」


 「あ、そのうちキーアキーラ商会になるはずだから、余り考えなくても良いですよ。まあ、みんなの頭文字を取って、キーヴェルユー・リーフローフ商会でどうです? 俺としてはキーヴェルが呼びやすくて良いんじゃないかと」


 キーアキーラ、ヴェルヘルナーゼ、ユージー、リーク、フローヴ、フリンカの名前から取ってある。


 「ああ、いいな。決定しよう。いいか?」


 「ええと、私達の名前が入るのは変じゃないですか? 特に私はメイドですよ?」


 「そう言うな。発足メンバーなんだ。いいだろ」


 「は、はい・・・」

 流石にフリンカは反論を試みるが、キーアキーラに押し流されてしまった。


 「で、当面の仕事の進め方だが、まずはユージーだな」


 「そうですね。これから出来るであろうルーガルの薬草農場の独占権を貰うべく、べべルコさんの剣を二振り、レングラン男爵に献上します。その時にルーガルの木工職人に大型の、キャンピングタイプの架装をして貰うべく、交渉に赴きたいですね。それまでに図面を書きたいです。べべルコさんに話はしてますので、あとで行きましょう。大型タイプの出来上がりも見たいですし」


 「ふむ、あとで行くか。近くだしな。で、最重要課題なのはフリンカの服なのだが、私としてはフリフリのメイド服を希望する。オーダーしようと思うのだが、どうだ?」


 「ブッ」

 俺は思わず噴き出してしまった。


 「ユージー、馬鹿にできんぞ。冒険者の男どもはメイド服が大好きだからな。スカートの長さは膝上くらいが良いらしいぞ。以前私に言い寄ってきた冒険者が力説していたな。もちろんぶん殴ってやったがな」


 「どこで買うの? 売っているのかしら?」


 「オーダーだ。ヴェルヘルナーゼ、後で連れて行ってやってくれ」


 「わかったわ」


 「え? オーダーって? 私はそんな高い服は要らないですよ?」


 「ああ、別にフリンカの為ではないから気にするな。リークも店長らしい服をだな。あ、ユージーももう少しまともな服を着ろ。ヴェルヘルナーゼ、皆を連れて行って服を作れ。あと、何か話はあるか?」


 「ええとですね、店の看板とこの部屋と事務所に大きな石版が欲しいです。図面を書いたり、アイディアをまとめたりですね。あとは金庫かな?」


 俺は欲しい物を上げる。


 「石版と金庫か。リーク、頼めるか? あと必要そうな物があれば見繕ってくれ。これからはリークがお金の授受を行うから、よろしくな。あとは良いか?」


 「いいですか? 俺は風呂が欲しいです。さっぱりして気持が良いので風呂を作りましょう。あと、忘れてましたがレングラン男爵領では泥炭が取れるらしいんです。泥炭の香りを付けた、酒精の強い蒸溜した酒を造ろうかなと。男爵領の支援ですね。酒精の強い酒は売れますかね? ワインの三倍は強い酒ですね。少量で済むはずなので、持ち運びが良いはずなんですが」


 泥炭で造る酒、ウィスキーである。絶対に売れると思うのだが、どうだろう。


 「風呂? 王族が入る物だぞ?」


 「立派で無くても良いんですよ。木材でぱぱっとバスタブを作っちゃえばいいんです」


 「わかった。作るか。あれか? ユージーの古里は風呂が好きなのだな。じゃあ取りかかるか。しばらく、毎朝打ち合わせをしてから仕事に取りかかるから、そのつもりで。じゃあみんなよろしくな。ヴェルヘルナーゼとフローヴ、フリンカは服のオーダー。ついでに二人の服も適当に買ってこい。リークは石板と剣を頼む。ユージーは図面か? じゃあ今日もよろしく頼む。酒の件はまた今度話そう」


 皆、キーアキーラの指示で動いて行った。商会の始まりだった。俺は期待を胸に、羊皮紙にキャンピングタイプの魔動馬車のアイディアをまとめていった。

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