ルードの宿場
第四十三話 ルードの宿場
俺達は例によって幌馬車に乗っている。迷宮都市までの護衛を引き受けているからだ。迷宮都市とルーディアは荷の往来が沢山有り、護衛が沢山有るらしいが、単価は安めで、銀貨五枚が全報酬だ。ルードの村という宿場街があり、一泊する。一泊二日の旅である。
俺は一時間もしないうちに嫌になった。揺れは酷いし、尻が痛い。キーアキーラは眺めのいい馭者席で監視をするらしい。
キーアキーラは昨日の夜受け取った煉獄刀を腰に差してご満悦だった。キーアキーラの煉獄刀は白色の炎であるが、よく見ると虹色に変化する。余りの美しさに皆で驚いた位だ。俺が赤い炎の煉獄刀二振り、ヴェルヘルナーゼが青色、キーアキーラが白色虹色だ。これで煉獄騎士団の完成である。
「あのね・・・ユージー君にお礼をしなきゃって・・・貰いすぎなのよね・・・必殺の肉を抉る指輪と、煉獄刀・・・ああそうか、ファークエルも作って貰ったよね・・・」
「魔法薬を買ってくれたからいいよ」
俺は耐毒と耐病のアミュレットを作りながら話をしている。
「あ、魔力の使いすぎよ。三個目じゃない。君は二つしか魔力が持たないじゃない。ほら、特別に膝枕をしてあげる。私の膝枕は君だけの特別なのよ」
俺は目眩を感じつつ、毛布を三枚だして床に敷いた。ヴェルヘルナーゼは毛布の上に座り、俺は太ももに頭を乗せた。
毛布を引くと衝撃が減って、俺はずっと寝てしまった。
「ほら、起きて。ルードの村に着いたよ」
俺は体を伸ばしつつ起きる。時刻は昼過ぎだ。俺が降りると、馭者は村の広場で露店を開くようだ。村は宿が建ち並ぶ宿場街だった。というか、宿しかない。
「ルードの村から馬車で半日くらい。歩いて一日かな。ここは迷宮都市の入口なのよ。ほら、冒険者が多いでしょう。近隣の人は迷宮から出る物で暮らしているわ。魔物の素材も、金属も、肉までもね。よし、薬草を探しに行こう!」
村は屈強な男達で溢れていた。俺達は薬草を探しに、村外れの林に入っていった。林はなかなか薬草で溢れていた。俺はフールー草をどんどん摘んでいった。セージとオレガノを見つけたので、摘んでおく。根からも抜く。ルーガルに戻ったら植えるのだ。
セージとオレガノ、フールー草ことバジルでチキンに味を付けるのだ。
「さて、やりますよ。ちょうど小川もありますし」
「ユージー君、何を?」
「料理を作り溜めておきますよ。多分熱々のまま出てくると思うんですよ」
「成る程。やるか。私は鶏を捌く。ヴェルヘルナーゼは焚き火と、野菜を切って欲しい」
「りょ、料理でキーアキーラの指示が出るとは思わなかったわ・・・焚き火ね。任せて」
キーアキーラは十羽の鶏を次々に捌く。キーアキーラが薪を集めて火を起こす。俺はブールー草、セージとオレガノ、ニンニクを刻み、塩と小麦粉と一緒に大量の鶏肉に擦り込んでいく。
鍋を二つ並べ、鶏ガラスープを二つ一緒に取る。俺は油で鶏をどんどん揚げていく。周囲には鶏を揚げる音と良い匂いが響き渡る。
ヴェルヘルナーゼとキーアキーラは野菜を切り始めた。ざく切りの玉葱、人参、セロリ、ニンニクを鶏ガラと一緒に煮る。俺はチキンを揚げるのをキーアキーラに任せ、小麦粉とバター、牛乳で大量のホワイトソースを作る。
鶏ガラと、一緒に煮た野菜を捨てて玉葱、人参、キャベツ、鶏を入れて煮込む。煮えたらホワイトソースを入れて完成だ。鍋二つ作っておく。
チキンは山盛りになった。
「ユージー、全部揚がったぞ。シチューも旨そうだな」
「さ、晩ご飯ね! 食べましょう!」
「毎日同じ食事になるけどね。もう少し調味料があればと思うよ」
「え? 毎日でもいいよ? だって毎日塩と干し肉のスープと硬いパンだよ? ずっと美味しいよ・・・誰か見てるね」
ヴェルヘルナーゼの視線の先には、女三人の冒険者がいて、近づいて来ている。後ろから荷物を背負った男が付いてきた。
「ち、五月蠅いのが来たな。鶏を隠せ。ジーウェヴォール子爵家の余りどものカシマシ白鳥団の行き遅れどもだ。一番強いのは荷物持ちをしている家人のドリエウタだぞ」
「ちょっと! カシマシ白鳥団ってどういう事よ! キーアキーラ! さっきからあんた達はもの凄く良い匂いをさせているのよ! 分けなさいよ! オースルーだって食べたいわよね!」
キーアキーラと同じレンジャー風の金髪美人が俺達を凝視していた。目がキツイ。笑顔だったら美人なのに残念だ。背はキーアキーラに負けるが、胸は勝っているようだ。
「こいつ等偉そうなんだ。構うな。五月蠅いぞズーフィー」
キーアキーラは目を合わせないようにしているが、ズーフィーと呼ばれたレンジャーに立たされて向こうに連れて行かれた。
「ご、ごめんなさい。初めまして。モノルゲッテです。こちらはズーフィー様の妹、オースルー様。あとは荷物持ちのドリエウタ様です」
「あ、どうも。食べます? チキン一つとシチュー一杯で大銅貨五枚ですね」
俺は二十倍近い値段をふっかけた。チキンには薬草を塗してあるために高価なのだ。
「食べる。銀貨二枚でドリエウタだけ二人前で。姉の分は要らない」
俺はオースルーと紹介のあった小柄な女神官から銀貨を二枚貰う。三人にチキンとシチューを配る。
「すみません。うわ、美味しそうだ。森でこんなに美味しそうな料理が食べれるなんて・・・」
唯一の男性、ドリエウタはチキンをモリモリと食べ始める。
「美味しいですね、オースルー様」
「モノルゲッテ、おいしい。ドリエウタはどう」
「美味しいです、オースルー様。ズーフィー様は要らないのでしょうか?」
「姉は放っておく」
一方、キーアキーラはズーフィーに引っ張られて二人で話をしていた。
「ちょっと、あの可愛い子は誰よ? 私によこしなさい」
「可愛い子? ヴェルヘルナーゼか? お前は女好きだったか」
「違うわ! あの男の子よ! さらさらとした銀髪! 物憂げで不思議な目! 華奢な体! もう堪らないわ! あんな可愛い子を囲ったなんて聞いてなかったわ! 羨ましいわ!」
ズーフィーは鼻を押さえる。鼻血だった。
「おい、興奮しすぎだ。ユージーか。しかも料理の腕は絶品だ。旨そうだろ」
「け、決闘よ! あの子を賭けて決闘よ!」
「意味がわからないぞ。お前は相変わらず頭が残念だな」
「じ、じゃ共有財産で。お友達でもいいから!」
食べ終わった三人は、食器を小川で洗ってくれた。洗ったのはドリエウタであった。
「あ、ごちそうさまです。迷宮ですよね? 迷宮であったらご馳走してくださいよ」
俺とドリエウタは握手をすると、ズーフィーを引っ張って帰って行った。
「わ、私の鶏肉はないのですか! 無いのですかぁぁぁ!」
絶叫が森に響き渡るが、ズーフィーは妹のオースルーに引っ張られて森を出て行った。
「すまんな。知り合いなんだ。彼奴等は貴族だから基本は無視だぞ。肉体関係になったら飛ぶのはユージーの首だぞ」
「き、厳しいですね」
「そうだぞ。貴族にとって平民など塵と変わらないからな。特に彼奴等の父親、ジーウェヴォール子爵はそういう方だ。レングラン男爵のミカファとは全く違うから注意な」
「貴族なんて冒険者をしないで欲しいですよね・・・命のやりとりをするから刹那で生きるでしょうし」
「貰い手がなかったんだ。付き合わされているモノルゲッテが良い迷惑だ。子供も小さいはずなんだがな。寄親の言うことには逆らえなかったんだろ」
「そうですか・・・」
「妹の方は荷物持ちの男に好意を向けているが、あいつも金級で妻子持ちだからな。なかなかカオスなパーティだろ?」
「なんか聞こえたけどユージー君を欲しがっていたわね。共有とか頭おかしいんじゃないの? 感じ悪いわ!」
「金級だが頭が悪いからな。迷宮で見かけても声を掛けるなよ。実力派なんだがな・・・」
「わかったわ」
俺達は後片付けをして宿に向かった。宿は自前だった。
簡単で申し訳無いですが地図です。
エルフの森へ
|街道
| 森 森
ルーディア| ルード村 迷宮都市ベーフディア
ーーーーー◎ーーー○ーーーー○
森 森|森 オークの森
ゴブリン森 森 | 森 森
森 森|森 森
川|
○ ルーガル




