表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第3章 迷宮都市
42/217

煉獄刀

第四十二話 煉獄刀


 鍛冶屋から出て、俺はヴェルヘルナーゼに日本刀を手渡した。


 「ヴェルヘルナーゼは普通の剣がないよね。これを使って」

 「い、いいの?」


 俺は頷く。


 「あ、ありがとう」

 ヴェルヘルナーゼはすらりと抜く。刀身は月夜に照らされ、美しく輝いた。


 「綺麗」

 ヴェルヘルナーゼは鞘に納めると、にっこりと笑った。俺はその笑顔で嬉しくなった。


 「わ、私のは無いのか?」

 キーアキーラが泣きそうな顔をしている。


 「数日後に出来たらお渡ししますよ」

 「本当だな? とりあえず見せろ」

 キーアキーラは俺の手から日本刀を奪うと、抜いて月夜に照らす。一歩踏み込んで刀が空を切った。


 「ちょっと短いな。私の剣より細いのか。成る程、剣を合わせるのを嫌うユージーにはいいな」


 俺は刀を返して貰うと、腰を落とし、鯉口を切った状態で構える。そのまますっと抜く。刀は鞘で滑り、回転モーメントが最小の状態で走って行く。居合いである。


 回転モーメントというのは物体が円運動するときのエネルギーの事だ。重量と回転半径の積になっており、長いものを振り回せば振り回すほど大きなエネルギー、途轍もない腕力が必要となる。


 居合いは鞘方向、回転運動ゼロで抜くため、モーメントが極小になり、力が余り必要ではない。速いのには理由がある。


 「速いわよ・・・煉獄斬りね。これは煉獄の剣よ。煉獄の剣を持つ者が煉獄騎士よ」

 「え? 止めてよ。居合いという技だよ」

 煉獄騎士団が俺達のパーティー名だ。


 「ね、魔石を仕込んで振ったら赤い炎が出ないかしら。ね、格好いいと思わない? よし、ユージー君、付与しなさいよ」


 ヴェルヘルナーゼは俺の手を引っ張って鍛冶屋に戻る。


 「おう。ユージーは恐ろしく速い使い手だな。で、どうした?」

 ドワーフの鍛冶、べべルコはお茶を飲んでいた。


 「べべルコさん、柄に魔石が入る様になりませんか?」

 ヴェルヘルナーゼの言葉に、べべルコは俺をちらりと見る。


 「かまわんが・・・どれ」

 べべルコは刀の柄を分解すると、柄をくり抜き始めた。

 ヴェルヘルナーゼが魔力薬をくれたので半分飲み、魔力を俺色に染め直す。


 刀の茎に塗布してある銀に祈りを込める。振ったら赤く、炎の様なエフェクトを付与。ついでにゴースト類も斬れるよう付与。魔力は柄に仕込まれた魔石から貰う。三点を願った。俺が付与を終えると、べべルコもくりぬき終えた。


 べべルコは刀を組み、柄の尻に開いた穴から魔石を入れる。動かない様に布を詰め、革で魔石が出ないように巻いた。


 「出来たぞ。嬢ちゃんの持っている刀もよこせ」

 俺は軽く刀を振った。剣は炎を噴き出し、残像を残しつつ、炎は消えた。全く熱くない。


 「す、凄いわ。魔石と才能の無駄遣いここに極まれりって感じね。うちは青い炎がいいな」

 「か、格好いい・・・ユージーは龍の鎧に龍の炎の刀。あとは騎乗用の龍をどう確保するかなだな」


 ヴェルヘルナーゼは自前の魔石を渡していた。俺は残りの魔力薬を飲み、ヴェルヘルナーゼの刀に魔力を付与する。二振りの刀が出来上がると俺達は礼を言って鍛冶場を後にした。


 「煉獄斬り!」

 ヴェルヘルナーゼも俺の真似をして居合いを行う。刀は青い炎を発し、目に残像を残す。


 「凄い。青く燃えたよ・・・」

 「ゴースト類も斬れるように願っておいた。斬れるといいね」


 「わ、私の煉獄刀は無いのか・・・そんな・・・」

 「何日か待って下さいよ。じゃ帰りましょう」

 俺達は刀、煉獄の剣改め煉獄刀を眺めながら夕食を食べている。


 「明日は休んで、夕刻に鍛冶場に行ってだな・・・どうする? 予定有るか?」

 キーアキーラが聞いて来る。


 「そうね。ユージー君の鎧、どうやらルーディールーシュが使っていた鎧らしいのよ。でも新しすぎるから、もっと新しい時代の物だと思うのだけどね」


 「おお?! ヴェルヘルナーゼの祖先だったか。じゃあ隣町の迷宮になにかあるかもな。行くか。明日は潜る準備をするか」


 「その前にロビーリーサさんの所に寄っていきます」

 「待って! その前にね」


 「ん? なんだ?」

 ヴェルヘルナーゼの声に、キーアキーラのパンを持つ手が止まる。


 「煉獄の兜と煉獄の面頬めんぽうが必要だと思うの」

 「要らないよ」


 「ああ。必須だな。迷宮都市には防具屋もある。龍の素材を持ち込んで作って貰うか・・・それより問題はユージーの騎龍をどうするかだ」


 キーアキーラは頷きながらパンを囓る。


 「乗りませんって」

 「本当ね・・・で龍に乗るなら長槍が必要よね」


 「要りませんって」

 「ああ。素材をどうするか、考えないとな。龍を刺す槍でないとな。よし、じゃあ煉獄騎士ユージー、頑張ろうな」


 「え、ええ・・・」

 俺は符に落ちないまま、迷宮都市に行くことに決まった。翌日、俺達はロビーリーサの元を訪れた。ロビーリーサは俺とヴェルヘルナーゼの腰の煉獄刀に釘付けだった。俺が血行の良くなる薬に魔力を付与している間、楽しそうに俺の煉獄刀を振り回していた。


 「金貨五百で買うわ」

 「お金に困ったら売ります・・・」


 煉獄刀を欲しがったロビーリーサをなだめ、魔法回復薬、魔法傷薬、魔法解毒薬、魔力薬を二十本づつ購入した。お金はヴェルヘルナーゼとキーアキーラが持ってくれた。金貨三十枚だ。


 残念がるロビーリーサを置いて街に出る。


 「迷宮都市だから、やっぱり食料よね。持っていかないとね・・・オークは食べたくないし」

 「え? 食べ物が無いの?」


 「そうよ。魔物の肉しかないわ。折角魔法の鞄があるのだから買い込むわよ」

 小麦、小麦粉、硬いパン、腸詰め、チーズ、バター、オリーブオイル、鶏、玉葱、キャベツ、セロリ、人参、大蒜、塩、エール、乾燥石榴、オレンジ、乾燥杏、ワイン、牛乳・・・店にあるもの片っ端から購入した。


 エールとワインは大樽で買った。鶏などは店にあった二十羽全て買った。鍋も五個ほど購入した。調理しておいて魔法の鞄に収納しておくのだ。


 「テーブルと椅子、竃が欲しいですね。あと石鹸も。毛布も買いましょう」

 「テーブル? いるか?」


 キーアキーラの反応は鈍いが、木製のベンチを三個買った。背もたれの無い、キャンプで使うコット、簡易ベッドのサイズだ。椅子とテーブルとベッドを兼ねている。


 竃は道ばたの石を数個拾った。毛布は一人三枚づつ購入した。あとは食器やまな板を購入。


 テントは冒険者ギルドで購入した。この世界のテントは、当たり前だが、アウトドア素材、薄いナイロンに表面処理を施したシルナイロンとか無いので、重い綿で出来ている。魔法の鞄が無かったら諦めていただろう。


 これで、キャンプの準備が整った。楽しく野営がしたい所感だ。

今回から新章です。


2020.4.19 日間ファンタジーBEST300にて、262位にランクインしました。

嬉しいです!

今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ