表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第2章 冒険の開始
41/217

日本刀と龍筒 その五

第四十一話 日本刀と龍筒 その五


 翌日、俺達はオーク狩りを受けた。受けたというか、常時依頼になっている。


 ルーディアの冒険者ギルドではギルドマスターから嫌みを言われた。金級冒険者のキークが子供もいる癖にキーアキーラに手を出そうとして、三階級降格を喰らった件があるからだ。


 俺達三人はルーディアの南に広がる森に来ている。ルーディは名物がオーク焼きという、極めてよろしくない物を食べる風習があるのだが、裏返すと人口の割に作物が少なく、かつオークが存在すると言うことだ。売ると金貨一枚らしいのだが、俺は売らない。狩るだけである。


 「オークだが、棍棒や槍、剣等を持ってブン回してくる。君は無論、私でも力は敵わない。オークの棍棒を受けたら私の剣だと曲がってしまうだろうな。オーク狩りで生き残った者が冒険者を続ける事になる。体の小さい冒険者はオークの棍棒を受けきらないで撲殺されるんだ。魔法使いも一緒で、森で火の魔法を使えないから苦戦する。まごまごしているうちに殺される。オーク狩りが難しいのはこの二点だろうな。頭が猪に似ているので、人を斬るより抵抗が少ないぞ」


 「人・・・いつかは盗賊を斬らないと駄目なんですよね・・・」

 「君は逃げられないな。君には大型の魔物狩りは無理だ。錬金術師として生きるので無ければ、護衛特化型の冒険者だろうな。一般論ではな。だがヴェルヘルナーゼもいるし、何とかなるだろ」


 「・・・最近は盗賊が増えているらしいわ。ちゃんと手伝うから安心してね。オークは君の剣術があれば問題無いと思うよ」

 俺は頷くと剣を抜き、周囲に魔力を飛ばして索敵を行う。


 「前方に五匹。距離二百ダール!」

   ※一ダール=1.6m


 「待て。それは冒険者かもな。前衛と後衛で列を作ってないか? オークは作らないぞ?」

 確かに前三人、後ろ二人で綺麗な隊列だった。


 「しっ」

 キーアキーラが身を屈めて一方を見る。俺の目の前にキーアキーラのお尻が・・・今日もキーアキーラは上半身が革の鎧、下半身は体にピッタリとした革パンツだ。


 「もう!」

 ヴェルヘルナーゼは俺の頬を叩いてくる。


 「仕方ないだろ・・・」

 キーアキーラは俺が尻好きなのを知っていてわざとお尻を向けてくる。


 「うるさいぞ」

 俺は索敵を行うと、森の中を歩く三体を見つけた。距離は三百。よく見ると三体の大柄な姿が見える。


 「来たわね。一人一体よ。大丈夫?」

 「ヴェルヘルナーゼは魔剣か? 火は大丈夫か?」


 「大丈夫。今回は風だけでやってみる」

 ヴェルヘルナーゼの魔剣は火の精霊と風の精霊から生まれた大精霊が本体である。風だけで魔剣を発現させるのだろう。


 「距離百。来るぞ。抜剣」

 俺とキーアキーラは剣を構える。ヴェルヘルナーゼは剣の柄だけを構えた。違う。微妙に剣が見える。透明な風の剣だ。


 足下は雑草が生え、足下が悪い。距離が五十ダールに迫ったところで俺達は一斉に姿を現した。


 「ウガガガガガ!」

 俺はオークの姿に驚いた。緑色の隆々とした筋肉。鎧は着ていない。上半身裸である。体の表面には無数のイボとというか、棘が生えている。頭は大きな鼻が特徴だ。牙が生えている。確かに猪に見えなくはない。


 キーアキーラはオークの棍棒を躱すと、喉元に一撃で突きを決める。オークは喉から血を吹き出して絶命する。


 ヴェルヘルナーゼはオークが棍棒を振り下ろす前に胴を横薙ぎした。大きく左足を踏み出し、綺麗な割れの形から綺麗なレベルスイングを放つ。実際は剣が見えないので、斬ったのだろうと思われた。オークの皮膚がバックリと裂けた。


 「グアアアアア!」

 オークは叫び声を上げる。


 ヴェルヘルナーゼは右足を大きく踏み込み、突きを入れる。剣にしてはかなり遠い間合いであるが、魔龍剣ファークエルは長さが自由自在だ。ヴェルヘルナーゼはオークの心臓目がけて突きを入れた。見えない剣が皮膚を割り、大量の血を吹き出させた。


 俺は相手のオークを見る。俺の相手は革の鎧を着て、兜を被っている。重そうな大剣を持ち、俺を睨み付けていた。


 「ゾーン」


 俺は小さく呟く。


 オークが大剣を振り上げた。魔剣のおかげでオークの動きがスローモーションの様に見える。大剣を振り上げて止まった瞬間。俺はキーアキーラと同じく、右足を踏み込んで喉に突きを入れた。


 「ウガガッガ!」

 オークは体を反らし、突きをかわそうと試みた。絶対の自信の突きが喉の中央を外れ、喉の右側を切り裂いた。


 俺は勢いを使ってオークの向こう側に出た。俺は右足で体重を受け止めて反転すると、体の回転を使って大きく斬りつけた。


 俺の背と短剣の長さでは首にとどかない。俺は右手に斬りつけた。短剣は腕の骨に食い込み、短剣が外れなくなる。


 「ち!」

 俺は短剣を諦め、予備のナイフを抜く。ナイフは二十センチの長さだ。俺は脂汗を流す。オークは大剣を諦め、俺を掴もうと左手を伸ばしてくる。俺は左後ろにステップで逃げる。


 オークは右側面を俺に向けた。俺はナイフを革の鎧の隙間に突き刺した。俺はナイフを抜くのを諦め、予備のナイフを抜く。戦闘用のナイフは二本持ち歩いている。


 「あとナイフ一本・・・」

 俺はオークとの間合いを計っていたら、ヴェルヘルナーゼが透明な剣でオークの首を飛ばした。オークは血を吹き出して倒れた。


 「済まない! ユージーに将軍ジェネラルオークを手会わせてしまった! 大丈夫か!」

 キーアキーラが慌てて近寄ってくる。


 「大丈夫です。でも危なかった・・・ギルドマスターの言うとおりナイフを二本予備で持っていなかったら死んでました・・・」

 俺は右手に食い込んだ短剣と、胴のナイフを回収する。


 「しかし、将軍ジェネラルオークか・・・こいつは普通のオークとは動きが違っていて、強いんだ。よく死ななかったな。大体の冒険者は剣を受けきれずに殺されるから。仕方ない。ユージー、ギルドに持っていくぞ。頼めるか?」


 「将軍?」

 「魔物は進化するんだ。こいつは進化して人間並みの知能を手に入れた特殊個体だ。オークの弱点は頭が悪いことだが、こいつは頭が良いから手強い。最低でも銀級が必要だ」


 俺の前には首の無い遺体が横たわっていた。どうしても、遺体は人間としか見えなかった。俺は目を逸らしながらオークの遺体を三体、収納した。


 「ユージー君、大丈夫? 駄目そうね。戻りましょ。ギルドに行くわよ」

 「大丈夫だよ」


 「顔が青いわ。人型を斬るとクるっていっているでしょう? 君はまだ慣れていないんだから。もういいから帰るわよ」


 俺達はギルドに行くと、相変わらず視線が突き刺さる。美人二人を連れた俺に嫉妬の視線だ。


 「討伐だ。将軍ジェネラルが出た。解体場に降ろすぞ」

 「えええ?! ジェネラルオークですか? はい! 解体場へお願いします!」

 フワフワした髪の受付嬢が声を上げると、ギルドマスターが飛んできた。


 「ジェネラルか? 本当か?」

 「見て貰えばわかるわよ」

 俺達三人と受付嬢、ギルドマスターで隣の建物に移動する。血なまぐさい場所だった。


 「ここに降ろせ。何処にある? 三人で運んで来たのか?」

 俺は魔法の鞄からオーク三体を取り出した。


 「驚いた。鞄持ちか・・・く、確かに将軍だ。クソ。お前は悪い知らせばかりだ・・・今から魔石の有無を確認する。待っててくれ」

 俺達はギルドに併設されている酒場でエールとチーズ、スープを頼んだ。


 俺はエールを一気に飲み干した。


 「んー。顔が青いわね。ちょっと辛いでしょ。ほら、スープを食べて。塩辛いけどね」

 「うん」

 俺は目の前の遺骸が目から離れず、虚ろな返事をしてしまう。


 「キーアキーラさん! 終わりました。受付へ来て下さい!」

 受付嬢に呼ばれて、俺達は受付に移動する。


 「将軍オーク、素材は肉になります。金貨四枚。魔石が出て来ました。金貨二枚で買い取ります。他のオークは肉用に金貨二枚で買い取ります。いいですか?」


 「あ、魔石は下さい」

 受付嬢は驚いた顔をしたが、俺に赤く輝く石を手渡してくれた。見た目は赤い水晶だ。


 「かなり大きいですよ。どうぞ。いつでも買い取りますのでおっしゃって下さい。それでは金貨六枚です。特別に情報量としてギルドから金貨一枚を贈呈します」


 俺達は金貨を受け取り、ギルドを後にした。俺が金貨五枚、二人は一枚づつだ。


 宿に戻り、湯を貰って体を拭った。俺は何もする気が起きず、ベッドに横になる。目を閉じると、首を飛ばされて血を吹き出すオークの姿が浮かんでくる。


 まずいと思った。精神のバランスが狂っている。深呼吸をするも、動悸を押さえることは出来なかった。


 「ユージー君、ちょっといいかな?」

 ヴェルヘルナーゼが入って来た。


 「大丈夫? じゃ、なさそうね・・・仕方ないわ。ほら。君の好きな膝枕だよ」

 俺は良い香りのするヴェルヘルナーゼの太ももに頭を乗せる。因みに膝枕をして貰うとヴェルヘルナーゼの顔が見えなかった。胸が邪魔をするからだ。さわさわとヴェルヘルナーゼが俺の顔を触る。昼頃だったのだが、俺はそのまま寝てしまった。


 起きたのは夕刻だった。


 「起きた? うん、大丈夫そうね」

 起きるとヴェルヘルナーゼと二人でベッドに横になっていた。ヴェルヘルナーゼは俺の顔を触ったり、おでこをくっつけたりしている。顔が近くてどきどきする。


 俺が起きたら俺とヴェルヘルナーゼ、キーアキーラでドワーフの鍛冶屋を訪れた。


 「二振り出来てるぞ」

 ドワーフの鍛冶屋、べべルコは白木の鞘に収まった日本刀を差し出した。俺は抜いてみる。小乱れの刃文が入った日本刀があった。俺は思わずニンマリしてしまう。


 「済みませんけど、茎の所に銀貨を溶かして貰えませんか? 魔力を付与します」

 俺は銀貨を取り出す。


 「お! 呪いか? わかった!」

 べべルコは柄を外し、作業場へ持っていくと、るつぼで銀貨を溶かした。二振りの日本刀の茎、柄になる部位に銀を溶かして薄くのばした。


 「これでいいか? 残りの二本もやっておくぞ」

 俺は頷くと、目を閉じて茎の銀に魔力を付与する。集中力を高める効果を付与。ゾーンと呟くと、集中力を一気に高める。もう一振りにも付与する。


 「お願いします」

 「うむ。もう終わったのか。後の二振りはやっておくから、好きなときに取りに来い」


 「あと、これを真鍮で五百個くらい欲しいんです。寸法はピッタリこれに合わせて下さい」

 俺はミスリルの弾丸をテーブルに置く。


 「なんじゃ? ミスリルか? 五百個か・・・一個小銅貨五枚じゃ。金貨二枚と銀貨五枚じゃけど今回はサービスしてやる。金貨五十枚受け取って四振りしか出来なかったからな。少し時間をくれ。弟子にやらせるから、見本はもう少し無いか?」


 「良いですよ」

 俺はミスリルの弾丸を四個ほど置いた。

今回で刀編は終わりです。

評価も頂きました。ありがとうございます。

よろしければ評価とブックマークをお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ