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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第1章 初めての転生
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初めての魔法

2020/06/14 主人公とヒロインの出会いですが、書き直しています。

       違和感があろうかと思いますが、ひとえにアマチュア作家の私の技量不足でございますので、

       ご容赦の程をお願いいたします。

第四話 初めての魔法


 俺は時間があるので、ぶらぶらと街を歩いてみる。大通りを歩き、ギルドや店がある区域を抜けて、大きなお屋敷のある区域を抜けたら、街が無くなった。


 うん、余り大きい街ではない。宿の回りが酒場がある区域か。いかがわしい店は無いのかな? 遊郭とかさ・・・実際は病気が怖いから行かないけどね。梅毒だ。恐らく、治らない。吉原でも梅毒は当たり前のように存在していた。


 梅毒は治らない。梅毒に罹患したら体重が落ち、色白になり、子が出来にくく成る。遊女として、一人前になったという感覚らしい。そこから梅毒は進行していく。とうぜん客も感染する。感染したら死ぬしかない。


 安心して欲しい。いかがわしい店は全く無い。残念な感じもする。恐らく、酒場の飯盛り女を買うことが出来ると思うが諦めよう。梅毒が怖いしね。


 俺はお店のある区域に戻ると、木工屋さんに入った。


 「へい、らっしゃい。ゆっくり見ていってくんな」

 俺は店に飾られている木製の食器を見る。皿、椀、カップ。トングもある。俺は目当ての物を見つける。乳鉢だ。スパイスを磨り潰す鉢と、棒がセットになっている。棒でスパイスを磨り潰すのだ。


 俺は銀貨一枚を払って乳鉢を購入した。あと、お願いしておがくずをあるだけ貰った。持っていた革袋に一杯詰めて貰った。


 俺は宿に戻ると、昨日乾燥させた除虫菊を乳鉢でゴリゴリと磨り潰し、粉にした。おがくずと混ぜて、大銅貨の上でお灸みたいな円錐を作る。


 これを燃やせば、蚊取り線香になるはずだ。火を付けてみよう。


 火か。困ったぞ。恐らく、ガスライターなんて無いから、火打ち石で着火だろう。出来るわけがない。そうだ。俺には魔法がある。魔法で着火だ。


 俺は小一時間、指先から火よ出ろと願い続けた。「火よ出ろ」「火の妖精よ、我の願いを」などと適当な言葉も紡いだが無駄だった。


 魔法が使えない。理由はわかる。全く習っていないからだ。


 そもそも、魔法で燃えろって、何を燃やすのだ? 魔力が燃えるのか? それとも魔力がLPGにでも変わって燃えるのか?


 だめだ、心の奥底に魔法で火を放つ、という行為にもの凄く疑問を持っている。これでは火は付かないだろう。


 俺は円錐の頂点の温度を上げて煙を出す事をイメージした。おがくずが煙を出せば、着火出来る。火が燃える、という現象は、熱によって木材の揮発成分が蒸発して煙、可燃性の木質ガスに変換されて着火する現象である。


 要はおがくずの温度を上げて煙が出たら、ライターのカチっとする電気スパークみたいな奴で着火すればいいのである。


 体の中で、何かが動いた。


 動いた物は指先から出でて、おがくずの温度を上げた。煙が出た。電気スパークをイメージした。一瞬、火花が飛んだ気がした・・・


 火がついた! 除虫菊とおがくずを混ぜて作った簡易的な香が燃え始めたのだ。多少目がチカチカするような刺激的な香りが部屋の中に充満した。急に魔法を使った為であろう。体のなかの何かが欠乏し、俺は立っていることが出来ず、ベッドに倒れ込んで寝てしまった。


 夕刻、目が覚めた。床を見ると、小さなブヨや蚊が死んでいる。どうやら成功の様だ。これで虫に悩まされずに済む。


 「ヨシ!」

 俺は思わず叫んでしまった。ドン、と隣の壁が鳴った。静かにせねば。


 蚊取り線香も作れたし、魔法の発動も成功したようだ。俺は目を閉じ、大きく息を吸った。蚊取り線香に火を付けた時、体に感じた、何かが体の中を巡る感触。俺は再現しようと、体の中の何かを探しているが、全くわからない。


 俺は香を一撮みし、人差し指を当てて火を付けようと考えた。おがくずの温度を上げていく・・・何かが体の中で動いた。俺は香を燃やすのを止め、小さな小さな動きを見失わないように、動かし続けた。


 感覚的には糸。短い糸が俺の体の中を動いている。糸は俺の胃を通り、小腸、大腸へと動いて行く。血管に入り、血流で心臓に入る。糸は血流にのって体のあちこちへと移動する。俺は精神を研ぎ澄まし、糸、恐らく魔力だと思われる何かの動きを探り続けた。


 俺は小鳥の鳴き声で目を開けた。既に早朝だった。革鎧を着たまま、一夜を過ごしたようだ。ぐっすり眠ったよりスッキリしている。俺は起きると森へ向かった。


 今日も稼ごうと森に入ったのは良いが、山菜が見あたらない。既に時期が過ぎてしまったのか、広範囲を歩き回ったが昨日の半分の収穫だった。当然、希少な行者ニンニク、ヴァヴァゴ草は見つからなかった。


 俺は肩を落としてギルドに向かう。城壁では、門を守る騎士が元気出せよと言ってくれた。


 俺は冒険者ギルドに向かう。お昼時のギルドは人が少ない。


 「こんにちは、ユージーさん。元気有りませんね」

 メーニヤが笑顔で迎えてくれた。今日は胸元が開いた服を着ている。


 「もう、薬草が採れる時期が終わったようなんです」

 俺は薬草を取り出す。昨日の半分しかない。


 「あら、ユージーさんにしては少ないですね。ちょっと待って下さいね」

 メーニヤは俺の前で前屈みになる。胸の谷間が露わになり、一瞬だけ全て見えた。ヤバイ、凄くムラムラする。


 「はい、今日は銀貨五枚と大銅貨三枚です。鉛級の稼ぎとしては凄いわよ」

 メーニヤは俺の掌を両手で包むように銀貨を渡してくれた。俺の手に、メーニヤの左薬指の指輪が当たる。指輪? ああ、そうか・・・


 「メーニヤさん結婚されているんですね・・・」

 「あら? 私の事誘おうとしていたの? 悪い子ね。子供もいるのよ。大きくなったらユージー君のお嫁にしてもいいわよ」


 「え? 子供がいるんですか?」

 この世界の初恋、主としておっぱいに惚れた・・・はここに散った。くそ。


 メーニヤはクスリと笑った。悔しいが、笑顔は俺のドストライクだった。幸せな家庭を築いて、子を沢山産んでくれ。


 「ウフフ。可愛いのよ。でも虫に弱いのよ」


 「ああ、そうそう。例の虫除けが出来ましたよ。少しおわけしますね。こうやって円錐にして火を付けてくれれば、虫は死にますから。ブヨや蚊は死にましたよ」


 俺は小さな皮袋を取り出し、銅貨の上で円錐形を作った。


 「良いの? ありがとう! 早速使ってみるわ!」

 メーニヤは左右を確認すると、革袋を懐に入れた。俺は冒険者ギルドを出ると、宿に向かって歩いて行った。


 俺は乾燥石榴を革袋一杯に購入し、広場に座った。石榴を食べながら体の中の魔力の糸を巡らせる。石榴を食べ終えると、目を閉じて魔力の糸を感じる。魔力の糸は、体の不調も直してくれる。張っていた足が楽になった。糸は昨日よりも長くなり、三十センチになった。俺は糸を操作して人指し指に糸を持って行こうとしたが、なかなか上手くいかない。小一時間悪戦してようやく人差し指にたどりつく。


 人指し指から糸を出して、この魔力で火を付ける・・・何かに触るな・・・燃やしてしまえ・・・燃えろ!


 「熱い! あちあちあち! 燃えている! 燃えているわ! キャー! 助けて!」

 「えええ!?」

 若い女の子の声で目を開けると、女の子のローブがメラメラと燃えている。


 「ええ? 燃えている? 消さないと!」

 俺は手でローブを叩き、火を消した。


 「熱い、熱い! 痛い!」

 不味い、火傷だ! 俺は女の子の燃えていた場所、太ももに手を差し込んで魔力を流した。火傷が治るよう、明確にイメージする。


 体の中から、何十本もの魔力の糸が掌に向かい、女の子の太ももに流れ込んだ。


 「ぎゃー! 何処に手を入れているのよ! え? ちょっと、何気絶してんのよ! ちょっと!」

 俺は顎に美しい右フックを食らい、意識は完全に途切れた。フックには精霊と思われる透明な大きな鳥が宿っていた。フックと精霊が、無防備なユージーの顎を直撃した。



 「ね、この子はどうですか! ギルドマスター」

 ユージーをノックアウトした女の子は泣きじゃくりながら、ギルドマスターと呼ばれた男に懇願する。先日、ユージーに装備一式を売った男だった。女の子は必死になってユージーを冒険者ギルドにまで運び、助けを請うたのだったが、現実は甘くはなかった。


 ギルドマスターは頭を振った。


 「オークやオーガに殴られた奴がこうなる。こうなると助からん。助かっても、体は動かないし、言葉はもう失っているし、飯も自分では食えん。冒険者は自由だ。彼にも死ぬ自由がある。メーニヤ、立ち会いの騎士を。俺が楽にしてやる」


 「どうしてですか! まだ生きています! 生きていますよ! そもそもうちはこいつに突然魔法を使われたんです! うちは被害者ですよ! 何回も説明したじゃないですか!」


 ユージーを必死に運んで来た女の子は必死に訴える。


 「この新入りには身寄りがいない。俺達に出来るのは貧民街にでも放り込むだけだ。身ぐるみ剥がされて、殺されて終わりだ。誰かが一生面倒をみるのであれば良いのだがな。飯を食わせて、クソを出させて、小便を出させてだ。少なくてもお前には出来ないだろう。死罪か鉱山送りか、恐らく売られて男どもの相手をさせられるのだろう。気高いお前に耐えられるのか。希望があればこの部屋は貸してやる。骨はエルフの森に送ってやる。お前の言うこと、新入りが魔法を使ってお前を燃やし、咄嗟的に手が出たという話が正しいとすると、新入りにも非が無い訳じゃないが、既に罰は受けているし、これから命を無くす罰も受ける。新入りの罪は無い物とみなすのが通例だ。裁かれないし、罪を犯したお前の証言は無視されるのも通例だ。魔法を使ったって、火の玉や魔法の矢を撃ち込んだ訳ではないだろうし、本当に魔法を新入りが使ったのか、疑いもある。新入りは既に死んだと同じだ。間違って殺したとかで罪は無くならない。そういうことだ」

 

 ユージーは頭部、脳に極めて強い衝撃を受け、脳挫傷と頸椎損傷を発生させてしまっている。ユージーは人体でもっとも弱い場所、顎を撃ち抜かれている。脳は鍛えることは出来なく、人体の弱点部位の一つだ。顎を打たれると脳が揺れ、脳震盪を起こす。酷いときは脳挫傷になり、後遺症が残る。ユージーも後遺症がかなり残ると思われると、ギルドマスターは判断した。残念ながら、こちらの 世界では生きていくことが難しいと判断されたのだ。命の価値は、前の世界より遙かに軽いのだ。


 「大丈夫ですから! この子は絶対目覚めますから! 今だって魔力が巡っています!」


 「わかった。数日様子を見ろ。お前は逃げられんぞ。心の準備をしておけ。大丈夫だったら騎士には通報しない。三段階降格で勘弁してやるが、無理だぞ」


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