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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第2章 冒険の開始
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魔付き その三

第三十六話 魔付き その三


 翌日、俺とヴェルヘルナーゼはレングラン男爵の屋敷を訪れた。


 「おお! 君か!」

 今日も門番はドドーレだった。顔が笑顔で溢れている。俺はドドーレの大きな手で握手をされる。


 「聞いたよ! 君がハールレ様の魔付きを払ったって! ありがとう!」

 「ドドーレさん、良いことありました?」

 俺は白々しく聞いて見る。


 「昨日、ハールレ様から求婚のだな・・・」

 「へぶ!」

 俺は背中を思いっきり叩かれる。


 「うわー、おめでとうございます!」

 ヴェルヘルナーゼも声を上げる。


 「男爵様は知っているんですか?」

 「二人で話したら許可してくれたぞ! 全部君のおかげだ! そうそう、男爵様か?」


 「ええ、ご褒美に武器庫から良い革の鎧があるらしいので、貰える運びです」

 「そうか! 男爵様はアレを! くそ、羨ましいな! でも俺じゃ着られんし! じゃ!」


 「あの、案内を・・・」

 「え? いいぞ? 男爵様の部屋は知っているよな?」


 「ええ、わかりますが・・・」

 良い笑顔で手を振ってくれるドドーレに見送られながら俺達は屋敷に入っていく。


 「すっかり身内認定ね」

 「良いのかな?」


 「良い仕事をしたからよ。ゴブリンの君の指揮は凄かったし、今回のも乙女の秘密を暴くようで少しキモイけど、結果としては良かったのよ」


 「え? キモイ? でも医者ってこんなもんだろ。仕方ないよ・・・」

 「ウフフ。そうね。男爵が少し悲しそうな位で終わったから良かったのよ。冗談よ」


 「落ち込むな・・・」

 「冗談だってば。ほら、男爵の部屋よ」

 俺は男爵の部屋のドアをノックする。


 「ユージーです!」

 「おう! 入れ!」

 俺とヴェルヘルナーゼが部屋に入ると、相変わらずミカファは書類仕事をしていた。俺に任せればすぐに片付ける自信があるが、決して言わない。


 「あ、ハールレ様とドドーレ様のご婚約おめでとうございます」


 「クソ、あいつに聞いたのか。ハールレの笑顔が余りに嬉しそうだったので、許してしまったぞ。あいつは今日からこの部屋詰めにしてやった。ざまあみろだ。そうだ、さっと話をしたけどお前の事はまるっきり覚えていないし、あの事件も全く覚えていなかった。この件の真相は俺達とあの産婆二人だけが知っていることになる。産婆は口止めをしておいたから、お前達も秘密で頼む」


 「はい」

 「じゃあ行くか。付いてこい」


 俺は兵舎の側の武器庫に連れて行かれた。行く途中で騎士達に手を振られる。


 武器庫には剣や槍、騎士用の金属鎧が所狭しと置いてある。


 「こっちだ」

 奥のドアを開けると、一対の鎧が出て来た。


 「当家はな、ルーディールーシュという騎士が立てた家なんだ。その鎧だ。お前にちょうどいいんじゃねえか。小さくてな、男には着れないんだ。ルーディールーシュは子供か女性か、どちらかとも言われていてスッキリしないんだ」


 「す、凄い。赤い。革じゃないわこれ。赤い一枚部品が鱗で出来ているわ。ル、ルーディールーシュ・・・」

 ヴェルヘルナーゼが鎧を触りながら硬直している。


 「ワイヴァーンの鱗と聞いている。飛龍の鎧だ。受け取れ」

 「いいのですか?」

 俺は鎧を持ち上げてみる。軽い。軽くて紙のようだった。


 「ああ。ただな、ちょいとこれを受け取って貰いてぇのと、相談にも乗ってくれねぇか」

 俺は羊皮紙を受け取った。


 「この者を騎士爵に任ずる。ミカファ・レングラン男爵・・・」


 「あれだけの指揮が出来て、医療にも詳しく、アミュレットも作れるんだろ。おかしな貴族に取り込まれる前に俺から受けておけ。俺は騎士爵の叙任を二名行えるんだ。王都には書類を送れば済むから、騎士になっておけ。騎士爵だからドドーレとかと違うぞ、彼奴等は通称が騎士で、正しくは俺の私兵だからな。騎士爵とは違うぞ。で、家名を言え」


 「アーガスです、男爵」

 俺が言う前にヴェルヘルナーゼが言い放つ。


 「ちょっと」

 「わかった。ユージー・アーガス騎士爵だな。ほら、名前を書いておいたぞ。なくすなよ。アーガス騎士爵。領地無しの法衣騎士爵だ。一代限りだな。貴族かというと限りなく違うが、一応貴族だ」


 「あの、俺は何をすれば・・・」

 俺は呆然と任命書を見る。


 「アーガス騎士爵の仕事はな、当家の私兵団の作戦の立案及び遂行だ。総大将は俺だから参謀だな。まぁ戦なんぞないな。要するに名誉職だ。月に一回は顔を出してくれ。他は好きにして構わん。で、早速着てみるか。嬢ちゃん、着せてあげてくれ」


 「え? え?」

 「おめでとう。さ、着よ?」


 「う、うん」

 ヴェルヘルナーゼが俺の安物の鎧を脱がせてくれる。ヴェルヘルナーゼはレギンスを外す際、俺を上向きで見た。頬が少し赤い。にこりと笑ってくれた。


 ドドーレが武器庫に入って来た。次々に騎士達が入って来る。


 「ヒュー! ヒュー!」

 何故か口笛を鳴らされる。


 「ほら、飛龍の鎧を着るよ。両手を水平にして」

 ヴェルヘルナーゼの顔は真っ赤だ。


 「何故口笛を鳴らされるの?」

 「もう。後で教えてあげるから」


 俺はヴェルヘルナーゼに鎧を着せて貰った。嬉しかった。なんだか、夫婦になったみたいで、ヴェルヘルナーゼの為に出陣するみたいで・・・


 「お、似合うぞ。ピッタリだな。よし」

 ミカファが騎士達の方を向いた。


 「レングラン男爵家、筆頭騎士の誕生である! 紹介する! ユージー・アーガス騎士爵だ! 貴様達も見たであろう! ゴブリンを殲滅せしめたあの指揮を! 聞いたであろう! 我が妹を救って貰ったことを! 全員、捧げ剣!」


 全員が剣を抜いて、眼前に示した。俺も真似して剣を捧げる。


 「捧げ止め!」

 全員が剣を降ろした途端、皆が集まってきた。俺は全員から握手を求められ、もみくちゃにされた。


 「おい、これから大事な話があるんだ! 出ろ! ドドーレは残れ」

 騎士達はゾロゾロと出て行った。俺とヴェルヘルナーゼ、ドドーレ、そしてミカファが残った。四人はミカファの執務室に移動する。


 「話がある。聞いて欲しい」

 ミカファは神妙な顔をする。


 「はい」


 「我が家は金欠で存亡の危機なのだ。このままだと、数年で破産する。幸いにも君の事件を利用して金食い虫のオヤジと弟の排除に成功したんだが、あの二人の浪費の為に金が無くなった。正直、どうしてお前さんみたいな人間がルーガルにいるのか理解出来ないんだが、なにかあるのだろ、金策が。ここで採れるのは泥炭だけなんだ」


 「え? あ? ああ、はい。そう言うことですか・・・」

 「済まん。助けると思って、教えて欲しい」

 俺はちらりとヴェルヘルナーゼを見る。俺は金で騎士爵を貰った感じだったのか・・・


 「いいんじゃない?」

 「まあヴェルヘルナーゼが良いって言うんならさ・・・農園を開こうと思っていたんですよ。薬草農園」


 「農園?」

 「門の北側の森は薬草の宝庫でしたよ。珍しい薬草が沢山あるんですよ。植えて増やせばいいかなって。畑に植えたら薬効は下がる気がしますがね。ドリハレ、フフド、ヴァヴァゴといった高額の薬草が沢山生えてますよ。もう大きくなってますね。これから行って採取します? 植えておけば来年の春に採取出来ますよ」


 「薬草だと?」

 「成る程ね、錬金術師のロビーリーサは薬草不足で嘆いていたわね」


 「うん、ルーディアに高名なロビーリーサさんもいるし、ここで薬草を育ててルーディアに出荷して、魔法薬の一大産地にならないかなって思います。あと、泥炭が採れるんですか? それなら長期目標で酒を造るべきですね。麦と泥炭で酒精の強い酒を造ります。これには蒸留器が必要ですね」


 「わかったか、ドドーレ。頼むぞ。お前は今から兵では無く、レングラン男爵家改革の指揮を執れ」

 「は、はい」


 「じゃ行きましょう」

 俺は立ち上がり、皆を促した。


 俺達は森に入った。俺とヴェルヘルナーゼ、ドドーレとミカファ。出発する際、訓練していた騎士を全員引き連れてきた。城門の門番は何事かと驚いていた。


 森で、俺は採取しながら説明をおこなった。


 「これがドリハレの木です。新芽が一個大銅貨二枚。生命力が強いので、枝を切って増やせるはずです。根っこから掘って持っていきましょう」


 「これがドーリですね。これは凄く大きくなっているので駄目ですが、春だと大銅貨一枚です」


 「あったあったヴァヴァゴ草。もう大きいから駄目ですけど、銀貨二枚の大物です」


 「これがビーロデです。これも大きすぎて駄目ですね。なんと銀貨六枚の高級品です」


 「これがフールー草、小銅貨三枚ですが、需要は多いです。食べても美味しいんです。特にチキンに塗して焼くと旨いですね。この辺にある薬草は以上ですね。上手く根から採取して何処かに植えましょう」


 「け、結構高級品があるんだな。知らなかったぞ。おい、根っこから優しく抜け。屋敷の芝生を掘り起こして植えるぞ」


 騎士達は渋々付いてきたが、俺が金額を教えると目の色を変えて採取を始めた。屈強な人達なので護衛も要らない。


 山のような薬草を抱えて騎士達は戻り、訓練スペースを除いて空き地に片っ端に植えていった。良いのだろうかと思ったが、構わない事にした。ヴェルヘルナーゼが魔法で水を作り、騎士達が散布しているのは不思議な風景であった。

魔付き、今回で終わりです。

次回からルーディアに日本刀を作りに行きます。

感想いただきました。ありがとうございます!

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