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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第1章 初めての転生
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初めての冒険

第三話 初めての冒険


 俺は戸惑いつつ、街を歩く。探すは宿だ。宿は二件あった。綺麗な宿と、汚い宿。俺は躊躇いなく汚い宿に入る。


 「いらっしゃい! あら、冒険者かい? 一泊飯二食付きで大銅貨二枚だよ」

 二十代半ばの色っぽい女将に銀貨六枚を渡す。三十日分だ。


 「三十日分お願いします」

 「おお! きっぷがいいね。いいよ、二階の奥を使ってね」


 部屋ははっきり言って狭く、汚く、臭い。虫が歩いている。安宿だ、仕方ない。嬉しい発見もあった。トイレがあった。俺は無いと思っていたので、非常に嬉しかった。


 俺は荷物を置き、薬草用のザックを背負った。革鎧には剣の鞘を吊す事が出来た。ナイフが三本差せる様に成っている。革鎧とナイフを複数買うのがセットになっている様である。俺は思わず苦笑した。


 俺は空のザックを背負って外に出た。市場でパンと干し肉を買った。パンは岩のように硬い。干し肉も硬い。とりあえずザックに放り込んだ。水筒も買った。瓢箪と木の栓だ。


 俺は意気込んで街から出た。門番の騎士から、死ぬなよと声を掛けてもらった。


 大銅貨と言う物があるらしい。小銅貨もある。大銅貨は小銅貨十枚分だ。パンが三つで小銅貨五枚。小銅貨は百円くらいか。すると大銅貨は千円くらい。宿は一泊二千円のイメージだ。銀貨はあと九十枚以上ある。一年くらいは宿に泊まれるお金である。


 金貨と銀貨は重さが同じだと思う。おおよそ、世界では金は銀の十倍の価値だ。おそらくこの世界でも同じだろう。


 金貨が五枚あるので、銀貨五十枚分。暮らすだけならしばらくは十分だ。俺は畑地帯を歩きながら、森に近づいていく。


 森はブナ林だ。下に草が一杯生えていて、入りづらい。薬草よりも、除虫菊が欲しい。今、最も欲しい物は除虫菊だ。除虫菊とは何か? 疑問に思うかも知れない。白いコスモスの様な花だったはずだ。前の世界でも、除虫菊の蚊取り線香を買うことが出来た。


 俺は生活向上のため、除虫菊を探すことにした。と言っても、見つかるのはタラの芽やウドだ。山菜が隠れるように生えている。お、こちらの世界でも山菜が採れるんだと、感心してしまった。


 タラの芽とは何かというと、タラの木に生える葉の芽だ。コレが天ぷらにすると旨い。ウドは白い茎が特徴で、酢味噌で食べる。天ぷらは塩でもいける気がするが、ウドは酢味噌が無いから食べるのは難しいか。ウドは葉も天ぷらで食える。帰りに油を買っていこう。


 俺はタラの芽を探して、森に分け入り、見つけた時は小躍りした。白い、コスモスのような花、除虫菊だ。俺は夢中で花を摘んでいく。乾かして殺虫剤とか作ってみようと思う。


 途中、バジルが生えていたので採取しておいた。ギルドに持っていこう。俺はほくほく顔でギルドに戻った。受付は列になっている。素材買い取りカウンターがあったのでザックからバジル、こちらではフールー草を取り出す。全部で二十一。


 「お帰り、ユージー君。採ってきた?」

 朝のお姉さんがいた。二回目なのでちょっと親近感が出てきた感じがうかがえる。


 「ええと、フールー草が二十一です」

 「あら、凄いわね。一つ小銅三ね。大銅六に小銅三か。大商いよね。あら? ザックに一杯入っているわね。見せて?」

 お姉さんは俺のザックから山菜を取り出す。


 「あ! 食べようと思っていた分ですよ」

 テーブルは山菜と除虫菊で一杯になる。


 「あら、珍しいわ。ドリハレの芽が三十五も。一個大銅二よ。ドーリが葉と茎共に二十一ね。一個大銅一よ。ええと、全部で・・・」


 ドリハレの芽はタラの芽だ。ドーリはウドだ。薬草だったのか?


 「ドリハレが銀七、ドーリが銀二と大銅一、合計銀九、大銅七、小銅三です」

 「・・・凄いわね。計算が速いわ。よし、おまけして金貨一にしてあげる。明日も採ってきてよ。凄いわ。薬草で金貨になったのは初めて見るわ。私はメーニア。よろしくね」

 凄い。山菜凄い。売った。今すぐ売った。


 「あら? ドーヒの白花もあるじゃない。これは安いのよね。使い道も無くてね」

 メーニアは目を伏し目がちに言ってくる。買い取りしたく無いのだろう。


 「いや、これは売りませんよ。乾かして虫除けを作りますので」

 俺は除虫菊、ドーヒの白花をザックにしまい込む。


 「ええ? 虫除け? 本当?」

 「多分ですけど・・・上手く出来たらおわけしますよ」

 「本当よ! 待っているわよ!」

 俺は金貨を貰った。初めての売り上げだ。小一時間で金貨一枚貰えるなら、薬草専門でも食っていける気がする。


 血の匂いがするので入口を見ると、血だらけの剣士が入ってきた。


 「ほら、オークの肉だ。討伐部位の右耳が七だ」

 剣士は革の袋から肉塊を取り出すと、俺は異臭で気持悪くなった。


 「うわー。美味しそう! 高く買うわよ!」

 ギルドの人は笑顔で買い取りしている。


 俺は異臭に耐えられず、外に出た。オークって魔物だろう。魔物を食うのか? 嘘だろう? 


 俺は衝撃が抜けきらず、呆然と立ちすくんだ。嘘だろうと言いたい。羊や鹿でさえ癖が強くて臭いのに、魔物を食うとは・・・道民の俺はジンギスカンのタレさえ有れば、羊肉は余裕だが・・・食い慣れれば旨いのだろうか。


 俺は宿に帰った。オークだかの肉は食いたくない。勘弁してほしい。


 俺は部屋の備え付けの机に除虫菊を並べた。花の香りが漂ってくる。心なしか、虫が減った気がする。


 夕食は干し肉と豆のスープだった。はっきり言って不味い。干し肉の塩味だけで味が付けられている。旨い物が食いたい。今後の課題だ。俺は夕食後、眠気に負けて寝てしまった。


 翌朝、爽快に目が覚めた。こちらの世界に来て、二日で順応したようである。元来不眠で、眠剤を服用していたのだ。こんなにスッキリ目覚めたのは初めてだ。


 空を見ると、夜明け直後である。俺は朝のうちに採取を済ませる為に宿を出ることにした。俺は部屋を出ると、女将さんが朝食の準備をするところだった。俺はパンだけを貰って宿を出た。


 パンを食べながら、門番の騎士に挨拶をして街を出る。街の外は麦畑で、畑を越えると森になる。俺は森に入り、草をかき分けながら薬草を採取していく。


 薬草、ぶっちゃけ山菜なのだがよくよく見ないと見つからない。俺は小一時間バジル、タラの芽、ウドを採取していった。今日は新たに行者ニンニクを見つけた。行者ニンニク、精が付くと評判の山菜だ。匂いが凄いので、食べたら絶対にキスは出来ないし、話すら無理だ。旨いんだが、醤油漬けに出来ないので食べる事はないだろう。売れると思うので十把ほど採取した。


 俺は行者ニンニクを探したが、見あたらない。貴重品だ。売れなかったら食おう。キスする予定も無いので心配は無用だ。

 

 俺は朝十時頃だと思われる時間にギルドに向かった。今日の仕事はこれで終わり、採取料も昨日と同じなので、金貨一枚の売り上げだ。十万円くらいだろうか。


 ギルドへ行くと、意外にも空いていた。


 「あら、ユージー君」

 メーニアは手を振って迎えてくれた。掲示板を見ている剣士の視線が痛い。


 「もう採取終わったの?」

 「ええ。一度ギルドに来なくても良いので、助かりますよ。これは薬草ではありませんか?」

 俺は行者ニンニクを差し出す。ちょっと緊張する。


 「あら? ヴァヴァゴ草じゃないの? ちょっと待っててね?」

 メーニアは立ち上がると胸がぶるんと揺れた。俺は胸に目が釘付けになる。振り向くと、大きなお尻を左右に振りながら、売店で世話をしてくれた筋骨隆々オヤジに話をしている。俺の採った行者ニンニクが本当にヴァヴァゴ草なのか、確認しているんだろう。


 「やりましたよ! ユージー君!」

 メーニアは胸をぶるんぶるんと揺らしながら俺の目に前に走ってくる。やばい、むらむらしてくる。カウンターに座っていると全くわからなかったけど、この人はかなりエロい体をしている。胸を見て、やりましたよ! と叫びたいのは俺だったり。


 「ヴァヴァゴ草で間違い無いです! 銀貨二の大物ですよ!」

 メーニヤは俺の手を取り、上下に揺する。


 「あ・・・」

 メーニヤは顔を赤くして俺の手を離す。胸の大きい人は、ちょっとした事で胸に当たってしまう。俺の右手が、何回も胸に当たって・・・凄い柔い。重量感も凄い。


 「ご、ごめんなさい。精算しますね」

 ヴァヴァゴ草以外は昨日と同じで、合計で金貨三枚だった。


 「す、凄いですね。討伐依頼より報酬が多いですよ」

 「いや、あと数日で採れなくなりますからね」


 「そうなんですか・・・凄いですよ。私のお給金より沢山、羨ましいです・・・ユージー君は子供と言ってもいい年齢なのに・・・」

 「ね、静かで美味しい料理やさんとか無いですかね? 今日は稼いだから一人でお祝いしようかな」

 「静かで、ですか? 無いですよ。あっちみたいに五月蠅い酒場か汚い食堂だけですね。もしかして私を誘ってますか?」


 「え? いや、そう言うわけでもないですけど、来たばっかりなので」

 「ウフフ。今度奢ってくださいね」


 「社交辞令ですね?」

 「わかりました? じゃあ明日、期待しています」


 俺は金貨三枚を貰って外に出た。まだ朝であるが、メーニアの揺れる胸と左右に動くお尻を見てしまってムラムラしてしまった。今気が付いたけど、俺は子供なのだろうか。こちらの世界は、鏡が全く無いので自分の姿を見たことが無い。

 俺は自分の年齢に疑問を抱きつつ、二日目の冒険者生活を終えた。

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