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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第2章 冒険の開始
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ルーディアの街 その四

2020.4.18日本刀の部位で、硬い部位と柔い部位が逆でした。ご指摘ありがとうございました。

第二十四話 ルーディアの街 その四


 「この玉鋼をですね、焼いて叩いて平たくしてください。そのまま水に突っこんで急冷して叩いて小さな破片にしてください。経験と勘で、最終的に柔らかくなる部位と硬くなる部位に分けてください。細かな鉄を、鉄のへらに乗せて、藁を混ぜた粘土で覆って、麻布でしっかり固定してください。炉に入れ、高温で焼きます。ボコボコと沸く位です。取り出したら板にしてください。柔らかい鉄と硬い鉄を別々で」


 「う、うむ。待てメモをとる」

 俺の説明を、ドワーフの鍛冶べべルコは羊皮紙にメモをし始める。必死だ。


 「次は鍛錬です。最初は縦方向に二つに折って、叩いて伸ばします。焼いて、次は横方向に二つに折って叩きます。これで鉄に含まれる炭素量の調整と均一な鉄になります。十五回繰り返してください。」

 べべルコは必死にメモを取る。


 「ここからはお願いになりますが、刃が柔い鉄、周囲が硬い鉄で覆うようにして欲しいんです。やり方はお願いいたします。恐らく、硬い鉄を三枚使ってコの字型にして、刃を差し込む感じになろうかと思います」


 「わかったぞ。難しいな。やってみる。焼き入れは数日後、来てくれ。あ、さっきの短剣は持っていけ。剣が無いんだろ」


 「いいんですか?」

 「恐ろしく複雑で丁寧だ。こんなに細かな作業は初めてだ。短剣は新たな鍛冶を教えてくれた授業料だ」

 俺とべべルコは握手して別れた。


 「ユ、ユージー君は鍛治師だったの?」


 「うむ。刃物の目利き、鉄への造詣の深さに感服した。で、良かっただろ? 我々から金貨を受け取っていて。普通は剣に金貨五十枚も使わないからな」


 今回の金貨五十枚の元は、キーアキーラとヴェルヘルナーゼにアミュレットを売ったお金である。


 「はい。大変助かりました・・・本格的、と言うわけではないですが継続してアミュレットを売った方が良いのかもしれませんね・・・銀細工は売っていないかな?」


 「ユージー君、目の前が銀細工屋だよ。いこっか」

 工房に入ると、やはり入口付近が店になっている。指輪、ネックレス、ブローチ、髪飾り、櫛など多様なアクセサリーが置いてあった。


 「いらっしゃい。よく見てってね。贈り物かな?」

 女将が出て来た。ちらっと、キーアキーラとヴェルヘルナーゼを見ている。


 「いや、片っ端から買いますね・・・」

 俺は指輪、ネックレス、ブローチ、ボタン、髪飾りを合計五十個、金貨五十枚分購入した。露店で買った銀細工より純度が高く、お洒落な品が多かった。


 「ず、随分買うのね。こっちとしては有り難いけど、大丈夫? 何に使うのかしら? 転売は構わないけど、ウチより高くしても売れないわよ?」

 女将は一つ一つ、小さな革袋にいれてくれて、大きな革袋に入れてくれた。俺は礼を言って銀細工工房を出た。


 「ず、随分買ったわね。本気ね? でもユージー君はアミュレット製作で食べていけるわよね」

 「うん・・・余り有名にならない程度に売れればいいかな」


 「さ、次は本命の錬金術師に会いに行くぞ。売ってくれるかはわからないが」

 キーアキーラの案内で、街外れの家にたどり着いた。キーアキーアはドアを開けて入ってった。


 「おーい、ロビーリーサ! いる?」


 「はーい。あ、キーアキーラじゃないの! どうしたの、こっちに拠点を移したの? こっちは大変なのよ~。薬草を採ってくれる冒険者が少なくて、困っているのよ。なんかね、キーアキーラのいるルーガルの街から薬草が入って来るのよね。なんとかなっている状態なのよ」


 薬草が無いのか・・・俺はちらっとヴェルヘルナーゼを見た。ヴェルヘルナーゼはキーアキーラを見たが、キーアキーラは気にしていない。


 「ああ、すまんが薬草を分けて欲しくてな」

 しれっと言い放つキーアキーラ。


 「相変わらず人の話を聞かないわね。薬草が無いのよ。ま、入って。店の中で悪いけどね」


 俺達は中に通された。中は薬草や何かの角、何かの羽、良くわからないぶよぶよしたもの、何かの皮、何かの種、沢山の古い本で溢れかえっていた。溢れかえっていたと言う言い方は違うかもしれない。四十畳くらいの部屋一杯に棚があり、素材と思しきものが綺麗に積んであった。


 「す、凄いわね。夜来たら悲鳴をあげちゃうわよ」

 ヴェルヘルナーゼは猿っぽい何かの乾燥した頭部を眺めている。触ろう人差し指を出すが、触る前に引っ込めた。


 俺達はお店の隅にあるテーブルに座った。ロビーリーサは金髪で細身スレンダー、背が低めの綺麗な女性だった。可愛いと言った方が良いかもしれない。


 ロビーリーサはハーブティーを淹れてくれた。


 「紹介する。魔法使いのヴェルヘルナーゼ、見習い冒険者のユージーだ」

 俺は見習いか・・・


 「へー。キーアキーラのパーティーね・・・残念だけど薬草が全く入って来ないのよ。売れ筋の回復魔法薬が作れなくなりそうなの。その代わり、魔力薬の材料が沢山ルーガルの街から入って来たわ。ドリハレとかフフドね」


 「ああ、それはこの天才収集家のユージー君が採取した奴だな」

 「あ、ども」

 キーアキーラに紹介されたので、俺は小さく挨拶した。


 「え? 本当に? ありがとう! 魔力薬って材料が少なくて作れないのよ!」

 俺は握手した。勢い余ってキーアキーラとも握手している。


 「あら? その指輪、アミュレットじゃない? 見せて?」

 キーアキーラは指輪を外してロビーリーサに手渡した。


 「常時魔力を使うんだが、耐熱と耐寒のアミュレットだ。指輪をして、お茶に指をいれてみろ」

 「ええ? 火傷するわよ?」


 「いいから」

 「ええ? あ、これここがミスリルになってる・・・」

 ロビーリーサは指輪を嵌めると、カップに指を入れる。


 「熱くない・・・凄い・・・欲しいわ・・・金貨百枚出すから譲って!

お願い! この指輪があれば作業が本当に楽なるわ! 少しなら融通するから! ちょっと待ちなさい、その髪留めもミスリルの部位があるわ」


 キーアキーラは涼しい顔をしている。


 「これか? 耐毒と耐病の髪留めだ」

 「キーアキーラ、私によこしなさい。錬金術は毒も扱うのよ。病気を持ってそうな魔物の肉もね。二つで金貨二百枚で買うから、よこしなさい」


 ロビーリーサは小さい手をキーアキーラに伸ばそうとするが、キーアキーラにはとどかない。


 「ほら、私の言った通りだろ。二個で金貨二百枚の価値だぞ」

 キーアキーラは俺の方を向く。ロビーリーサはまさかと言う顔で俺を見る。


 「紹介しよう、ウチ専属の錬金術師、いや魔銀師のユージーだ」

 不穏な紹介を受けた。


 「魔銀師ですって?」

 「ああそうだ。そしてだな、彼の薬草チキンは絶品だぞ。去年一緒に食べたコースがあっただろ、あんなもんは比べたらウンコだぞ。交渉するか?」


 「ぜ、是非」

 「こ、こんにちは。お願いがあるんです。二つで金貨百枚で良いので、僕の代わりにアミュレットを売って欲しいなって。一個金貨五十枚で卸しますので、値付けは自由で」


 「あら、それは良いわね」

 ヴェルヘルナーゼも賛成してくれる。


 「わかったわ。一日に何個作れるの?」

 「精々一個か二個です。そんなに売れる物でもないでしょうし、一年で数個売れれば十分に生活できるかなと」


 「わかったわ。飲みましょう。待っててね」

 ロビーリーサは席を立つと、革袋と金属のインゴットを持ってきた。


 「金貨でも良いけど、ミスリルのナイフとかいかが? 時間をくれれば作ってあげるわ。但しアミュレット十個と交換ね。私のミスリルナイフは金貨五百枚で出しているから。あ、前に二本作ったわよね。どうしたの?」


 「ああ、一本はこのヴェルヘルナーゼが持っている。レイスとかでたらミスリルのナイフが無いとな」

 「キーアキーラの言う通りね。一度レイスをこのナイフで斬りつけて倒したのよ」

 キーアキーラが懐からミスリルのナイフを取り出す。


 「わかりました。ミスリルのナイフでお願いします。じゃあとりあえず二つつくりますね」

 俺は髪留めとネックレスを取り出した。錬金術師だから、指輪で無い方がいいだろう。髪留めとネックレスを数個出して選んで貰った。ロビーリーサは、ネックレスはコインがぶら下がったデザインを、髪留めはシンプルなものを選んでいた。


 俺は灰を貰って磨くと、魔力を流して銀の一部をミスリルに変え、アミュレットを二個作る。魔力が底をついて、フラフラになった。


 「あ、魔力欠乏ね。ほら、魔力薬を飲みなさい。それにしても、恐ろしい程繊細な魔力ね。驚いたわ。本当に銀からミスリルを作ったわね・・・凄いわ・・・ミスリルが銀と魔力で出来ているって本当だったのね」

 俺はアミュレットを手渡すと、ロビーリーサは嬉しそうに眺めていた。


 「ね、君はどうやって作り分けているのかしら? 二つとも、同じように作っているとしか見えなかったわ。もしかして、自由に効果を付与出来るのではなくて?」


本日二回目の更新です。

次回でルーディアの街編は終了の予定です。

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