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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第10章 王都と第二王子
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襲撃 その一

第百七十四話 襲撃 その一


 「誰か来たわ。敵意は無いみたいよ」


 陽が落ち、林が闇に包まれようとしている中、三人の人影が現れた。白いローブを着ている。宮廷魔道師団だ。


 「お久しぶりね。元気だった? 貴方のおかげでうちの家が大変だわ。私達が来たのは貴方を討てと伯爵令が出たからよ。命令書を渡しておくわ。宮廷魔術師団が束になっても敵わなかった魔物を一撃で倒す相手にどうしろっていうのかしらね。色仕掛けでもなんでもしろって言われたけど、あの伯爵は情報を疎んじているのよね。王都一の美貌が側に居るのにどうしろっていうのかしら。私は胸が無いし、年増と子供っぽいのとの三人組で色仕掛けなどできないから宮廷魔術師団にいるのにね」


 俺の元を訪れた宮廷魔道師は女性の三人組だった。宮廷魔道師団を訪れたときにお茶をさせられた三人だ。話しているのはフォールデューイ、侯爵家の次女のスリムな女性だ。後に控えるのは三十路のグラマーなデールマーヤ、背が低くて子供に見えるデルマーリだ。はっきり言うと、三人とも綺麗な女性なので色仕掛けされると結構まずいことになりそうだ。


 「うちの実家、ワールデルク侯爵家は大変な事になっているらしいわ。寄子の子供達が魔道学園で体調を崩しているらしいじゃない。貴族としての活動は止めて静かなところでゆっくりと過ごすようにと言われているらしいのよ」


 「まあ四半分は生きているだけで御の字でしょうね。それぐらい恐怖だったんです」


 「・・・反省しているわ。じゃあ、私は宮廷魔術師団を抜けて何処かに潜んで暮らすから。このローブあげるわ」


 「じゃあわたしも」


 「ウン。あげる」


 俺は三人分のローブを受け取った。


 「おい・・・白いローブは宮廷魔道師の証だろ・・・」


 「宮廷魔道師団は壊滅よ。グールン子爵はもう着ていないしね。じゃあね」


 「フォールデューイさん、肝心なことを・・・」


 背の低いデールマーリが話に割ってはいる。


 「あ、忘れていたわ。うちの団長が聖堂の祠祭儀に貴方の事を聞かれたそうよ。ルーディールーシュと名乗っていたって報告したらしいわ。これで破門の後に悪魔認定だとほざいていたわ。団長は相当貴方を憎んでいたからね。大祠祭儀様に確認するって寄子の貴族達が息巻いているそうよ。聖堂の権威は完全に失墜したわ。何が悪かったのでしょうね。私も貴方を殺せればいいのでしょうけど、殺せない以上、手を出したら盗賊認定されるわよね。それだけは勘弁願いたいわ。ちゃんと情報を置いていったからね。盗賊認定しないでよ。そうそう、貴方、もちろん祠祭儀の事は知っているでしょう?」


 俺は首を振る。


 「知らないの? 嘘ォ? 白金級魔法使いと同等とされる四人よ。歴代の最強の宮廷魔道師達よ。どんな魔術を使うのか、誰も知らないわ。気を付けるのよ。じゃあね」


 三人は林から去って行った。デルマーリは両手でバイバイをしてくれる。デールマーヤは小刻みにジャンプしながら手を振ってくれた。胸が上下に揺れて凄い。


 「待て。誰か来る。四人だ。奴らか?」


 俺は素早く魔道馬車を回収する。


 「アッ! 何?」


 ヴェルヘルナーゼが思わず叫んだ。俺達の周囲を魔力が包み、悪寒が一瞬、体を通り抜けた。俺はすぐに魔力を循環させ、魔力で防御を行う。ヴェルヘルナーゼも苦しそうであるので、手を繋いで魔力を防御する。


 「もうもう大丈夫よ、あなた」


 ヴェルヘルナーゼは大きく息をしながら


 「うぐ・・・うご・・・」


 元宮廷魔道師の三人は汗を流しながら何かに耐えているが、抗しきれなかったのか、気絶する。


 「魔力が吸い取られているわ。何かの結界を張られたようよ」


 「魔力を吸い取る結界か・・・魔法使い殺しの結界だ・・・どうする?」


 俺は索敵の魔法を展開するが、即時に魔力が吸い取られる。俺も魔力で防御しているものの、じりじりと魔力が減少しつつある。


 「結界? であれば外に出られるな・・・んん?」


 空間が、俺の目の前の空間が裂け始める。鎧の籠手のような、鱗で覆われたような、手が裂け目から這い出て来て、裂け目を広げようと手に力を込め始める。


 俺は躊躇いなくミスリルゴーレムのライカを出すと、アダマンタイトの剣を持たせる。ライカは問題なく動ける様である。


 「ライカ! 目標前方の空間の裂け目! 攻撃しろ!」


 ライカは思いっきりアダマンタイトの剣を横薙ぎしたが、裂け目に当たると剣が止まった。


 「ライカ、俺が止めるまで裂け目を攻撃!」


 ライカが何度も裂け目に向けてアダマンタイトの剣を振るった。力任せに袈裟切りし、跳ねかえったら再び袈裟斬りを行う。ライカは何度も何度も袈裟斬りを行った。


 「あなた、うちも駄目・・・」


 驚異的な魔力を誇るヴェルヘルナーゼでさえ片膝を付いた。裂け目から這い出ようとする何者かはライカの剣戟に耐えきれず、両手を切断されて裂け目に戻った。


 「ライカ、裂け目を攻撃して破壊しろ」


 俺は命ずると煉獄刀を抜いて走り出す。煉獄刀を振って見るが魔力が吸い取られているのか、炎は出なかった。不意に何かを通り過ぎた感触があった。俺は索敵の魔法を展開すると同時に煉獄刀を納め、龍筒を取り出した。


 四人いた。三人は逃げ出し始めたが、一人は動かない。逃げない一人の太ももへ龍筒を放つ。


 「射撃!」


 ぱあん!


 「ぎゃあああ!」


 男の叫び声が聞こえると、周辺に広がる結界も消え失せた。俺は慌ててヴェルヘルナーゼの所に戻る。


 「結界は消えたわ・・・ありがとう、あなた。殺したの?」


 ヴェルヘルナーゼは立ち上がると倒れている三人に魔力薬を飲ませ始める。


 「これでいいわ・・・そのうち目を覚ますわね。賊は何処?」


 「向こうにいる。太ももを撃ち抜いた」


 俺は魔力薬を飲むと、太ももを押さえてのたうち回っていた。


 「拘束するわね」


 二人で聖堂のローブを着た男をロープで縛り、口には厳重に猿轡を嵌める。俺は軽く止血程度の魔法を掛けてやる。男は四十代の痩せた男だった。


 肩で息をしながら、フォールデューイが歩いて来た。両手にデルマーリを抱いている。


 「そんな・・・先輩さん・・・」


 デールマーヤが簀巻きにされた男を見て呟いた。デールマーヤには見覚えがあった。十五年間の宮廷魔道師生活で最も強いと言われた男だった。


 「先輩? ああそうよね。デールマーヤは知っているのよね。魔力を吸い取る結界師がいたって聞いた事があったわ。十年前に団を辞めた当時最強の宮廷魔道師、結界師ケリツズオ・ジクファリ・・・さ、殺すわよ」


 「え? ちょっと」


 「駄目よ。もしも猿轡が外れたら又あの結界を喰らうわよ。魔法使いは捕らえたら最後、必ず死罪よ。でないと死ぬのはこっちよ」


 「とりあえずギルドへ連れて行きましょう。話はそこからよ」


 ヴェルヘルナーゼの言葉に俺は頷いた。


 「ライカを回収してくる」


 俺は戦いの現場に戻り、棒立ちのライカを回収する。裂け目は既に消え、ライカが切り裂いた両手首が残されていた。俺は硬い鱗と鋭い爪が生えた二つの手首を拾う。


 「なんだこれは・・・この世界では全く聞かない悪魔じゃないのか・・・悪魔召喚師と呼んでやれ」


 俺は現場に戻ると、ヴェルヘルナーゼに手首を渡す。


 「見覚えある? 裂け目から出て来た悪魔召喚師が呼んだ異世界からの悪魔だ」


 「ええっ! 悪魔! 本当にいるの?!」


 ヴェルヘルナーゼが驚く。


 「わからないけど、俺は悪魔呼ばわりされて癪に触るので悪魔呼ばわりしてやる。明日の朝は悪魔を召喚した罪でしょっ引こうぜ」


 「人間では無いわね。リザードマン・・・じゃないわね。何よこれ? 本当に悪魔だわ・・・」


 フォールデューイも手首を持ち、観察を行っている。


 俺は大型の魔道馬車を出すと、皆で乗り込んだ。元気なヴェルヘルナーゼが監視のために中に乗り込み、フォールデューイが馭者席に乗った。俺はギルド目がけて発進させる。


 「噂の魔道馬車ね・・・本当に走るのね・・・」


 「ええ。なかなか便利ですよ。一台金貨千枚です。ルーディアの俺の商会、キーヴェルユー・リーフローフ商会に行くと買えますので、南部へお越しの際は是非」


 「考えておくわ」


 空が闇に沈もうとしている中、俺は魔道馬車を走らせた。

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