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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第1章 初めての転生
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初めてのパーティ

第十七話 初めてのパーティ


 ユージーはヴェルヘルナーゼの声が聞こえた気がした。俺に熱があると言っている。突然暴漢に襲われたが、外傷は無かったはずだ。しかし、大量の血を吐き、内臓に損傷があった・・・そうか、腸から大便が漏れたのか。くそ、体中に雑菌が巡ってしまっているのか。


 俺は魔力を循環させる。細い、魔力の糸が俺の体内を流れて・・・いかない。魔力は波と成って、堰を切ったかのように一気にながれだし、一気に枯渇する。俺の体内に異質な魔力が入って来ている。


 魔力薬を飲ませたと言っていた。女の人だ。女の人の魔力が俺に流れている。魔力薬は女の人が作ったのか。年の頃は三十歳前後、魔力の色は灰色。俺の透明な色とは合わない。そうか、薬草の成分で魔力を保持しているのか。


 体の中で停滞する灰色の魔力に、俺の細い、小さな魔力を流す。頑張っても糸一本だけだ。


 一本の魔力は灰色の魔力の中に入り、混ざらずに突き抜けていく。突き抜けると、灰色の魔力の色が抜けていく。色が抜けると、魔力を操れるようになってきた。魔力の糸を紡ぐが、いつもよりかなり太く、思い通りに動かない。


 動かないが、無理矢理動かしていく。やはり雑菌が俺の体内に増殖し始めている。魔力の太い糸が雑菌を吸収していく 同時に灰色の魔力に、俺の透明な細い魔力を貫き、色を抜いていく。色が抜けるほどに、体を巡る魔力の糸は細くなって、量が増えていく。


 俺の体に魔力の細い糸が縦横に巡り始めた。魔力の糸に雑菌が強力に吸着するようイメージする。体から毒素が徐々に抜けてくる。二、三割抜けたところで急激に体が軽くなった。指輪の耐病、耐毒の効果が強く出た様だ。俺が魔力を納めても、雑菌がどんどん減っている。


 俺は目を開け、上体を起こす。腹部が死ぬほど痛いが、歯を食いしばって起き上がる。


 「何処だ?」

 「ユージー君! 良かった!」

 俺は誰かに抱きしめられた。俺の太ももの上に乗り、強く抱きしめて来る。もう感覚でわかる。折角なので俺も強く抱きしめてみた。俺の好きな香りを持つエルフだ。


 「ただいま、ヴェルヘルナーゼ」

 「うん。死んじゃったかと思った」


 「ここは何処?」

 「ギルドの応接室だよ。君を襲った奴は捕まったから。安心してね。あ」

 我に返ったのか。ヴェルヘルナーゼは体を離してしまった。


 「あ、あの、ごめんなさい。立てる?」

 俺は立ってみるが、目眩と吐き気が酷く、腹部も猛烈に痛い。立つだけで脂汗がだらだらと流れて来る。


 「大丈夫じゃなさそうね。よし、肩を貸してあげる」

 俺はヴェルヘルナーゼに肩を貸して貰いながら応接室を出る。ギルドにいる全員の視線を浴びて、少し戸惑った。


 「ユージー。もういいのか」

 「大腸が破けて毒が体に回るところでした。ヴェルヘルナーゼの魔力薬と例の指輪でなんとか生き延びましたよ」

 キーアキーラはヴェルヘルナーゼをちらりと見て頷いた後、俺の頬を触る。キーアキーラの鎧は俺の吐いた血で汚れている。


 「酷い顔色だな。宿に帰れるか」

 俺は頷くと、ヴェルヘルナーゼに肩を借りながら宿まで歩いて行った。宿に入るなり、俺はベッドで死んだように眠った。


 気が付いたら朝だった。ベッドの横には俺の革鎧が置いてある。起き上がろうとするが、腹部が痛くて、諦めた。痛くて、腹筋を使う様な動作が出来ない。


 俺は目を閉じ、魔力の糸を全身に循環させる。体から毒素は抜けきっていなかった。俺は毒素を吸収しつつ、内臓を修復していく。大腸と肝臓が傷を受けている。幸いにも、肝臓の傷は塞がり、大量出血は防いでいたものの、未だに正常な働きではないようだった。


 俺は内臓に魔力の糸を送り込み、修復を行っていく。残念ながら、二割程度炎症が治まったところで魔力が切れた。しばらくは体に回った毒素を消しながら、内臓の修復を行うのが日課になりそうだ。


 「ユージー君、起きた? 朝ご飯貰って来たよ。あと薬湯を煎じたから、飲みなよ。起きれる?」

 俺は首を振ると、ヴェルヘルナーゼは上体を起こしてくれた。腹部が焼けるように痛い。


 「だ、大丈夫じゃなさそうね・・・」

 「冒険者生活は六日だけなのに、まさか死にそうになるとはね・・・」


 「あ、あの、ごめんなさいね・・・最初はうちよね・・・」

 俺は言葉が見つからず、膝の上に置かれた盆から薬湯をとり、口に含む。腹が焼けるように痛いが、水分と食事は取らねばならない。点滴があれば・・・


 何の薬湯だろう、と思い、少し魔力を流してみる。セントジョンズワートの煮汁だ。あとはレモングラスが入っている程度だと思う。セントジョンズワートは天然の精神安定剤と呼ばれている強力なハーブだ。レモングラスはハーブティーによく使われるハーブで、交感神経の落ち着きと胃もたれかなんかだった気がする。セントジョンズワートが要らない気がするが、飲むと落ち着くのでいただく事にする。俺は二口、薬湯を戴く。薬湯というか、ハーブティーだけど。


 「いたたた・・・」

 飲むと腹部が激しく痛い。


 「大丈夫? 飲める? でも飲まないと死んじゃうし、飲むのよ」

 俺はパン粥も歯を食いしばって食べる。腹部が燃えるように痛い。俺は時間を掛けて、パン粥を食べた。


 「食器を下げてくるわね。寝ているのよ」

 俺はベッドに寝かせて貰う。痛みで思わずうめき声が出てしまう。ヴェルヘルナーゼは俺の汗を拭くと、部屋を出て行った。俺は再び意識を手放し、死んだように微睡んだ。


 気が付くと夜で、ヴェルヘルナーゼに介助されながら薬湯とパン粥を戴く。


 俺は四日間、ヴェルヘルナーゼに介護されながら回復に努めた。朝は魔法で毒抜きと内臓の修復を行い、食事以外はひたすら寝ているという生活だった。


 五日目の朝、ようやく俺は朝食を食べに食堂へ行くことが出来た。


 ヴェルヘルナーゼに介助されながら一階に下りると、キーアキーラがパンを食べていた。


 「錬金術師君、大丈夫、じゃなさそうだな」

 「あ、お世話になりました。あの、血を大量に吐いた気がしますけど大丈夫でしたか」


 「ああ、気にするな。ヴェルヘルナーゼの水の魔法で綺麗に洗って貰ったからな」

 「そうですか、あ、そう言えば、ヴェルヘルナーゼはいつも俺の世話をしてくれた気が・・・」

 殆ど気を失うように寝ていたので気が付かなかったが、いつもいてくれた気がする。


 「気にしないで。領主から指名依頼という形でお金を貰っているから。で、お見舞い金も貰っているわ。金貨十枚よ。ケチくさいわね。新しい領主は」

 俺は金貨を受け取った。お金は増えていくが、釈然としない。


 「ああそうだ。話の顛末だけどな、君を襲ったのはレングラン男爵の弟、元貴族のガーレルと、その手下二名だ。手下の内、魔法使いの方は処刑になった。ガーレルと手下の一人は寄り親の伯爵が所有する鉱山で強制労働だ。魔法使いが罪を犯すと、暴れたら手が付けられなくなるから殆どが極刑になる。錬金術師君も気を付けろよ」


 キーアキーラの説明を聞いていると、女将さんがパン粥と薬湯を持って来てくれた。俺は薬湯を飲みながら話を聞く。


 「笑い話だがな、君が襲われた日まで、皆の認識は今のレングラン男爵の父親が男爵位を保有していたと思っていたのだ。ガーレルも貴族位を保有しているとな。だがな、ギルドに顔を出した現レングラン男爵は先月放逐した弟が申し訳無いと、言ってきたぞ。父親も先月隠居したんだが、連絡が悪くて申し訳無いってな。父親の方は女癖が悪く、統治は全くしない。ガーレルは問題ばかりで全て金で始末を付けてしたようで、クーデターに使われた感じだな。これで少しはこの街も良くなるかもしれんな」


 「え? 何があったんです?」


 「よくあることだ。今回は金級の私が証言したから、ガーレルの罪は絶対に取り消せないんだ。貴族でもな。貴族が問題を起こせば、当主の首をすげ替えて寄り親に泣きつくのはよくあることなのだ。男爵、騎士爵の任命権は寄り親にある場合があるからな。ドーソリー伯爵も父親とガーレルを切りたかったんだろうな」


 「・・・そうですか」

 「あと、君の能力がばれてしまったよ。すまんな。皆の前で回復魔法を使っていたから、どうしようもなかったんだ」


 「いや、キーアキーラさんが悪い訳ではないですし」


 「そう言って貰えると助かる。あと、君にパーティに迎えたいという冒険者が殺到したけど断っておいたぞ。既にヴェルヘルナーゼとパーティを組んでいると言ったら、皆は嫌な顔をして黙ったんだ。ウフフ。ああ、鉄拳か・・・って嫌な顔をしていたな」


 「え? 俺とヴェルヘルナーゼがパーティなんですか?」

 「え? 嫌なの? ユージー君。元気になったらまたチキンを焼いて欲しいなって」


 「あ、あの光栄です!」


 「ああ、たまに私も二人のパーティに参加するときがあるから。よろしくな。やっとガーレル騒動が落ち着いて私の活動が出来る様になったのだ・・・随分と嬉しそうだな、ヴェルヘルナーゼ。まあ錬金術師君もヴェルヘルナーゼを頼むよ」


 「頼むよって、うちは金級の推薦まで貰ったのよ・・・ほぼ金級よ?」

 「常識をヴェルヘルナーゼに教え・・・ああ、調味料に金貨を使う様な君に常識というのも・・・」


 「うわ、酷いっすね。じゃあパーティー名を決めなくては・・・」

 俺は二人を見る。


 「パーティー名? 『煉獄騎士団ヘルナイツ』だから」

 「え? なにその中二っぽいの?」


 「格好いいでしょう? もう登録してあるからね。リーダーは私、メンバーはキーアキーラとユージー君」

 ヴェルヘルナーゼは胸を張って答えている。


 「私とメーニアはもう少し考えた方がいいと言ったんだが・・・すまん、錬金術師君」

 「で、チューニって何? 小馬鹿にされた感じがするんだけど」

 俺は急いでパン粥をかきこんだ。


 「い、いててて・・・」

 「駄目よ、ゆっくり食べないと」


 「わかりました、煉獄長・・・」

 「ああ、煉獄長の言うことを聞け、ユージー獄卒」


 「わかりました、キーアキーラ獄卒長」

 「ちょっと! 人を悪魔みたいに呼ばないでよ!」

 俺とキーアキーラは大きく笑った。俺が笑ったあとにお腹を抱えて痛みに耐えたのは言うまでもないだろう。

今回でガーレル騒ぎはおしまいです。

お読みいただいてありがとうございます。


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