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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第1章 初めての転生
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討伐

第十五話 討伐


 「ここか」

 「ええ。彼奴等はここに入ったそうよ」


 「入ったら思いっきりぶちのめし、武器を手放させる。連行を試みるが、殺しても可」

 「了解。キーアキーラ、やろうか」


 キーアキーラはドアを開け、酒場の中に入る。昼間の酒場は客が少ないが、給仕女に絡んでいる男三人組を見つける。


 キーアキーラがユージーを傷つけたレングラン家の三男、銀級のガーレルを思いっきり殴りつけた。叫び声も許さないまま、魔法使いの髪を掴み、腹に膝を入れる。キーアキーラが手を離すと、剣を抜いて太ももに突き刺した。ガーレルは不意を突かれ、なすすべも無く無力化された。


 「ぎゃあああああ!」

 魔法使いが床を転げ回る。キーアキーラは思いっきり蹴飛ばし、気絶させた。


 ヴェルヘルナーゼは立ち上がった剣士の顎に右フックを放つ。顎を打たれると、脳が揺れて脳震盪になる。人間は絶対に鍛えることが出来ない弱点である。


 「あああ」

 剣士はおかしな声を出して頭から倒れた。


 「さて」

 キーアキーラは鼻血を出しながら起き上がったガーレルを睨む。


 「なんだ貴様等! 俺を誰だと思っている!」

 ガーレルはフラフラとよろめきながらも、懸命に凄む。


 「元銀級冒険者ガーレル・レングラン。貴様は強盗と暴行の為にギルドから緊急討伐依頼が出た。貴様等三人は盗賊ガーレル一味と認定された。大人しく自害するか捕縛されるか選べ」

 キーアキーラはきっぱりと宣言する。


 「ハッハッハ! これはおかしい! この街で俺に逆らえるはずもねえ! この街最高ランクの俺になあ! お前は誰だか知らねえが、お前も盗賊の仲間にしてやるよォォォ!」


 「これは申し遅れた。金級冒険者のキーアキーラだ。金級の私が貴様の罪を認定した。覆ることは無い」


 「ヒャッハッハ! お前馬鹿じゃねえのォォ? 俺のオヤジは領主だぜぇ?! 俺を捕まえる事なんて出来ねえヨォ! 金級がなんだ? 単なるギルドの犬じゃねぇえかあ? あんた馬鹿だろう? え? 馬鹿だよなぁ?」


 ガーレルの目は狂気に染まり、口からは涎が出ている。


 「貴様は頭が悪いな。金級には緊急時にギルドを掌握することが許されている。私が貴様の罪を決定したから、レングラン男爵が攻め込んできたらレングラン男爵は盗賊と認定されるだけだ。中央から金級または白金級が事態収拾に派遣される。金級の冒険者を侮って貰っては困る。兵士二、三千は必要だぞ」


 キーアキーラは剣の柄でガーレルを思いっきり殴りつけた。


 「ぐふう」

 キーアキーラは戦意を喪失したガーレルの剣や短剣を投げ捨て、金貨を回収した。


 「ギルドに連行する」

 「わかったわ」

 キーアキーラはガーレルと魔法使い、ヴェルヘルナーゼは剣士の髪の毛を掴み、外に出ていく。


 「ご主人、損害はギルドに請求してくれ。済まなかった。罪人確保のご協力を感謝する」

 「へ、へい」

 主人は頭を下げて一行を見守った。


 キーアキーラとヴェルヘルナーゼはガーレル達をギルドまでつれて行くと、ギルドの建物へ蹴り入れた。取り巻きの二人は心を折られたようで、呆然とした表情で素直に歩いていた。ガーレルの抵抗は激しかったので、太ももに剣を突き刺すと大人しくなった。


 銀級が無様に転がる様子に、冒険者達が息を飲んで見守る。


 「マスター、牢へぶち込んでおいて欲しい」

 「う、うむ。二階の牢に入れる。連れてきてくれ」


 「お、オヤジを嘗めるなよ。お前らなんて全員縛り首だ」

 「そうだそうだ、ガーレル様の恐ろしさを知るといい」

 ガーレルと取り巻きの剣士はそのまま牢に入れられたが、魔法使いは手足拘束の上、猿轡を厳重に嵌められた。


 「首を洗って待っていろ! 絶対お前らを殺してやる! 殺してやるからな! ハハハハハ!」

 ギルドにガーレルの声が響き渡る。声は狂気じみていて、悪魔が発する声と似ていた。


 「ヴェルヘルナーゼ、ユージーを頼む。私はマスターと話をしてくる」

 「わかったわ。領主が攻めてくるわよ?! どうする? 全員殺してもいいなら魔法を使うけど」


 「男爵はそこまで頭が悪くないだろ。既に中央ギルドへは報告書を発送しているはずだ。中央ギルドからは国王へ報告がなされるからな。国王が罰を下すはずだ。息子のままであればな。恐らくはガーレルの糞はレングラン男爵家から追放された事になり、男爵は隠居で代替わりじゃないか。それで手打ちだ。残念だ。残りの二人は処刑だろうな。貴族め、糞忌々しい。罪を犯しても処刑出来ないとは、貴族とはいいものだな」


 「気を付けるのよ」

 「わかってるさ」

 ヴェルヘルナーゼはキーアキーラと別れ、ユージーを探した。ユージーは別室のソファーで寝かされていた。横にはギルドマスターとメーニアがいた。


 「お、おい。ヴェルヘルナーゼ。このボウズは何者だ? 自分で回復魔法を使っていたぞ? 無詠唱だったぞ」

 ギルドマスターは厳つい顔をヴェルヘルナーゼに向ける。


 「本人は余り自慢したくないようなの。秘密にしておいてくれると助かるわ。魔力は少ないけど、魔力の繊細さにかけては天才よ。高威力の攻撃魔法は一切使えないけど、金属や生命に行う繊細な魔法は凄いわね。キーアキーラは敬意を込めて錬金術師君と呼んでいるわ。金級の彼女が敬意を払うなんて吃驚したわ。うちから見ても、魔力が少なすぎるから秘密にしておいた方がいいと思うのよ」


 ヴェルヘルナーゼは苦しそうなユージーの寝顔を見る。そっと額に手を乗せた。


 「メーニア、彼の魔力は少ないのか?」

 「ええ。青銅級ですよ。今はもう少し増えているかもしれませんが、銀級は無いかと思いますよ」


 魔力量の階級も、冒険者の階級と同じ階級で表している。青銅級の魔力量とは、八階級ある魔力階級の下から二番目だ。最下位の鉛級は魔力がゼロではないと言う量で、実際に魔法を使う量は持っていない。青銅級の魔力量は魔法を使う最低限の魔力量で、指先から火が出る、程度だ。火種にはなるか、程度の魔力である。


 「青銅級か・・・錬金術師を名乗るには少なすぎだな、確かに」

 「魔法薬を大量生産をするとか、多数の人を治療するとか難しいでしょうね。普通の魔力が少ない冒険者として扱って貰えるとうれしいです」


 ギルドマスターは頷くと部屋を出て行った。メーニヤも小さく礼をして出て行った。

 ヴェルヘルナーゼは横に置いてあるタオルでユージーの顔を拭いていった。


 「あら?」

 ヴェルヘルナーゼはユージーの額に手を乗せた。


 「酷い熱だわ。確か耐病と耐毒の指輪をしているのよね。指輪の力を借りてもこれなの? 参ったな、どうすれば・・・さっきは自分で回復魔法を掛けていたって言っていたわね。でもユージー君は精々一回しか掛けられないわ・・・魔力が足りないのよね」


 ヴェルヘルナーゼはユージーの顔を軽く叩く。


 「ユージー君! 君は熱があるわ! 聞こえている? 君は高熱なの! 今から魔力薬を持ってくるから、飲むのよ! 飲むと魔力が回復するから! 待っているのよ!」

 ヴェルヘルナーゼは部屋を出ると、メーニアを探した。


 「メーニアさん! 魔力薬はある? ユージー君の魔力を回復させたいの! あるだけ買うわ! 出して!」

 「あ、はい! 効果の小さい薬が三本有ります!」


 メーニアは小瓶を三本、脇に抱えてきた。ヴェルヘルナーゼとメーニアは部屋に入っていく。魔力薬は文字通り、魔力を回復させる魔法薬である。魔力の魔法薬と言う呼び名が正しいが、通常は魔力薬と言われている。


 ユージーが寝ている部屋に入るなり、ヴェルヘルナーゼはユージーの上体を起こし、魔力薬を飲ませる。


 「ユージー君! 魔力薬あと二本あるから、自分で魔法を掛けるのよ! わかった? 私はこれから宿に戻って魔力薬を持ってくるから! 良いわね! まずは瞑想よ! 瞑想して魔力を回すのよ! 良いわね!」


 ヴェルヘルナーゼはユージーが頷いたように見えた。


 「メーニアさん、ユージー君を頼みます。うちは魔力薬を取ってくるから」

 メーニヤが頷くと、ヴェルヘルナーゼは外に出た。

討伐編は次回も続きます。

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