表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第8章 展示会とゴーレム
148/217

展示会 その四

第百四十八話 展示会 その四


 「これ以上はご自分でお調べになった方が良いかと思います。俺も研究中ですし」


 「驚いたぞ・・・卿の奥方はエルフだったよな。大いなる方に敵対するのか?」


 「え? いや俺は別にどうでも良いですね。昔、強大な魔力を持った魔法使いが何人か居た、という事実があるだけじゃないですか? ロスメンディフェルトもルーディールーシュも魔法使いですよ。魔法が使える指導者です。昔の指導者って神格化されるじゃないですか。同じですよ。よくある話です」


 「・・・」


 「敵対っていたって、昔に魔法使いの指導者が居たっていう事実の何に敵対するのか・・・っていう感じですね」


 「・・・」


 「メリーカーナ王女は今光の王女と呼ばれているんでしたっけ? 二百年後には神格化されていると思いますよ。もしくは神が舞い降りたのだとか、相当凄い事になると思います。魔法と言うのは、神の力なんです。現代で一番神に近い存在、それは宮廷魔術師の貴方じゃないでしょうか?」


 「・・・ここで卿を殺した方が良いのかもしれんな・・・」


 「理解出来ます。真実は辛いですからね」


 「クッ、どうしてそこまでして調べているんだ」


 「愛する人を護る為です。このゴーレムはヴェルヘルナーゼに寄生していたゲルア様のお体として用意したものなんです。次はキーアキーラさんです。危ない状態なんです。キーアキーラさんの頭にはもの凄く小さな魔物が無数にいる状態です。俺は取り除きたいんです」


 「な、なに? キーアキーラ様の頭に魔物が?」


 「ええ。現段階の推論ではロスメンディフェルトではないかと思っています。ロスメンディフェルトは魔法使い、とは言いにくいですね」


 「なんだと・・・?」


 「もしかしたら王位継承のしるしかなにかなのかもしれません。俺は今のキーアキーラさんが大好きです。何者であろうと、渡しはしません。キーアキーラさんは半分受け入れ始めていますが、俺はいやです。横柄で、偉そうで、悪びれない。そんなキーアキーラさんが大好きです。グールン子爵もキーアキーラさんが大好きでしょう?」


 「わかった。知っていることを全て話せ」


 「長いですがご容赦ねがいます」


 俺はライカを収納し、話し始める。生物が極簡単な生物から進化したこと、人類は南で誕生し、北上したこと、最初の人類はエルフやドワーフの祖のルーシュ神族であること、後に出て来たのが王国の人間、フェルト神族であること、もしかしたら最初の人類は鬼族であるかもしれないこと。ルーシュ神族は魔力が多すぎて竜形を取らざるを得なかった魔法使いであること。


 「むう、一度に理解せよと言われてもな・・・で、肝心の大いなるお方が何故キーアキーラ様にいると考えているんだ」


 「聖堂から王国の本を借りたんです。大いなるお方と眷属達の記事がありました。気になったのは、大いなるお方は初めにあり、全ての生き物を作った、ということです」


 「大いなるお方は全ての親である。その通りだ」


 「次は、結婚も、子を作った記録が無い事です。第三は崩御の記事がありません。もしかしたら未だに生き続けている可能性があります」


 「ん? 大いなる者なんだからそうなんだろう?」


 「ほら、思考停止してますね。唯一神の宗教の悪い点です。エルフの神々は龍でした。ま、人間です。人間だから、特に指導者だから絶対娶って子を沢山作るはずです。そして、人間である以上必ず死ぬんですよ」


 「全ての源で、永遠であるのが大いなるお方だぞ」


 「では、実際に考えて見てください。その条件にあう生き物がいるかどうか。生物学的に考えると、全ての源なのだから、最初に現れた単細胞の生物です。でもこいつはすぐ死ぬんですよね。じゃあ死なない、存在が残るのは群体ですね。何かの拍子で魔力を持ってしまった原生生物の群体が魔物化したもの、これがロスメンディフェルトだと思っています。これ以外に条件に合う者は無いと思います。無論、記述が嘘であれば話は別ですが」


 「では何故キーアキーラ様の頭にいるんだ?」


 「謎を解く鍵は天の槍ゲールファイです。エルフの神話で、冥界の神べーフーディーフェルトが鍛冶の神ジューギーフェルトに作らせ、ロスメンディフェルトが使用した大量殺戮魔道具もしくは極大魔法。確か王国にも全ての罪だかなにか有りましたよね。敵も味方も一緒くたに吹き飛ばしたんです。恐らく、魔物も魔法使いもこのときに生まれたんだと思います。ロスメンディフェルトの吹き飛んだ魔力を吸収したんでしょう。ゲールファイの使われた場所はゲーディアでしょう。行ってみましたが、見事なすり鉢地形でしたよ」


 「待て待て! ベーフーディーフェルトって迷宮の名前じゃないか!」


 「ええ。あのような凝った仕組みを作れる人間は一人しかいないですよね?」


 「大賢者か・・・」


 「恐らく。冥界の神ベーフーディーフェルトの正体は大賢者でしょう」


 「一番魔力の濃い一族が王族だと?」


 「恐らく。濃いというか、ロスメンディフェルトの核に近いというか、なんというか」


 「クッ、卿を殺せば楽になるが、どうも本当に聞こえてしまう・・・」


 「大賢者が神殺しを何故行ったのでしょうか? 味方も敵も相当殺してますよ」


 「それは生きているだけで罪だったのだ」


 「馬鹿な事は言わないでください。指導者に率いられているのに民に罪があるわけ無いでしょう。今でも同じ事が出来ますか? お前ら生きているだけで罪だから皆殺しだって、言えますか? 殺せますか?」


 「・・・」


 「今も昔も変わらないと思いますよ。ああそっか、もしかしたら全員死んだのかもしれませんね。大賢者は心置きなくロスメンディフェルトを大爆発させたのかもしれませんね。だんだん頭がスッキリしてきました。話して良かったです」


 「なんだ? 贖罪の理由がわかったのか?」


 「もしかしたら、ロスメンディフェルトは疫病の神になったのかもしれません。もしくは群体が別れて、片方が疫病の神になった。疫病神が王室のロスメンディフェルトかも知れませんね」


 「病で街が潰れるほど死ぬわけ無かろう」


 「え? 何言っているんですか? 沢山有りますよ? 広まったら王国の人間が半数死ぬような疫病はありますよ? 変だな、メリーカーナ王女は黒死病、ペストという恐ろしい疫病の記録があるって言っておられたけど、聖堂の本には無かったんですよね・・・」


 不意に談話室のドアが開き、キーアキーラとヴェルヘルナーゼが入って来た。


 「もう夜だぞ。流石にお前達は仲良くなるのが早いな。もう料理は無くなって、展示会の料理提供は終わりになったぞ。婆やの言うとおりだったな。魔道馬車も売れたぞ」


 「キーアキーラ様! お体が大変だと!」


 「ああ、聞いたのか。ユージーは最後のルーシュ神族だ、話は聞いておいた方がいいぞ。で、どうだった?」


 「話していて気が付いたんですけど、ロスメンディフェルトは疫病の神になったんじゃないかなと。だから大賢者、ベーフーディーフェルトはゲールファイをぶっ放したんじゃないかって」


 「疫病か・・・否定できないのが嫌だな・・・ダカ、お前も変だと思わないか? 王は神聖すぎないか?」


 「王は神聖で不可侵です。お会いするのも恐れ多い」


 「馬鹿だよお前は。王が出てこないなんてあるか。最高責任者だぞ。実際は王都聖堂枢機卿会という軍閥の集団統治体制になっているんだからな。あるきっかけで枢機卿会が二分したら内乱になる、危険をはらんだ統治体制で、きっかけは神聖なる王の不在だろうな。王の適合者が近年減っているだろ。何をもって適合だが、良くわからないんだよ。多分私が王位に近いんだろうが、女性の王は基本駄目だぞ」


 「寄親寄子が軍閥なんですか?」


 「当たり前じゃないか。今更何言っているんだ」


 「キーアキーラ様が女王では駄目なのですか?」


 「説明してやれ、ユージー」


 「例えばキーアキーラさんが女王になり、グールン子爵と結婚して子が産まれ、子が王位に就いた場合は革命になります。ロスメンディア王朝が滅亡、グールン王朝へ易姓革命が起きたことになります。王国は大いなる存在であるロスメンディフェルトから授受された権利者である王族が治めるという理論以外に統治理論がありませんので、かなり乱れ、隣国に吸収される可能性が高いような気がしますよ。王位は男性継承が基本です」


 「・・・突然すぎて、混乱しています。アーガス卿が最後の神族だと先ほど言われましたが・・・」


 「もうわかるだろう? ユージーは知りすぎなんだ。大賢者と同じく、流れ人だ。ヴェルヘルナーゼはゲルアの子孫だ。この二人は我々では切り開けない未来を行く、新たな神話だ。私は自由に行動するよう言ってある。王家が滅びようと、前を進めとな。それがユージーが現れた意味だ。ついでに言うと、今の体勢を壊したい気持があるし、壊れると思っている。流石に神話的な支配体制がこれからも続くとは思えないんだよ。王族が存続した方がいいと思っているが、おかしな存在で無い方がいいな、私は。出来れば私は私でありたい」


 「・・・」


 「別に我々を助けろとか言っているわけではないんだ。我々だって革命を起こそうと思っているわけではないぞ。気がするだけで、基本は商売しか考えていないからな。自分の目で見て、頭で考えて行動してくれって言っているだけなんだよ。枢機卿会の言うことなんか聞き流せ。自分で考えろ」


 「自分の目で・・・」


 「ああ。ダカ、自分の足で歩け。それが魔法使いの役目のように思える。時代が動くと思うんだ。時代を切り開くのは、この国では魔法使いが担ってきた。剣士である私じゃない。ユージーや、ヴェルヘルナーゼ、そしてお前じゃないのか。新しい王国を担うのは」


 「新しい王国・・・」


 「ゴーレムの本は貸してやる。ゆっくり読め。お前に必要な知識のような気がするな」


 「え? お貸しいただけるんですか?」


 「ああ。これだけは約束しろ。どう使うかはダカが決めろよ。上から言われてとか、駄目だからな」


 「厳しいですね」


 「ああ。自分の足で歩くのは、大変なんだぞ。私はユージーにおんぶされているけどな」


 「新しい王国・・・」


 「ウフフ。なんだか楽しそうね。フリンカちゃんが夕食を用意していますから、食堂へどうぞ。お二人で食べるといいわ」


 「そうですね。いくぞ、アーガス卿。話し足りない。明日王都へ帰らねばならないのが惜しい」


 「ははは。じゃあ行くか。我らも食べていないんだ。腹が減ったな」


 こうして、内容が有ったのか無かったのか良くわからない話をして、俺の展示会は終わった。俺は販売活動が出来ず、展示会、と言ってもなんだかぴんとこない感じであった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ