ゴーレム開発 その一
第百二十九話 ゴーレム開発 その一
「よし、みんないるな。今日から展示会の準備を始めるぞ。まずはユージー、説明を頼む」
「展示会は三週間後、伯爵家の前庭で行います。目的は全ての魔道馬車の展示、試乗です。魔道馬車、魔道具付きシャーシー、魔道具無しのシャーシーを大型、小型全て展示します。大型魔道馬車の展示はピクニックセットを開き、実際に紅茶とクッキー、クレープを食べて頂こうと思います。ピクニックセットは四卓作ります。フリンカはお茶とお菓子をお願いします。フローヴさんは試乗の操縦をお願いします。リークさんと俺で営業ですね。ヴェルヘルナーゼはフリンカと手伝いか試乗をお願いします。状況次第で動いてもらうかな。前もって馬車ギルドに話を通して、馬を扱える馭者を頼む予定です。キーアキーラさんは偉い人が来たときに対応をお願いします」
「ふむ、意外と無いな。馬車組合には話を付けてある。今日でも行こうかと思う。二台貸し出すか。あと案内状だな。案内状は私が書こう。今回は貴族と大商会向けになるだろうな」
「良し、じゃあ頼む。あとあるか?」
「ユージーさんの小売店舗のイメージを教えて頂けませんか? 展示会より小売店舗の方が準備が大変そうです」
リークが発言する。
「小売店舗の一番の目的は紅茶の販売です。如何に沢山の人に飲んで頂くか、これが勝負です。南部のお肉や石鹸、ウィシュケも売っていきたいですが、実利が多いのは紅茶だと思っています。紅茶だけだと、人が来ない気がします。話題性として、魔道馬車を置いておけば良いかなと。気を付けたいのが、我が商会が推進するキーアキーラブランド、昨日伯爵様にご説明したのはキーアキーラさんの美しさとスマートさを全面に押し出しますと言っています。この二つがキーワードです。美しさとスマートさ、店舗内装、テーブル、椅子、使用する食器から店員まで、全てこの二つのキーワードで統一します。小売店舗には伯爵様がいらっしゃると思います。目指すはルーディアで、いや王国で一番お洒落れでスマートで美しい空間です。ターゲットは女性で、再訪して頂ける店舗です。男の事はどうでも良いです。女性をターゲットにしてください。どうするかな。専用の喫茶店にするか・・・そうすると人が増えるな・・・」
「スマートで美しい、ですか・・・参りましたね。乱暴な冒険者生活でしたから、お洒落と言われても困りますね」
「お洒落感は統一した店舗方針から得られるんです。ぱっと思いつくのは大型の魔道馬車のイメージですね。ルーガルの高級木材を使って壁、椅子、テーブルを統一すればかなりいいと思うんです。飾りとして展示する物も木の温もりを大事にした物が良いかも知れませんね。リークさん、想像出来ますか? 想像出来ないと実際に店舗を作るのは難しいかもです。ウィシュケを飲ませると暴れる人が出そうなのでこの店舗では駄目ですね」
「ううむ・・・言いたいことはわかりましたが、小売店舗はユージーさんに相当負担を掛けてしまいそうです」
「大変ねぇ。今日、白いカップの第一弾が焼き上がるわよ。粘土にオーガの骨の灰を配合率を替えて混ぜたのよ。夕方持ってくるわね」
ロビーリーサが報告を挟む。
「ほう。どうだ?」
「オーガの灰を混ぜて、魔力を込めてみたわ。粘土は白くなったから、期待していてね。フローヴの初練金作品よ。私は何もしていないから」
「じゃあオーガを混ぜた焼き物はフローヴ焼きとか言いますか」
「や、止めてください! 遠慮します」
フローヴが慌てて否定する。
「そうですか? 残念です。紅茶に使うカップですが、専用のお皿に載せて提供します。カップとお皿、薄く成形出来る実力のある工房を探さないと駄目ですね。肉厚が薄い方がお洒落に見えるんです」
「よし、じゃあ今日から新店舗と展示会の準備を進めるか。私は馬車ギルドにシャーシを持って行く。リーク、新店舗を探してみてくれ。ヴェルヘルナーゼは今日も魔法陣か。ユージーは留守番だな。たまには商会にいろ。じゃあ今日も頼む」
キーアキーラはヴェルヘルナーゼから馬車のシャーシを受け取った後、商会を後にした。リークとダンヒレ、ロビーリーサとフローヴが商会を後にした。商会は俺とヴェルヘルナーゼ、フリンカになる。
「ファークエル、今日もお願いね」
「魔法陣だな? 任せておけ。原本はそろそろ終わるから、訳した魔法陣を書いていくぞ」
ファークエルは半透明の龍の姿で作業を始めた。単純作業が苦にならないらしい。凄いと思う。ヴェルヘルナーゼは横に座って作業に付き合っている。
やることが無い俺はキッチンへ移動する。
「新メニューですね!」
「ああ。パスタを作るぞ。この辺は麺を食べるの?」
「メン?」
「小麦粉を練って細長くした料理だよ」
「食べませんッ!」
「よし、じゃあ作るか」
俺は小麦粉に卵、オリーブオイルを入れて練る。一時間休ませた後、一センチ幅に切っていった。パスタマシーンが無いので、多少がたついても良いようにフィットチーネにする。
塩味をきちんと付けて、出来上がったフィットチーネを茹でる。茹でたフィットチーネはオリーブ油を混ぜておく。
ニンニクと唐辛子を炒め、フットチーネを炒めて塩味の効いたゆで汁を入れ、ペペロンチーネの完成である。動画サイトで見たレシピだ。懐かしい、動画サイト。
「出来たよ。お昼には少し早いけど、ペペロンチーネという料理だよ」
「あら、良い香りね。ファークエルは食べる?」
「大丈夫である。作業をしているから、食べているが良いぞ」
ファークエルは脇目もふらず、作業を続けている。
「相変わらず美味しいですね・・・もう料理を覚えきれないですよ・・・」
「あら、フリンカちゃんそれは駄目だわ。本を二冊渡すから、レシピを記録しておくのよ。ちゃんとユージーがいなくても作れる様にしておくのよ」
「そうだね。壁の石版に整理してから本に書くと良いよ」
「わかりましたッ!」
フリンカは渡された何も書いていない本を二冊受け取った。
「あ、あなた、暇だからって何かしちゃ駄目よ。いっつも忙しそうにしているんだから」
「そうかな?」
「そうよ」
「でも迷宮が駄目になると行きたくなるよね」
「夏休みが二ヶ月あるから、行こうよ」
「それまでにゴーレムを仕上げないと駄目だね」
「そうねぇ。はい、読める様に訳した魔法陣の一冊目よ。やっと出来たわ。午前中であなたの休暇も終りね。うちもさっと見てみたけど理解出来ないわ」
俺は本を受け取った。表紙にはヴェルヘルナーゼの字で『ゴーレム魔法陣訳一』と記載されている。俺はドキドキしながらページを捲る。
一枚目は魔法陣の発動方法が書いてある。上層から順に魔法陣を発動させる。魔法陣をファンクーショし、魔法陣番号で呼び出す。呼び出された魔法陣もしくは魔法陣群は実行されたら主魔法陣群に戻る。主魔法陣群は四枚目から七十六枚とし、常に実行し続ける。破壊されて動けない状態、魔法陣が記載された魔石が取り去られようとした場合は魔石が破壊され、土に戻る。作成者ショー・クルース。
「うわ、大賢者じゃないか」
「そうよ。ゴーレムは大賢者が作ったものだったのね。うちは一枚目から理解不能なのよ・・・意味がわからないわ」
魔法陣をファンクーショ化すると書いてある。恐らく英語のファンクションだろう。関数だ。
「ショー・クルースは同郷人かもしれないな・・・」
「もしかして理解出来ているの?」
「うん。まあね。二枚目は・・・」
二枚目は魔法陣を記載した魔石に対象のゴーレムから魔力を流し、交配させると対象のゴーレムになると書いてある。
「魔石とゴーレム素体の交配・・・ああ、ペアリングみたいなことか。魔力を流させて魔石に認識させるんだな・・・」
三枚目は交配を行った魔道師により命令が可能と記載されている。攻撃対象を決めて行動させることが可能。特別命令に守護場所を決めることができるとある。ゴーレムっぽいぞ。
攻撃対象の命令、基本行動の命令、守護場所の設定は核となる魔石とゴーレム素体の交配者が行う。守護場所の設定が有るのはゴーレムらしい。
四枚目は外部魔石から魔力の供給だ。核となる魔石の交配後、一日魔石を接触させて交配させる。
五枚目は知覚だ。魔力を薄く放出し、反射波で周辺地形、生物、魔物を区別して判断する。知覚された対象は情報を整理する魔法陣群を呼び出して処理するようだ。やはり、俺と同じく魔力の反射波で判断するようだ。知覚の共有も可能であろう。
六枚目は攻撃方法の設定だ。相手との距離、持っている武器で自動判断する。剣、槍、盾、素手が可能。剣を持つと剣の魔法陣群が起動、槍を持つと槍の魔法陣群が起動、盾を持つと盾の魔法陣群が起動、素手だと素手の魔法陣群が起動。
やはり、オブジェクト指向のプログラミング言語のような魔法陣群である。
七枚目以降も同じで、歩くとき、立つとき、座るとき、横になるとき、走るとき、物を握るとき・・・と延々と動作と参照する魔法陣群が記載されている。行動を司る部位は、変更は不要であろう。
七十七枚目から、立つ、歩く、握るなどの基本動作の魔法陣群が並ぶ。関数化された魔法陣だ。
概ね思った通りである。間違い無く、ゴーレムの魔法陣を作った大魔道師ショー・クルースはシステムエンジニアだったのであろう。彼がどうしてゴーレムを作ったのか、知りたい所である。
「うん、成る程。二枚目にゴーレム素体と核のペアリングの方法が書いてある。ゴーレム素体から核に魔力を流すと書いてある。魔力は交配者の魔力らしいね。交配者が命令出来る様になるらしい。たぶん、交配だかを行って、魔力を供給する魔石を一日、触れさせれば良いらしいよ。攻撃の方法を書き直さないと駄目かもね。剣、槍、盾、素手で攻撃可能なんだ。ここに大龍筒を加えないとね」
「よく理解出来るわね・・・」
「まあ同郷人だと言うことにしていてほしい。普通ではないんだけど、同じ事が出来る人が沢山いたんだよ」
「わかったわよ・・・」




