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冒険者物語  作者: 蘭プロジェクト
第1章 初めての転生
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冒険者の復帰

第十一話 冒険者の復帰


 俺はヴェルヘルナーゼとスラムを探索してから三日間、朝は剣術の稽古、昼からはミスリルを作って過ごした。


 ミスリルの指輪は耐毒、耐病とした。一部だけミスリルにして、装着した。髪留めも耐毒、耐病の髪留めにした。もう一つの指輪は耐寒、耐熱の指輪。常時魔力を消費するから、俺は使えない。


 出来上がった四日目の朝、ヴェルヘルナーゼには耐寒、耐熱の指輪を、キーアキーラには耐毒、耐病の髪留めを渡した。


 「この前の金貨百枚は高すぎるから、もう一つずつ渡しておくよ」

 「いや、高くはないが、卸価格だと認識しておこう。ありがたく貰っておく。これで耐熱、耐寒、耐病、耐毒の護りを得たことになるな」


 キーアキーラは素直に受け取ってくれた。


 「あ、ありがとう。ユージー君はちゃんと持っているの? あの変なネックレスしか残っていないよね?」

 ヴェルヘルナーゼは心配そうに俺を見る。


 「耐毒、耐病の指輪は作ったよ。でも耐熱の方は常時魔力を使うから、俺は持てないかな」

 「そっか。じゃあ貰っておくね」


 「気休めくらいに思っていて。毒沼とか行くんだったら、御守りだけでとか止めてね」

 「わかっているわよ。じゃあ指輪を付けるわね・・・左の薬指しか入らないわ・・・まあいっか」

 キーアキーラは髪留めを付けながら俺をみてにやっと笑った。やったな、と口は声を出さずに言っている。


 「ん? 何?」

 「い、いや左手の薬指に嵌めるのはいかがかと。婚約みたいだよ」


 「・・・! し、仕方ないじゃないの。冒険者をしていると怪我で指の太さが違うのよ。右の薬指は太いの! 婚約指輪じゃないの! グローブを嵌めるからいいの! ユージー君行くわよ!」


 「え? 何処に?」

 「今日から復帰でしょ! 薬草を採りに行くの! 君は後何回か薬草採りしないと青銅級になれないのよ!」


 「よし、お礼に私もいこう。薬草なんて十年振り、か」

 俺は久しぶりに革の鎧を着ようと思ったら、まごついてしまった。業を煮やしたヴェルヘルナーゼが着させてくれた。俺の前で膝をついてさ、着せてくれた。俺は凄く嬉しかったし、ずっと見ていると下から「何よ」って言ってくる顔が可愛くて、「可愛いよ」って何回も言ってやった。


 「久しぶりの冒険者スタイルですよ。革の鎧を着れなくて、ヴェルヘルナーゼに着させて貰いました」

 俺達は街を出て、森へ向かって歩いている。三人とも革の鎧を身につけている。ヴェルヘルナーゼは上にローブを羽織っている。


 俺とキーアキーラは上には羽織っていない。キーアキーラの鎧は体にピッタリとしすぎていて、ヒップラインが丸見えである。この素晴らしいお尻を好きに出来る男が居るかと思うと、嫉妬してしまう。


 「あら、着させて貰ったの? 本当は妻が夫に着させるのだぞ・・・指輪も貰っちゃったしな。あらあら」

 キーアキーラはお尻を左右に振りながら俺達の前を歩く。目の毒・・・いや眼福だ。


 「もう! 違うってば!」

 「ねえ、私のお尻はどうだ? なかなかだろう? 妾でいいぞ。本妻はこの子な」


 「あははは・・・」

 「もう! 見ちゃ駄目よ! こいつのケツはいかがわしいの! 毒よ!」


 「あらあら、妻じゃないんだったら見ても良いんだぞ? あ、指輪があるから毒でもいいんだっけ」

 キーアキーラは怪しく笑う。


 「もう! キーアキーラったら!」


 「あ、そうそう。どうして薬草採りに行くんだ? 私がいるから青銅級の依頼を受けてもよかったんじゃないか?」


 「キーアキーラ、ユージー君は薬草採りのプロなのよ。ギルドで話題になっていたのよ」


 「あ、ああ、薬草採りが凄い新人が半殺しでギルドに運び込まれたっていうアレか! 成る程!」

 キーアキーラは明るい顔で手を叩いた。


 「・・・なんですか? それ?」

 「白目向いて、口から泡を吹いていて、全員が死んだって思ったらしい」


 「え?」

 「だからうちは降格になったのよ。何で殺したのってメーニアさんに問い詰められたし・・・」

 ギルドに行きづらい・・・


 「ま、気にしないことだ。おかげでヴェルヘルナーゼと私が君のものになっただろ? ドラゴンの血が噴いて地が素材になるってもんだ。あ、実際には素材にならないからな」

 雨降って地が固まる? みたいな?


 「ちょっと、もう。ごめんね、キーアキーラは容姿と違って頭があれなの」

 「いや、ほら着きましたよ。採取しましょう」


 俺は森が見えてきたので周囲に魔力を放った。生き物の反応は二つ。俺達だけだ。俺は森に分け入り、フールー草を採取していく。結構沢山ある。数日間で元に戻ったのだろうか。


 「凄いな。私には全くわからない。確か一把で小銅三だろ。もう四十は採っている。銀貨に到達か。割が良い」

 「ホントね。スライム狩りより良いわ」


 キーアキーラとヴェルヘルナーゼは感心して俺を見ている。


 やはり、あったあった。ワラビ。ウドやタラの芽のあとはワラビが採れる。十把ほどで無くなった。他の山菜は全く無い。


 「これ、薬草じゃない?」

 俺は二人にワラビを見せる。


 「ほう。ビーロデじゃないか。迷宮の奥の宝箱でしか見つからないぞ。凄いな。金貨五枚か? 全くわからなかったぞ」

 「や、薬草採りって凄いのね。普通はフールー草を二、三採って終わりなのだけど・・・あっという間に金貨を稼ぐのね・・・私も薬草とろっと」


 俺はザックに薬草を入れると、しゃがんで薬草を探すヴェルヘルナーゼを見る。小一時間探すが、ヴェルヘルナーゼは採取出来ない。俺はフールー草をバンバン採取していく。他の種類は生えていない。


 「くー。フールー草が二つよ。やっぱり割に合わないわ」

 「俺は四十採ったよ」


 「天才ね。ユージー君は薬草採りで食っていけるわね。私の二つをあげるわ」

 「ありがとう」


 「たったこれだけの時間で金貨かあ。話題になるだけはあるね」

 ヴェルヘルナーゼはうんうんと頷いている。


 「じゃあギルドに行きましょう」

 三人で歩いてギルドに向かう。門番の騎士は色男! と叫んでにやにやしていた。


 俺達は石造りの建物、冒険者ギルドに来た。まだ午前中である。


 「こんな時間に来るなんて初めてだわ」

 「割が良いでしょう? 昼からのんびり出来て良いんですよ」

 俺はヴェルヘルナーゼに自信満々で答えると中に入った。


 「ユージー君! 大丈夫だった?」

 受付のメーニヤは立ち上がって俺を見た。


 「あの女と付き合っちゃ駄目よ。殺されるわよ」

 メーニヤはヴェルヘルナーゼを指差した。ヴェルヘルナーゼは苦虫を噛みつぶした顔をしている。


 「いやいや、お世話になってますから」

 「そう? 気をつけるのよ。で、薬草?」


 「ええ。これです。ビーロデが十把」

 俺はワラビを取り出し、手渡す。


 「本当だわ。銀貨六の高級品ね。あとは?」

 「フールー草が八十五です。銀貨二、大銅五、小銅五ですね」


 「じゃあ合わせて金六と銀三にしておくから。流石ね」

 「ありがとう、今日は帰りますよ」


 「あと一回で青銅になるから、明日も何か採取してきてね」

 いつの間にか、俺はギルドに居た冒険者に囲まれていた。


 「薬草で金貨か・・・」

 「すげえな・・・」

 「エルフのパンチスゲェ」

 野次馬は俺に賞賛の声を上げる。


 「俺にもパンチしてくれ。そうしたら薬草採りで金貨が狙える」

 「嫌よ。あっち行ってよ」

 冒険者がヴェルヘルナーゼと話している・・・パンチが人気のようだ・・・


 「鉛級の癖に、鉄拳と女豹をはべらかすのかよ・・・」

 女豹はキーアキーラか。鉄拳はヴェルヘルナーゼか・・・面白い。


 「鉄拳って・・・」

 「五月蠅い! もう!」

 ヴェルヘルナーゼの二つ名のようだ。


 「ボウズ! 元気になったか! はっはっは! ヴェルヘルナーゼは頭を冷やせよ!」

 奥で厳ついオッサンが声を掛けてくれた。初日に短剣と革の鎧を売ってくれた人だ。


 「もうギルマスまで・・・帰ろう!」

 ヴェルヘルナーゼが顔を赤くして外に出た。俺達は三人で広場に行き、串焼きや石榴を買って食べた。孤児の女の子が来たので串を一つあげると、もの凄い笑顔で笑ってくれた。心が癒される。


 女の子のバイバイを聞きながら、俺達は楽しく午後を過ごした。俺はヴェルヘルナーゼとキーアキーラという美女二人に挟まれて座り、楽しかった。向こうの世界ではあり得ないことだった。

皆様のブックマーク及び高評価にて、

2020年3月27日付け日間ファンタジーBEST300入りを果たしました!

292位でした。

ありがとうございます!

更新ですが、流石に一日三話は難しいので、一日一話を目標に更新をしたいと思っています。

よろしくお願いいたします。

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