その日龍馬は
一ノ瀬龍馬は日本人の一ノ瀬雲仙を父に、日本人の桜井龍子を母にもつ、純血の日本人だ。
南海トラフ地震により、太平洋側の海沿いはほぼ全滅した。かつての関東地域は群馬県、栃木県以外の地域はほぼほぼ壊滅した。津波が埼玉をほぼ飲み込んだのである。これにより運良く生き残った人々も内陸に移り住むようになり、内陸に人口が集中するようになった。また、日本海側の海沿いの人々も津波を恐れ内陸に移り住む傾向がみられた。
彼の父、一ノ瀬雲仙は雲馬地域に多くの土地を持っていたため、多くの財産、権利が集まった。
地域ごとに遺伝子の特異な進化が起こった。
この進化は地震発生後に確認された。龍馬もそのひとりである。
南海トラフ地震発生時は普通の家族であった。
「りょーま!ごはんできたわよー」と母がおこしにきた。
「まだ、寝てたいー」また、布団に入る龍馬だが、母に布団を剥がされやむなく起きることとなった。母は近所では有名な美人かあさんとして有名である。
「ノーブラで歩くのやめろよな」と龍馬が言う
「かあさんは忙しいの、ブラキツいし、龍馬がまた、吸ってくれるかなって、てへっ」
「…」龍馬は死んだゴキブリを見るような目で母を見た
「そんな、そんな目でかあさんを見ないでー!」
「朝から騒がしいな。」父がコーヒーをすすりながら言う。コーヒーをのみ終えた父はそのまま畑仕事に向かった。
龍馬も朝御飯はそこそこに家の前に置いてある自転車に股がり最寄りの駅まで自転車を進ませた。最寄りの駅は朝でも、一時間に一本来るか来ないかの小さな駅である。かろうじて、ICカードは対応している。
いつもの朝、いつも通りの朝、いつもの駅員さん、いつも同じ電車にのるかわいい女の子を呆然と眺め、ウォークマンから聴こえる洋楽にあわせ、少しだけ体を揺らしホームに立っていた。
遠くの方で地鳴りが聞こえた。音楽を聴いているにも関わらず。かつて、聞いたことのないような大きさの地鳴りである。イヤホンを耳から外し、周りを見回す。周りには自分と名前も知らないいつも、同じ電車にのるかわいい女の子だけだ。
しばらく地鳴りを聞いていると地面が揺れだした。立っているのもやっとな状況である。その時、女の子がホームから落ちた。
「大丈夫ですか!!」龍馬は必死に叫んだ。
女の子は足を挫いてしまい立ち上がれないでいる。
「い、痛い…」と、女の子が呟いた。
ラグビーをやっている龍馬はがたいだけはよかった。ホームから降りさっと、女の子をすくいあげた。
「これ、おれイケメンだ。」と内心思いながら。顔が気持ち悪くにやついていることに気づかず…
女の子の顔が青ざめている。
「やばいやばいやばい、私へんな人にお姫様抱っこされてるうわぁしにてえー」とハラハラしていた。幸いにも周りには人はいなかった。いやいや、そんな事考えてる場合じゃないよ私!
龍馬は女の子を近くのベンチに座らせ自己紹介をはじめる。
「俺、一ノ瀬龍馬っていいます!この駅から30分くらいの高校に通ってます!高校二年生です!」
女の子もしぶしぶ自己紹介した。
「私は、霧島明日香。高校三年生。」
と言うと、少し間が空き
「君、毎日私のことへんな目で見てる変態くんだよね?」
「……っ!」龍馬は頭が真っ白になった。まるで、雷に打たれたかのように。
と、同時にからだのなかで、何かが変化するのを感じた。