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校長先生の話

長いんだよな。 すごく長いんだよな。 毎回、退屈なんだよな。 でも変わったし。 新しくなったし。 二年生になって。 校長変わったし。 前よりマシになってるかな。 どうかな。 きっとなってるよね。


直立苦手なんだよな。 普通に立つことが苦手だし。 動いちゃうよね。 歩いた方が楽かもね。 ぐるぐると体育館を歩きながら。 校長の話を聞く。 それがいいかも。 それが僕には合ってる。 でもないか。 僕が良くても。 まわりから見たら奇妙か。


なぜ気分悪くなるのか。 なんでそんなに体調不良になる。 校長先生の話が長いだけじゃないな。 退屈さかな。 まあよく分からない。 立ってられなくなるって不思議。 一番立っている動物は人間なのに。


踏ん張れるかな。 倒れないようにしないと。 目立ってしまう。 まだ倒れたことはないけど。 前の校長より長かったら分からない。 あとは話から面白さを見つける。 それが重要だ。 どれだけオモしろさを。 見つけられるかだ。 




校長が来た。 下を向きながら。 何か口を動かしながら。 声は聞こえない。 小声なのかもしれないし。 口をただ動かしているだけかもしれない。 動きは安定していない。 首も安定しないし。 視線で全空間を塗りつぶしている感じ。 そんな感じだ。


【校長の山賀伸治郎です。すみません】


謝った。 一息目で謝った。 一言目ではなかったけど。 いきなり『すみません』だったら。 別の意味で倒れてたよ。 二文目でホント良かった。 会釈が多い。 ここまでで五回会釈した。 今までとは違うタイプだ。 ネガティブ系だ。 期待はしている。 面白さが見つかりそうだ。


【新たな学年ですね。すみません。自分のことで精一杯で。あっ、言葉を送ります】


『すみません』が二桁に届く。 それは確実だ。 もっと行くかもしれない。 確変だ。 確率変動になるかもしれない。 三桁もありえそうだ。 まだ気分が悪くない。 むしろ気分がいい。 原因は面白さだったか。 校長でこんなに違うか。


この校長は緊張しているな。 うまく喋れていない。 噛んだり、詰まったりして。 絶不調かもね。 校長がみんな好調なわけないよね。 いや、不調じゃないかも。 これが普通なのかも。 うん。 誰かの好調も。 見る側には不調に映ったりする。 それだ。


【負けてもいいんだよ。逃げてもいいんだよ。あっ、響かなくてもいいです】


校長がネガティブすぎる。 でも言っていることは分かる。 むしろ、いいことかもしれない。 後ろ向きのようで、前向いてる。 まさに、前髪顔隠しオンナと一緒。 違うか。 違う気もするが。 そんな感じだ。 校長の目線が上がらない。 まだ、非常口の緑色より上を見てない。 


退屈にならない。 それくらい面白い。 色々言っている。 【私なんかもう】って言ってる。 【少し落ち着かせてください】とかも言ってる。 下に用意された水飲んでる。 隠れているつもりか。 全然出ちゃってる。 ペットボトルの天然水だ。 口をつけない滝スタイルの飲み方だ。 沸いた。 今までで一番沸いた。


まわりを見る。 みんな優しい微笑みでいる。 たぶん、みんなも好意持ってる。 時間なんてもう忘れた。 前は一回の校長あいさつで。 必ずひとりは倒れていた。 でもこんなに楽しい。 だから、今日は誰も倒れない。 みんな無事に帰還する。 きっとそうだろう。




≪バタン≫




倒れる音がした。 そして、校長が視界から消えた。 校長先生の方が倒れたのだ。 生徒より先に倒れた。 みんながザワついた。 でも大丈夫だと感じた。 すぐに立ち上がったから。 息を吸い忘れたとかかも。 未来は明るい気がした。 誰だってツラい。 ツラいのは、生徒だけじゃないってことか。

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