名乗る
この三人での食事は、初めてだ。食事も初めてだが、ひとりの人とは、会うのも初めてだ。ちなみに、ここは友達の家だ。
会うのも初めてで、言葉のやりとりも今日が初めてだ。ただ、噂はたっぷりと聞いていた。
もうひとりの友達とは、小学生からの付き合いだから。面白い人がいるという噂が、頻繁に入って来ていた。
友達の友達の田中正一さん。すごく、いい人そうだ。優しそうだ。雰囲気がいい人で良かった。
♪プルルルル プルルルル
電話が鳴った。田中正一さんの携帯だろう。すぐに、田中正一さんは電話に出た。
「はい、デンちゃんです」
デンちゃんと言っていた。田中正一の【田】は、デンと読む。だから、デンちゃんか。
電話が終わった。
「ごめん。電話が来ちゃって」
「大丈夫ですよ」
♪プルルルル プルルルル
電話が鳴った。また、田中正一さんの携帯だ。すぐに、電話に出ていた。
「はい、ストレート田中です」
ストレート田中?なんでだ。もしかすると、あれか。田中正一という名前の漢字に、曲線がまったくないからか。直線しかないからか。
電話が終わった。電話が少し多い気がする。
♪プルルルル プルルルル
また電話だ。田中正一さんは、またすぐに出た。
「はい、正田申です」
また、違う名前を名乗ってる。なんでだ。田と正は普通に使って、中と一を合体させて【申】にしたのか。ショウダサルか。ペンネームだろう。
すぐに電話は終わった。田中正一さんに、ゆっくり話を聞きたい。
♪プルルルル プルルルル
「はい、ヒカリです」
これは、分からない。憶測でしかないが、正一⇒ショウイチ⇒小一⇒小学一年生⇒ピッカピカ⇒ヒカリ、となったのだろう。
♪プルルルル プルルルル
電話が終わったタイミングで、また来た。田中正一さんに、電話がまた来た。
「はい、たなぽよんです」
表示される名前を見て、すぐに判断しているのか。瞬時に、名前を使い分けている。すごい。
これは、ギャルから呼ばれている名前かな。ギャル以外にこう呼んでくる人は、少ないだろうから。
気付けば電話は、終わっていた。話せるチャンスだと思い、口を開こうとした。でもまた、電話が鳴った。
♪プルルルル プルルルル
「ライトターナーですが」
田中正一さんの、正という字からライト。ターナーは田中からだろう。外国人の友達が、付けた訳ではなさそうだ。
「ちょっと、すみません。用事が出来まして」
田中正一さんは、ライトターナーとして、友達の家を出て行った。謎は謎のままだ。




