マスクはボイスチェンジャー
マスクが必須な世の中になってしまった。
ウイルス、微細な粒子、有害なガス。
それらが、地球を包んでしまった。
特殊な密室の中でないと、マスクは外せない。
だが、一ヶ月後くらいには終息を迎える。
そう、ニュースは言っている。
久し振りに友人と会うことになった。
「久し振りだね」
「そうだね。もう、3ヶ月とかだよね?」
「あれっ? そんな声だっけ」
友人の声は、いつもより低かった。
男性の声かもと、思うほどだった。
「えっ、普通だよ」
「いつもはキンキンしてるのに、今は重低音だもん」
「あっ、マスクしてるからだ」
推測だが、マスクに声を変える何かが、仕込まれているのかもしれない。
幼馴染みで、ずっと一緒だったから、声を分かっていないはずがない。
「そのマスク、いいヤツ?」
「うん。かなりいいヤツだよ」
ここは、特殊な密室だ。
ネットでなんとか予約した、きちんとした密室だ。
「マスク外そうか?」
「うん、そうだね」
二人して、マスクを外して、傍らに置いた。
「最近どうなの?」
「うん。仕事も恋愛も順調だよ」
「あっ、そうなんだ。っていつもの声に戻ってるよ」
「そうだね」
懐かしい声に、涙が出そうになった。
やっぱり、いつものキンキン声の方がいい。
「普通のマスク?」
「うん。マスクしていると、口が隠れて緊張しないから、声が変わらないの」
まさかの、ベースの方が重低音だった。




