尖ったアゴを隠せば全ては丸く収まる
コンプレックスだった。
ずっと、コンプレックスだった。
他の人と違うことが、ストレスになっていた。
なんで自分だけ、こんなに長いんだ。
なんで自分だけ、刃物のようにシャープなんだ。
そんなことを、ずっと考えていた。
最近は、考えないように考えないようにと、自分に言い聞かせていた。
なのに、刃物のようにシャープなアゴが原因で、壁を作られるなんて。
しかも、それが僕の一目惚れの相手なんて。
信じたくなかった。
「こっち向かないでください」
「えっ?」
「せ、せ、先端恐怖症なんです」
「ごめん」
嫌いなわけではないと、言ってくれた。
アゴ以外に、何の恐怖もないと言ってくれた。
でも、シャープなアゴが、自分自身を傷付けてしまうことは、避けられないみたいだ。
マスクをつけた。
母が作った、顔の下半分を全て、綺麗に隠してくれるマスク。
それを付ければ、逆三角形の顔が、少しは丸く見えなくはなかった。
「おはよう」
「うん。おはよう」
「そのマスク、似合ってるね」
「ありがとう。大丈夫なの?」
「うん」
「嬉しい。向かい合って話せて」
「私も」
一緒に、写真を撮ろうと言ってくれた。
笑顔がちらほらと、ここには溢れていた。
その女子は、腕を伸ばし、スマホのカメラのシャッターを切った。
撮った写真を見せてもらうと、綺麗に美しく収まっていた。
その写真には、何の角もなかった。




