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愛の小槌

五十音の全ての文字一字で相づちをする女友達との会話劇。

「昨日は有名なケーキ貰って食べたの。あの最近出来た駅前のケーキ屋さんの」


「あー」


「知ってるでしょ。あそこのケーキは開店の一時間前に並んでも手に入らない時もあるくらいなんだって」


「いっ」


「驚くよね。そんなのこの辺りじゃ聞かないしね。そのケーキが、なんと、ここに、今、ありません」


「うっ」


「ごめんごめん、ウソウソ。本当はあるから安心して」


「えっ」


「たまたま、あまり混んでなかったから買えたの。スゴいでしょ。ちょっと待ってね。今、出すね。それがこれです」


「おー」


「意外と大きくて、味も絶品なの。それで、値段も超安いんだから。なんとこれで350円だよ?」


「かーっ」


「安すぎるよね。まあまあ食べてみてよ。絶対美味しいから」


「きーっ」


「ねっ、美味しいでしょ?唸るくらいだから、相当美味しかったんだね」


「くーっ」


「それ、仕事終わりの居酒屋で一口目のビール飲んだときの唸りじゃん。これ、相当気に入ってるでしょ?じゃあ、ケーキ代の350円から割り引いて、100円でいいよ」


「け」


「ウソだよ。ポカンとしないでよ。もちろんお金なんて取らないよ。タダでいいから」


「こー」


「ゴメンゴメン。良かったーっ!生き延びたーっ!みたいな顔しちゃって、本当に可愛いね。ねえ、ゲームやろうよ、テレビゲーム」


「さぁ」


「気合い入ってるね。よしっ!すぐ始めようか。絶対に負けないからね!私は、ゲームしか得意なものがないからさ」


「しっ」


「ゴメン、少し喋りすぎた。うるさかったよね。じゃあ、始めようか」


「すぅー」


「深呼吸ね。深呼吸をして心を落ち着かせているわけね。かなり真剣だね」


「せぇっ」


「気合いを入れたのか。流石だな。気合いの入れ方は独特だけど、気持ちが感じられるよね。でも、負けないからね」


「そう」


「余裕そうだけど、このゲームに関しては、完璧に仕上げてきたからね。負ける気がしないね」


「たぁ」


「キャラクターに乗り移って、自分が戦っているみたいに声を出しちゃうタイプね。私、絶対負けないから」


「ちっ」


「どうよ。舌打ちするくらい、私って手ごわいでしょ?」


「つー」


「なによそれ?新しい呼吸法?落ち着くための息遣いってヤツか?」


「てい」


「クソッ。油断してしまった。まるで魂が乗り移ってるかのような動きだ」


「とう」


「ヤラレタ。格闘ゲームだけは自信があったんだけどな。かなり強かったよ。えっ、罰ゲームしようよ!みたいな目でこっち見ないでよ」


「なっ」


「分かったよ、やるよ!モノマネとか?」


「にっ」


「笑みがこぼれるくらい見たいんだね。モノマネ好きだもんね。動物のモノマネでいいよね?」


「ぬー」


「分かってるよ。先生のモノマネが好きなことは分かってる。私たちにしか分からない先生のモノマネが一番笑えるもんね」


「ねっ」


「うん。じゃあ先生モノマネいくよ。今回は新作のモノマネ持ってきました」


「のー」


「あっそれは、世界史の高山先生が怒るときのモノマネだよね。うまいね。でも私がやるのはそれとは違うやつだよ。じゃあ私もやるね。『ちょちょちょちょちょちょちょちょ、ちょっ!』どお?」


「はぁー」


「駄目だったか。気に入らなかったか。虫が集ったときの高山先生のモノマネなんだけど」


「ひーっ」


「えっ、どうしたの?私に何か付いてる?もしかして虫?ちょっちょっちょっと」


「ふっ」


「何笑ってるのよ?私は高山先生より強いんだからね。なってないよ。高山先生みたいにはなってないよ」


「へぇー」


「そうだよ。だって虫は平気だしね。イナゴとか蜂の子なら食べられるからね」


「ほぉー」


「蜂の子も正真正銘の虫だよ。蜂の子でも食べられれば立派じゃんね。今持ってるから食べてみる?」


「まぁ」


「どうしたの?強気じゃなくなったけど。目を閉じて口を開けてよ」


「み」


「ビビってるよね。そんな弱いところ見たことなかったから、新鮮だな」


「むっ」


「怒らないでよ。分かったから。もうしないから。調子のったペナルティーとかは無しね。えっ、食べてくれるの?」


「めぇ」


「今うまいって言った?イナゴ美味しいもんね。私は今は食べたくないけど」


「もー」


「どうしたの?何、怒ってるの?」


「やっ」


「あっ、イナゴの足が喉に刺さったんだね。そりゃ怒るよね。ドンマイ」


「ゆ」


「ごめん。気が利かなかったね。今、お湯を用意するからちょっと待ってね。はい、どうぞ」


「よっ」


「褒めてくれているの?ありがとう。察し能力は付いてきたからさ」


「らぁ」


「えっ?どうしたの?あっ、まだイナゴの足が喉に刺さってたの?」


「りぃ」


「お湯がいい?他のがいい?」


「るぅ」


「ちょっと待ってね。今用意するから」


「れぇ」


「そんな苦しいの?ドロッとしたものがいいかな?スムージーならあるから飲んで」


「ろぉ」


「あっ、今度こそ取れたか。それはよかった」


「わー」


「嬉しいよね。違和感から解放される時ってかなり嬉しいよ。じゃあ、テレビゲームに戻りますか?」


「をー」


「絶対に負けないからね。絶対勝つから」


「んっ」


「えっ、もしかして、イナゴの足まだ取れてなかった?」

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