いいくすり
訪問販売のおじさんが私の家にやって来た。
どうやら薬や健康食品を売り付けるタイプの訪問販売らしい。
「こちらは記憶力にいい薬です。錠剤タイプです。」
あいにく私は何でも覚えているので必要はない。
「こちらはお肌にいい薬です。顆粒タイプです。」
あいにく肌の艶にも自信があるので要らない。
「こちらは髪の毛にいい薬です。お尻から注入するタイプです。」
髪の毛は褒められたことがないが特に必要はないと思っている。
「こちらは泌尿器にいい薬です。首の後ろに貼るタイプです。」
泌尿器のトラブルもないから要らない。
「こちらは目にいい薬です。おヘソに塗るタイプです。」
眼鏡があれば何でも出来るから買わなくてもいい。
「こちらはあかぎれにいい薬です。足首に巻くタイプです。」
あかぎれはなったことが無いからいい。
「こちらは水虫にいい薬です。脳天に載せるタイプです。」
水虫はどういうものかさえもよく分からないから要らない。
今の私にはどんな薬も必要ない。
私は今、ある疑問に行き着いた。
よく考えたら症状と薬をつけたりする場所がかけ離れすぎている。
それで本当に効くのだろうか。
「・・・・・・液体で頭から被るタイプです。」
「・・・・・・気体で空気中に放出するタイプです。」
「・・・・・・衣をまぶして揚げてから飲むタイプです。」
ヤバい。
どんどん呑み込まれていて、薬を買ってしまいそうな自分がいる。