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私、伏線回収しないので

私の母方の祖父は大物政治家だ。政治の世界では知らない者がいないほどの手腕があった。


祖父の遺影から離れてキッチンへと向かう。ヤカンにたっぷりの水道水を入れて火にかける。


ここは築40年の古民家で、壁の所々に細かいヒビがある。壁には、何で汚れたか分からないようなシミが、いくつも見受けられた。


リビングに進むと、床には散らばったポップコーン。テーブルの上には、小さく広がる水溜まり。カーペットには、纏わりつく異常な量の髪の毛があった。


プルルルル、プルルルルと電話が鳴る。家に来るはずだった友達の一人が、来れなくなったらしい。


テレビをつけると、近所で起きた連続放火事件のことが取り上げられていた。リモコンを何度も押してチャンネルを変えても、ずっとその事件のことしか扱っていなかった。


飲み物が飲みたくなりキッチンの冷蔵庫に向かう。冷蔵庫を開けると、知人から三日前に貰ったザクロジュースの賞味期限が切れていた。


よく見たら今日中ではなくて、一年前の今日だった。それなのに、今日の朝は気付かずに飲んでしまった。


リビングで突然、触っていないのに壁に掛けてあったカレンダーが落下した。立て続けに、耳からイヤリングが落ちた。


しゃがんで、そのイヤリングを拾おうとした。すると、ベッドの下に人陰のようなものがある気がした。





私は、ハッと声をあげた。


物語が思うように紡げない。


ペンがスラスラ動かない。



伏線ぽいものを撒き散らすのは簡単。


得意だから、いくらでも撒き散らせる。


だが、回収することには何十倍もの労力を要する。



私は、キッチンに向かい、ヤカンにたっぷりの水道水を入れて火にかけた。

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