オダテ屋敷
〈屋敷行こうぜ、屋敷!〉
[屋敷って何だよ!オバケ屋敷みたいなヤツ?]
〈まあ、おおまかに言えばそんな感じだよ〉
[そっか、ならいいよ!行こっか!]
オバケ屋敷は子供の頃に一回入ったきり、入ってない。
特にオバケ屋敷に苦手なイメージはない。
しいて言うなら、オバケ屋敷で、全ての邪気を吹っ飛ばしてしまいそうなほど、大声を出している女性は苦手だが。
友達に連れられて目的地に着いたが、この建物はオバケ屋敷にしては、外観がかなりハッチャケ過ぎている気がする。
派手で明るい雰囲気を醸し出していて、お化け屋敷の印象の真逆を行く屋敷だ。
まあ、暗いだけがオバケじゃないし、不気味さだけがオバケ屋敷ではないのだが。
友達に導かれるように進み、券を買って中へ入った。
イメージと違った。
でもある意味イメージと合いすぎていた。
オバケ屋敷の真逆だったが、外観のイメージをそのまま再現しました、みたいな、キラキラ感があった。
中は豪華すぎてパーティー感もある。
もう、とにかくキラキラしていて、めっちゃノリノリの音楽と笑顔が溢れていた。
オバケ役の人とかは全くいなくて、ハッチャケている人しか存在しなかった。
オバケ屋敷にしては、外観がハッチャケてると思っていたから、想像通りといえば想像通りだ。
「落ち着いた色使いの服装で、あなたに凄く似合ってますね」
[ありがとうございます]
急に僕の外見を褒めてきた。
まあ悪い気は全然しなかった。
「出身地はどこですか?」
[栃木です]
「栃木はすごくいいところですよね。日光は何回も行きましたけど、とても美しかったです」
出身地の質問をしてきて、色々と褒めてきたり、話を広げてきた。
「趣味とかあります?」
[読書とかですかね]
「読書は知識も身に付きますし、いいですよね。趣味が読書の人、すごく憧れます」
出身地を褒めたり、趣味を褒めたり、聞きやすさまで褒めてきたり、まんまと気持ちよくなっていた。
美味しそうな料理もたくさんあって、何回も勧められた。
「特技あります?あったら見せてください」
[ジャグリングなら出来ますけど]
「ジャグリングが出来るんですか?いいですね。そこにミカンがあるので、見せてください」
僕は三個のミカンを使ってジャグリングをした。
「すごいですね。私たちは二個でも出来ないのに、三個をあんなに簡単にさばいちゃうんですからね。もう神の領域に突入しちゃったんじゃないですか?」
特技をさせて、それを褒めてきた。
身の毛もよだつほど褒めてきて、ある意味オバケだった。
入る前の想像とは全く違うものだったが、これはこれで楽しめた。
オバケ屋敷ではなくて、存分におだててくれるオダテ屋敷だったが、癖になるしこれも悪くはない。