お湯、来なさい!
芸能人として、仕事がちゃんと出来て、本当にありがたい。
今までは、アルバイトをしないと、生活をやっていけなかったから。
プールロケは、大変だったが、とても楽しかった。
プールの仕事のあとなので、シャワーを浴びる機会があった。
僕は、シャワーを浴びる時に、美容室風に上を向いて、頭を洗う癖がある。
だから、その時も、いつものように、背中を思い切り反らせて洗った。
上を向いているので、もちろん、目は開けたままだった。
目を開けながら洗っていると、頭の上の方に、人影のようなものがいた。
上からシャンプーを垂らして、無限に洗い流せなくするドッキリをする予定だったらしい。
その時のドッキリは、大失敗に終わった。
一ヶ月後の今、僕はかなり怪しいシチュエーションのド真ん中にいる。
あの惨事を忘れかけていた時に、怪しい現場に遭遇してしまった。
前にテレビで見た、楽屋の机からお湯が噴射してくる、ドッキリのシチュエーションによく似てる。
机の板がいつもより分厚い気がして、なんか怪しい。
これは、ドッキリかもしれない。
あの日、出来なかったリアクションを、解放するときだ。
今度こそは、ちゃんとリアクションをして、ドッキリを成功させよう。
僕は、お湯来なさい!と身構えた。
しかし、お湯も、他のものも来ないし、何にも起こらない。
これは、ドッキリではなかった。
ただの、いつも通りの日常だった。
集中力は、一気になくなり、息を思いっきり吐いた。
そして、椅子にもたれて、天井を見上げた。
すると、そこには、四角く取り外せるような、不自然な場所が、たった1ヵ所だけ存在していた。