手相占い
かなり料金の安い『手相占い』に来たけど、ヤバイくらいに怪しい。
「運勢はどうですか?」
「“けっこんせん”がいい場所にありますね」
「“けっこんせん”ですか?」
「はい。5年後くらいに結婚できますよ」
「本当ですか?良かったです」
「あっ、あなた“やまのてせん”がありますね」
「えっ、その“せん”は、どんな“せん”なんですか?」
「山手線のように、人生がグルグルしちゃうよ、みたいな“せん”です」
「あまりよくない“せん”なんですね。そうですか」
「他にも珍しい“せん”がありますね。“ちへいせん”という“せん”なんですけど」
「これはどんな“せん”なんですか?」
「地平線のように、いつもハッキリしないよ、という人に表れる“せん”です」
「いい“せん”はないんですか?」
「ありますよ。“くるーずせん”という“せん”がありますよ」
「これはいい“せん”なんですよね?」
「はい。クルーズさんのように、スパイ関係のことに物凄い能力を発揮する“せん”です」
「これって、珍しいんですか?」
「はい。私は長年見てきて、あなたで二人目です」
占い師が、自分で考えたような変な名前の“せん”の説明ばかりしてくるな、と少しだけ思った。
でも、あまり気にしていても仕方がないので、あまり気にしないことにした。
「ああ、すごい」
「どうしたんですか。もしかして幸運な“せん”ありました?」
「はい。“りんぱせん”という“せん”がありました。これはすごいですよ」
「“りんぱせん”ですか?」
「はい。“倫理的にはパーフェクト”の略で、簡単に言うと“素晴らしい人生”が送れるみたいな“せん”です」
「そうですか。よかったです」
「他にも“けっさくせん”という“せん”がありましたよ」
「たくさんいい“せん”があって、本当によかったです。それでこれはどんな“せん”なんですか?」
「傑作選のように、いいものだけを選りすぐりがち、みたいな性格の人に表れる“せん”ですね」
「そうですか。面白いですね。今日は来て本当によかったです」
「ちなみに、今一番アツい“ころんびあせん”もありましたよ」
「今一番アツいんですか?嬉しいです。ちなみにどんな“せん”なんですか?」
「とにかく、半端ない人に表れる“せん”です」