第3話 Vtuberはじめます
「ええと、カメラを設置して、マイクも……。こんな感じだったでしょうか」
深夜の社内に、ひとりごとだけがぽつりと浮かぶ。
「動画を撮る練習も、編集の練習も、きちんとできたはず。……大丈夫!」
日中は多くの死神が数多言葉を交わしながら仕事に励む。喧騒の中ではとても、動画を撮影できない。
ともなると、必然的に、撮影ができるのは深夜のみ。
名目上は管理職の弔野に、当然残業代など発生しない。
「全く……。ただでさえ現世広報は私しかやる人がいないのに、もし倒れでもしたらどうしてくれるんでしょう」
文句を言いながらも、表情は楽しげだ。
「最初の動画だから、自己紹介して、結社の紹介して、笑顔も多く……うまく笑えるかな……。
あ、一応、側に原稿も貼っておこう」
失敗したくないと見栄も張る。
どうせ原稿通りになんて進まないのに、と笑いながら、カメラの横に貼り付けた。
「目標も書き換えなきゃ。もう14人の方が登録して待っててくれてるんだ……
500人にはまだまだ遠いけれど、最初の1歩としては充分ですね!
……頑張って、目標達成しよう」
そうすれば、画面の向こうの人たちと同じ世界に行けるから。