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第四十四話:護衛開始、戦慄のコンサートpart3

 





「皆ー!今日はボクのコンサートに来てくれてありがとー!!!」




「「「うおぉぉぉぉぉぉお!!!!!」」」「「「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」




「わわっ!」


 す、凄い歓声だ!まるで地鳴りみたいだよ!

 私、アイドルのライブとか見に行った事無かったから分からなかったけれど、こんなに熱くて凄くうるさいんだね!

 耳を塞ぎたくなっちゃうけど、そんな事したらファンの人達に何されるか分かんないし……あ、でもアーラさんの歌声ってとっても綺麗なんだ。楽屋じゃ何かツッコミがキレてる人かな?って思ってたけど……まぁ実力が無かったらアイドルなんてやってられないか。


 そんな事より、私だけでも警戒しないと。多分マナちゃんはすっかり忘れちゃっているだろうし……それにリクト君の事も気にしなきゃいけないし、やる事は沢山あるよ。


「おーい、リクト君聞こえるかなー?」

「あぁ、どうしたんだ?」


 良かった、リクト君は反応はしてくれる。これなら少しは話が出来るかな?周りの人達はアーラさんに夢中だしね。


「リクト君最近何か困った事とか無い?」


 まずは身近な所から攻めていく、私にできるのはリクト君の悩みを聞いてそれを解決する……正直自信はあんまり無いけど、私ならできるよね!……ね?


「困った事?そうだなぁ……困った事というかさ、なんて言うか……もっと平和に暮らしたいかなぁって思ってて、天道十二門とか魔王とか関係無くさ、もっとこの世界で自由に暮らしたいなぁと、思っているんだけど……なーんで変なのが来るんだろうなぁ、泣きたくなるよ」


 悩み事相談しようと思ったら、思ったより切実な願いだったァ!?ど、どうしよう!?リクト君の考えている事は私も少しは分かるけど、勇者として呼ばれたからには絶対そういうのと戦う事になるし……あわわ、というかリクト君!変なのって言わないの!


「それに、アマネも元の世界に帰す方法も見つけないといけないしさー」




「嫌だ、私は帰りたくない」


「うぇ?」


 ……………………さってと。


「それより、リクト君!この依頼が終わったら何時もの毎日に戻るんだよ!カズト君をフォローしつつ私達は私達の仕事をすればいいの!もしも会場が襲われたりしたら、私達が守らないといけないんだからね!」

「あ、アマネ?」

「だから……もう二度と言わないで」



 元の世界に私を帰すなんて、もう二度と……言わないで。






「わ、分かったよ」

「うん!よろしい!」


 それにしても、リクト君は本当に冒険者に向いてる性格だね。最初の方でもこの世界を隅々まで冒険したいって言ってたし、やっぱり子供っぽい所があるね!

 うん、これは私が支えないといけませんなぁ!


「…………」


 何かリクト君がまた黙っちゃったよ、でも他に悩みがあるならそれを解決してあげたいし……うう、人の相談に乗るのって難しいなぁ。


「アマネ、感じないか?」


 ふぇ?感じないかって……何が?


「この魔力……間違いない、ネルの魔力だ」


 そ、そんなのが分かるの!?というかリクト君相変わらず無表情で淡々と言ってるから若干怖いよ!?

 というか、ネルちゃんの魔力を感じたって事は……とうとう天道十二門が来たの?駄目、怯えちゃ駄目。私が……私達がしっかりしないと!


「確かプログラムじゃまだ昼休憩には二曲あるんだよな?」

「う、うん。ランナウェイ!とスピリットハート、この曲が終わったらお昼休みだよ?」

「…………よし、俺は舞台裏のカズト君にこの事を知らせてくる、アマネはマナと一緒に観客の避難とアーラさんの護衛を頼む」

「そ、そんな!?駄目だよ!危ないよ!」


 嫌!今のリクト君と離れたくない!何か……とっても嫌な感じがするから!今のリクト君と離れたらきっと良くない事が起きちゃう!


「平気だよ、万が一の時はカズト君を盾に俺は逃げる」

「いやそれはそれでどうかと思うんだけど!?」

「安心しろ、天道十二門を倒す事は俺達の目的じゃないんだ」


 そ、それはそうだけど……!


「だから、アマネは皆を頼んだぜ」


 あっ、行っちゃう、リクト君が。


「待って、リクトく__」











「皆ー!盛り上がってるぅ!!?」





「「「「うおぉぉぉ!!!もっちろーーーーん!!!!ー」」」」


 う、うるさいよ!あぁっリクト君が行っちゃった!で、でも観客の人達も守らないといけないし……何で?何でこうなっちゃうの?駄目だよ、何が分からないけど……嫌だよ!リクト君!!






 ☆ ☆ ☆





「カズト君!いるか!?」

「君はっ!?何故ここにいる!」


 持ち場を離れたのか?何でこのタイミングで君が来る!?


「ふぇ?ぬはぁ!?何でです!?アルタイルさん何でいるですぅ!?あははー、出来ればー、私の痴態はー見ないでくれるとー?嬉しいなって?」

「安心しろ、もう手遅れだ」

「ごふぅ!?」


 あ、マナさんが血反吐吐いて倒れていく……いや、それよりも彼の方が大事だ。一体何の用事が?


「カズト君、奴らが来た」

「ッ!」


 奴ら……そうか、天道十二門が来たというのか。それにしても何で彼がそれを分かったんだ?


「外で魔力が開放された、ネルの力だ」

「彼女の魔力が?」


 僕にはそんなの分からないけれど……ネルさんと一緒にいるリクトならきっとそれが分かるはず、それに単独で向かわなかったということは、僕の力を必要としているという事……か、ああ、分かったよリクト。君の期待に応えてみせるさ。


「分かった、僕が行く」

「俺も行く、会場のサポートはアマネとそれで充分だろ」

「それって言うなぁ!です!」


 確かに会場を警備する人間は必要か……よし、なら急いで向かわないといけないな。


「き、気をつけるのです!相手は天道十二門……出来れば撃退するんです!勝てるとは思わない方が良いです!」

「そんなの分かってる!マナはここを頼んだぜ!」

「任されたです!」


 勝てると思わない方が良いか。マナさん、残念だけどそれは考えていない。何れ何処かで倒さないといけない相手だ、僕はここで

 連中の一人を倒す必要がある。

 全てはこの世界で苦しんでいる人々の為に、僕は勝たなければならない。だから……負ける訳にはいかない!


「行こうリクト!」

「ああ!」



 この世界の人々の為に!!



 ☆ ☆ ☆



「おや、まさか向こうから出向いてくれるなんてね」


 こ、これは!辺り一面酷いことになっている、まるで爆発でも起きたみたいに地面が抉れて、所々が黒く燻っている。それに僕の目の前にいるのは……子供?


「なんだこりゃ、こいつが天道十二門なのか?」


 リクトの疑問も尤もだ、変わった服装をしているけど……この子供が天道十二門?


「ふぅん、君達が勇者の二人か……中にまだ一人いるみたいだけれど……まぁこの会場自体を吹き飛ばせば出てくるかな?」


 何!?吹き飛ばすだって!?まだ中には人が沢山いるんだぞ!?


「や、止めろ!」

「残念、僕は魔族で天道十二門の一員、人間には容赦はしない!」


 そう言って天道十二門の子供は、右手を掲げた。

 だが、その前に僕が止める!


「光の軌跡を放つ矢を!ライトショット!」


 光魔法の一つ、ライトショットによって子供の体を撃ち抜いた、ダメージを負ったのか子供は苦悶の表情を浮かべて後ずさりした。


「チッ、流石に勇者の光魔法は一味違うか……良いよ、遊んであげるよ」


 子供が指を鳴らしたら、子供の服から無数の泡が溢れ出る。


「泡を操る……レイジの方か」

「あぁ、僕のことを聞いてたんだ?まぁそうだよ。僕は天道十二門の蟹を司る者、レイジ・キャンサー。以後よろしく」

「よろしくされる気はしねぇよ、天道十二門……お前の目的はなんだ?」


 連中の目的を知るのか?確かにそれは気になるが……いや、そうか。時間稼ぎって訳か?リクト。

 なら僕も戦闘の準備を進めよう、能力(スキル)を発動させて、僕の力を世界最強にする。


「僕の目的?あぁそうだったね、まぁ勇者と遊ぶ事……かな?」

「ふざけるな!」


 能力(スキル)は発動させた、僕は今この世界で最強の存在になった!

 この力、この速さ、この魔力!


「走れ炎よ!獲物を焼き尽くせ!バーニングビートォ!!」


 レイジを中心に爆発が起こり、彼の泡を一斉に吹き飛ばした。


「グッ、これだから魔法は嫌いなんだ!妬ましいなお前!!」

「黙れ!僕はお前達を絶対に許さない!」

「少し遊んであげようと思ったけど、あんたは遊んでる暇なんて無さそうだな……!来なよ、遊びじゃない本物の戦闘を教えてやる!」


 何が本当の戦闘だ!お前達魔族なんかにそんな台詞を言う資格なんて無い!

 僕の速度に付いてこれる筈が無い、まずは背後に回って斬りつける!


「がぁ!?」


 よし、刃が通った!ここで畳み掛けるんだ!右腕に力を込めろ!集中するんだ、僕の全てをかける!その勢いで!


「援護する!」


 リクトが背中に背負っていた剣を構え、僕と挟み撃ちにする形でレイジに向かっていく。

 そして僕とリクトの剣によってレイジは徐々にダメージを負っていった。


「ここだ!火球よ、我に仇なす敵を焼け!ファイアボール!!」

「おぉぉぉ!!!」


 僕の魔法とリクトの剣が同時にレイジを襲う。


「舐めるなよ、人間!」


 レイジがそう言って地面を思いきり踏みつけたら、レイジの周辺が一気に爆発した。

 僕とリクトはまともに喰らい、吹き飛ばされていく。


「ぐうっ!?」


 痛っ!……詠唱無しにこの現象、まさか敵の能力(スキル)か?だが泡を操る能力の筈だが……


「まさかこれを使わせるなんて……褒めてあげるよ勇者、君達は思ったよりもできるね、特にカズト、君は想像以上に厄介だよ。本当に……妬ましい!!」



 っ!?ご、ごぼっ……いぎが……!?



「苦しいかい?当然だろう……今、君の気道に泡を発生させた。まるで溺れているようだろ?」


 ぐるじい!ごぎゅうが、でぎない!!!



「そらぁ!」

「がぁ!?」


 ごぼ、ごぷぉっ!?


「ははは!どうだい?力任せに僕達には勝てない事が分かったかい?そら!!」

「がっ、ごふっ、あがっ……」

「ほら、能力を解除してあげるよ、死なせる訳にはいかないからね!」


 さっきまで僕を蹴り続けてたのに……ぐつ、はぁ、はぁ、はぁ……な、何で僕を……見逃したんだ?


「何で解除したかって顔をしているね?、こんなんじゃまるで僕が小物みたいじゃないか、死なせる訳にはいかないけど僕は君を評価したんだ。これを使わせる程に僕は危機感を持ったって事だよ?光栄に思うんだ勇者カズト、君は確かに僕の頭に血を登らせた、だがそれだけ……これより先は君は一歩も僕にダメージを与えられない」


 奴がニタニタと笑いながら僕を見下ろす、まるで下等な生物を見るように……自分以下の存在を見るような、そんな不愉快な視線を僕に向けた。

 許せない、こいつだけは……僕は勇者だ、負ける訳にはいかないんだ!だから僕に力を貸せ!勇者参上(シュジンコウ)!!



「う、おおぉぉぉぉ!!!!」


 僕の体から真っ白なオーラが迸る、力が湧いてくる……僕に力を貸してくれたのか?なら……こいつを絶対に倒さないといけない!


「覚悟しろ、天道十二門!!」

「ふぅん……」


 今度は油断しない!まずは簡単な魔法を使って奴の隙を作る!


「火球よ、我に仇なす敵を焼け!ファイアボール!!」


 火球は寸分狂わずにレイジの元に着弾し、その体を炎に包む。

 次に僕は剣を構えてから、詠唱をしつつ突進した。

 魔法の発動と同時に攻撃する、擬似的な魔法剣だ。これなら奴に通用する筈!!


「走れ炎よ!獲物を焼き尽くせ!バーニングビート!」


 バーニングビートによる爆発で、泡を再び吹き飛ばす。


「ここだぁぁぁ!!!」


 そして、最大速度で突進し、剣を振り下ろした。



























「はぁ、飽きた」

「がっ」



 気が付いたら僕は宙を飛んでいた。

 景色が反転する、体を浮遊感が包んで……地面に落下する。

 一体何が起きたんだ?僕はどうして倒れているんだ?体に力が入らない……いや、違う。


 苦しいんだ、息が絶え絶えで、呼吸が上手くいかない。


「酸欠……それに陥るから人間は不便で不完全で……本当につまらない存在。いくら勇者でも、人間である以上僕には敵わないんだ」



 レイジが僕に歩み寄ってくる、とどめを刺す気なのか……?くそ、動け、僕の体!


「ぜひゅー、ぜひゅー、こひゅー」


 早く動け!レイジが来る……!うご、けぇ!!


「へえ、まだ立てるんだ……凄いね」

「あたり、前だ」



 僕は勇者なんだ、だから負ける訳には……!?



「……………………」


 リクト!?さっきの爆発で気を失っていたんじゃ……だ、駄目だ!僕でもこの有様なんだ!リクト!君じゃ奴には勝てない!


「馬鹿野郎下がれ!殺されるぞ!」


 奴は危険な存在だ!下がれば奴の攻撃対象から逃れられる筈だ……!


「……殺す?まさか、僕は殺さないさ……勇者はね」


 勇者は殺さないだと?やっぱり会場の人間は殺す気なのか!?……っ!!

 あ、あそこに倒れているのは……ネルさん!?そ、そんな……スズカは!?スズカは何処に!


 スズカの姿が見えない事に怒りを覚えた、こいつは勇者は殺さないと言っていた、でも他に何もしないとは言っていない。もしかしたら誘拐されたのかもしれない。そう考えて、怒りのままレイジを怒鳴りつけようとしたら














 声が出なかった、いや、出せなかった。リクトから放たれる濃密な殺気に……僕は声を出すのを忘れる程に怯えたんだ。



「殺す」


 リクトは短く、そう言った。
















『リクト・アルタイルの守り抜く者ロード・ディフェンサーが発動、これより全ステータスが四乗されます』

次回、リクトVSレイジ

同時に、若干アマネの闇がみえましたねぇ……

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